愛しています。
その一言では軽い気がして、僕は無い知恵を振り絞っていた。
「愛ってどんなでしょう」
カイム様は只でさえ渋い顔を更にしかめて、静かに首をひねった。母様がおかしそうにくつくつと笑っている。
僕も、つい笑ってしまった。カイム様だけは、少し不満そうに目を細める。
『こやつに愛など問うても、答えられる訳がなかろう』
「でしたね」
母様と僕のやり取りに、カイム様は諦めたように首を振った。
「……あい……」
ある者は愛に身を滅ぼし、ある者は愛で国を滅ぼし、またある者は……やはり何かを滅ぼした。
まるで愛情は、ひっそりとやってきて大鎌を首に掛ける死神のようではないか。
死神のように最初から怖いものだったら抵抗のしようもある。しかしこれは、至極当然の尊い感情であるから一番質が悪い。
怖くなった。
愛って、恐ろしい。
無意識のうちに母様に寄り添ってしまって、『甘えん坊め』と笑われてしまった。
さっきのお返しと言わんばかりにカイム様も笑っている。
何だか少しだけ腹が立ったけど、顔にも声にも出さないようにした。
「あいする……」
とりあえず、愛情の恐怖に屈するわけにはいかない。それすら越えても、僕は答えを見つけるしかなかった。
僕なりの「愛しています」の形を――。
「……判った」
母様とカイム様が、興味深げに僕を見る。
「僕なりの愛、判った気がします」
そっと笑って、口を開く。
あなたがいなければ、僕は息さえもできずに朽ちてしまうのです
今の場合は「あなたたちがいなければ、」ですけれど。
自分でも顔が赤くなったのに気付いた。
『……本当に、お前は子供だな』
「ええ、子供ですよ」
でも僕以上に、母様とカイム様が恥ずかしそうにしていることに気付いていたから、平気だったのです。
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