※キャラクター崩壊注意(特にマナ)
物静かで強かで、他者と関わるときには必ず一線を置く慎重さ。
人間嫌いの癖に人間に肩入れする不思議な言動。
見た目は線の細い少年だが、その正体は白銀の鱗を持つ氷竜。
それがという仲間である。
ノウェはのことを信頼している。の方がどう思っているかは知らないが、ノウェにとっては間違いなく彼は仲間であった。レグナもマナもユーリックも、自分と同じような気持ちでを信じてくれていたらどんなに嬉しいだろう?
レグナは同じ竜なだけありと仲良さげだし――がレグナにからかわれているだけかもしれないが、好意的だからこそそうしているはずだ――、ユーリックはに興味津々のようだし――は迷惑そうにしていることが多いのはこの際気にしない――、後はマナだ。マナもに負けず劣らずの慎重派で、未だにを警戒している。
マナとが仲良くなれば嬉しいな。そう思ったノウェはある日、ふたりの食事に“アレ”を盛った。ユーリックと共同で、ふたりに“アレ”を飲ませたのである。
――度数が高めのアルコールを。
マナとの警戒心の高さを考慮して、ニオイや味で気付かれぬよう試行錯誤した。甘ったるい果汁にアルコールを混ぜて、ふたりがアルコールと気付く頃にはすっかり飲み干してしまえるように。
……まんまとふたりは酒を飲み干した。しかしここで、ノウェとユーリックの予想を超えた展開が起きた。
「うあー! かーさまー!」
「おかーさーん! ああー!」
とマナが酔って暴れ始めたのである。二人は肩を組み、声を揃えて叫び回った。「かーさまぁあー!」「おかぁーさーぁあ!」何故か二人は母親を呼んでいる。全く訳が判らない。
「一旦落ち着こうぜ、二人とも!」
「うるっさあーい!」
「ぐはっ!」
制止に入ったユーリックがに蹴り飛ばされる。流石正体は竜なだけある。ユーリックは一撃で沈没した。ノウェは切なくなった。
「すごい、すごい!」マナは上機嫌での肩をばしばし叩いた。まるで子供のようなはしゃぎようだ。褒められたは「そうでしょお、そうでしょお」と自慢げにへらへら笑っている。
傍目にはすっかり仲良さげなふたり。
ある意味ノウェたちの目論見は成功したと言えるが、しかし……。
「足りない、酒が足りないですよー!」
「よこしなさい、もっとよこしなさーい!」
とマナは更に酒を要求してきた。これ以上ないほどに酔っ払っておきながらまだ飲むつもりなのか。
生憎酒はもうない。そうノウェが告げると、とマナは「もー!」と唸って地面を叩いたり蹴ったりし始めた。
ユーリックはまだ気絶したまま。
レグナは見て見ぬふり。
ノウェは頭を抱えた。
こんなはずでは無かった。もう少し穏便に酔っていって、二人が腹を割って話し合って打ち解けてくれたら。そう思った。なのに二人ともアルコールに耐性が無さすぎて、自分を見失っている……。
ぎゃーぎゃー喚く酔っ払いたちから目を逸らし、ノウェは悩みに悩んだ。
「……あれ?」
そして気付いた。いつの間にか二人の叫び声が収まっていたことに。
おそるおそる顔を上げる。
さっきまで暴れていたはずのとマナは、爆睡していた。地面にごろりと転がり、しかし肩は組んだまま、清々しい顔をして眠っている。
……ノウェは呆然とした。
回復したユーリックが頭を押さえながら立ち上がり、こちらによろよろと歩み寄ってくる。ノウェの隣にどっかり座り込んだ彼は、ノウェの背を優しく叩いた。
「もう二人に酒を飲ませるのは止めよう」
「……そうするよ」
時間にすると10分有ったか無いかという短さだった。しかし二人の暴れようは、10分という時間の幅に似合わぬ酷さと勢いがあった……。
翌日、とマナは二日酔いになっていた。昨日の記憶はほぼ無いらしく、自分達が肩を組んで寝ていたことに吃驚していた。しかし以前より二人の距離は縮まったようで、互いに対する接し方に刺がなくなったように思える。
「マナ、大丈夫ですか? 無理はしないほうが良いですよ」
「こそ、まだ調子が良くないみたいね。気をつけて」
ノウェとユーリックの努力は、僅かながら報われたようだ。
――あれだけ暴れられたのだから、少しぐらい返ってくるものが無ければ困る。
二人の青年は、力なく笑っていた……。
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