「喋らなければ可愛いのにな」
思わず言ってしまってから、如何に失礼な台詞だったかを悟った。まずは一応男であり、誇り高い竜族である。可愛いと言われて喜ぶ筈が無い。それに“喋らなければ”なんて、「君はろくなことを言わない」と言っているようなものだ。
「それはすみませんでしたね。生憎と僕は卑屈で気が利かないものですから」
案の定は臍を曲げてしまった。こうなるとなかなか機嫌を直してもらえない。ああ、竜と言うのはなんて気難しい生き物だろう。竜に限ったものでは無いが……。だが、同じ竜でもレグナあたりならば、こんな風に反応さえ返してくれないであろう。それを考えるとは随分親切とも言える。
「そんなつもりじゃなかったんだ、悪かったよ」
「僕にどうしろと言うんですか。無言も駄目、喋っても駄目って、ユーリック様は無理難題ばっかり言いますね」
「だからそうじゃなくてな、ええと」
涙目になっていることには気付いて無いんだろう。ああ、前言撤回だ。喋っても何しても君は可愛い。だが、可愛いは彼にとって禁句だ。どうするべきか。
困った挙句に柔らかそうな金髪を撫でて、もう一度謝った。最近俺は、は頭を撫でられるのに弱いことに気付いた。目を細め、されるがままになっている。
「もう少し、素直になってくれれば嬉しいなと思ってな」
「すな、お……」
呟いた途端に顔を真っ赤にして、俺の手を振り払った。ああますます不機嫌にさせてしまったかな、と思ったけれど違ったらしい。真っ赤な顔を更に赤くして、抱き着いてきた。
「…………嬉しい、ですか」
羞恥に掠れた声の破壊力の凄まじいこと。俺まで赤くなってしまった。
「嬉しいよ」
努めて平静を装って返すと、少し嬉しそうな笑顔が見えた。あどけなさの残るその表情は少年そのもの。
「……やっぱり、可愛いな」
うっかり零した呟きに、遂に少年が声を荒げて怒ったのは言うまでもなかった。
Title by 確かに恋だった
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