柔らかそうな色素の薄い髪。
 真っ白い雪のような肌。
 何より、蛋白石にもよく似た瞳が印象的だった。

「貴方が、?」

 マナの呼び掛けに、ぴく、と微かに反応したのを見て、確信した。

「大丈夫。俺たちは村の人に頼まれて、貴方を助けに来たんだ」

 は申し訳なさそうに眉尻を下げて、「すみません」と頭を下げた。

「わざわざこんな所まで……。どなたかは存じませんが、かたじけないです」
「そんな、気にしないでくれ」

 はやっぱり申し訳なさそうに笑いながら、そっと立ち上がった。
 マナがじっとを見ている。何かあったんだろうか。
 それに気付いたがマナを見て、一瞬だけ目を見開いた気がした。

「マナ、どうかしたのか?」
「……何だか、不思議な力を感じる……」

 マナはを見つめたまま、そう答えた。
 ……には魔術か何かの心得でもあるということなのか?
 微妙な沈黙が広がる。

「ノウェ、マナ。迷子は見つかったか?」

 違う場所を探してたユーリックが丁度戻って来た。
 俺は少しホッとして、「この人だよ」とを指した。

「その子が? へえ、そんな格好でよくこんな所まで来たもんだ」
「……そういえば、そうだな」

 ユーリックの言うとおりだった。
 法衣みたいなの格好は、モンスターやならず者も多いこの森を歩くには不向きだ。
 しかもこんな奥まで来ていながら、ちっとも汚れていない。
 そんな俺たちの疑問に、は笑いながら返す。

「僕は、慣れていますから」

 ……男なんだ……。
 口には出さなかったけれど、ずっと女の人だと思ってたからびっくりした。

「慣れてるにも程があるんじゃないのか?」
「それは……」

 ユーリックの質問に、は答え辛そうに言葉を濁らせる。何かあるんだろうか?

?」
「……慣れている、では……いけないのでしょうか?」

 呼び掛けたマナに、は困ったように呟く。
 何だか、気まずい。
 は視線を泳がせて、怯えているようにも見えた。

、何かあったのか? どうしたんだ?」
「僕……その……」

 俺が歩み寄ると、は後ろに下がった。
 困ったな。
 どうしようかと悩んでいると、不意に声がした。

『ノウェ、そやつは臆病なのだ。問い詰めても話しはせんだろう』
「レグナ……」

 レグナの声に、が目を丸める。

「ドラゴンが、いるのですか?」

 俺たちが答える前に、レグナが「ああ」と返事をした。

だったか、安心しろ。ノウェ達は大丈夫だ』
「……そう、ですか」
『ただ、儂等は訳ありでな。お前が追手ではないかと疑ったのだろう』

 レグナの言葉に、の怯えは完全に抜けていた。
 何故、はこんなにレグナと話してるんだろう。しかも、ドラゴンだと判った上で。

「……すみません。僕は元来人間が苦手でして……必要以上に警戒してしまいました」

 急に話し始める
 俺は呆気にとられたままの話を聞いていた。

「待って。その言い方……貴方は人間では無いのですか?」

 マナの問い掛けに、はあっさり頷く。

「これでも僕は、ドラゴンなんです」

 びっくりした。
 レグナ以外のドラゴンに会うのは初めてだし、どう見ても人の姿なのに。

『遥か北の地に、術に長けたドラゴンの一族が住んでいたと聞く。……ドラゴンと呼ぶにはあまりに脆弱だったがな』

 レグナの声に、は淋しそうに顔を伏せた。

「……仕方ないのです。そういう運命だったのでしょう」
『最期の、ひとりか』
「はい。……そこまで御存じでしたら説明は要りませんね」

 レグナとの話を終えたらしいは、こちらを顧みた。

「わざわざ探しに来て下さったお詫びをしなければなりませんね。まずは、戻りましょうか」

 俺たちはよく判らないまま頷いて、村へと帰った。


 その日は結局、の家に世話になった。
 レグナとの、意味ありげな会話が気になって、俺は暫く思案したのだった。

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