「ユーリック、帰りに寄りたいところがあるんだ」
ノウェにせがまれ、ユーリックは彼と共に学校帰りに公園へ寄った。何やら人気のアイスクリーム屋があるらしい。
薄い赤色の小さなワゴン車が止まっている。店名らしい「pure red」というポップな文字が車体にプリントされていた。
人気と噂されるだけあり、ささやかな学生たちの列が出来ている。
数分もすると列は無くなり、ノウェは嬉々として店に近づいた。
「いらっしゃいませ」
線の細い店主がひょっこりと顔を出す。柔らかな色素の薄い髪は肩にかかる程度の長さで、零れるように揺れる。光を乱反射する瞳は、どんな宝石より綺麗だった。
ノウェと、遅れてついてきたユーリックは言葉もなく立ち尽くし、店主に見入ってしまった。
接客業であろうに、店主はにこりともしない。不思議そうに二人を見返している。
「お客様、ご注文は?」
「……あ! はい!」
慌ててノウェがメニューに向き合い、アイスを注文した。それを確認した店主は「ちょっとだけ待ってね」と中に引っ込み、少しするとノウェの前にアイスを差し出してきた。
「おまちどおさま。200円になります」
「や、安い……」
「これで結構儲かるんですよ」
端正な顔と雰囲気からは想像できない茶目っ気あるコメントだ。
思わずノウェが笑うと、店主も笑い返す。ノウェはほんのり顔を赤くしながら、お礼と代金を店主に渡した。
「ユーリック、これすごく美味いよ? ユーリックも買ったらどうだ?」
「んー……そうだなぁ」
断るのも何だったので、ユーリックはノウェに勧められるままに同じアイスを注文した。
同じように差し出されたアイスと引き換えに代金を渡し、ユーリックも早速噂のアイスクリームを口にしてみる。
ファンシーなフルーツカラーのアイスクリームを抱えるのはなかなかの恥ずかしさを伴ったが……。
「確かに美味いな!」
「な!」
「ただ、男同士で来るのはやっぱり辛いな」
「うん……」
そんなふたりのやり取りを見て、アイスクリーム屋の店主はのんびりと口を開いた。
「大丈夫ですよ。こうして男がこんな店出してるんですから」
ときがとまった。
「……え?」
「はい?」
「……いま、男って」
「はい」
「店、男?」
「はい」
「……つまり?」
「僕は男ですよ。よく間違われますけど」
アイスの美味しさなんかよりも、その事実がふたりにとっては衝撃的な日となった。
「嘘だぁ……」
ノウェの無遠慮な呟きに、店主は可笑しそうに笑うばかりであった。
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