「なぁ、ほら、凄くないか!?」
ノウェのきらきらとした眼差しに、返す言葉は見つからない。僕は唖然としたまま腕を引かれ、此処に来た。連れて来られた場所は、高い丘の上。
昔から好きな場所なのだと彼は笑った。
「この季節の、この場所から見る夕日は凄い綺麗なんだ」
「そうですか」
「レグナと良く此処に来たんだ。色々と馴染めて無くて、あそこに居たくないのはしょっちゅうだったから」
そういえばレグナ様が話していたっけ。封印騎士団では浮いていたというノウェのこと。レグナ様がもう少し愛想の良い方だったら良かったろうに。
(……っと。また怒られるな、こんなこと考えてたら)
そっと、ノウェの横顔を見つめた。
共に旅をするようになって、僕は確信していた。彼が何者かを。かつて滅び掛けた世界で生まれた、悲しい恋の欠片……。
ノウェの面差し、瞳の色を見る限り、違いない。
(可哀相な子)
それきり余計なことを考えるのは止めて、僕は夕日に視線を戻した。
あかい、ひかり。
どうしても赤いものに触れると、僕の脳裏には母様の姿が浮かんだ。
「――ノウェ、僕の背に乗ってみませんか?」
唐突な僕の提案に、ノウェは目を丸めていた。
「もっと近くで、あの夕日が見てみたいのです。君もどうですか?」
「――うん。乗せてくれ」
ノウェは笑って頷いた。
竜の姿に転じた僕は、ゆっくりと身体を伏せる。
レグナ様といただけあって、ノウェはするすると僕の背へ辿り着いた。
『行きますよ』
「ああ」
静かに羽ばたき、地から離れる足。ノウェは怖がる様子も無く僕の首を撫でていた。
眩しさに目を細めて、僕たちは夕日を見つめる。
「凄いや……」
僕の銀色の鱗は、あっさりと日に染まる。それでも、やっぱり赤にはなれない。
ノウェが優しく首筋に触れてくる。無意識の癖なんだろうか。くすぐったかった。
「なあ、もう少し近くに行かないか?」
『構いませんよ』
ノウェは嬉しそうに笑った。
「――ありがとうな」
『どういたしまして、ノウェ』
きっと、お礼を言うべきなのは、僕のほうですから。
(幾ら飛んでも、変わりはないと判っているはずなのに)
あの人を乗せて飛んでいた母様の気持ちに、少しは触れることができただろうか。
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