『銀時、銀時か!?』
「あ、すいません。新八です」
『あわ、ごめん、新八くん。と、とにかく今困っててさ、そっち行って良い?』
「えっ、はい…」

 がちゃんと乱暴な音を立てて電話は切れた。
 あのさんがあんなに慌ててるなんて珍しいな。
 新八は居間に戻ると、寝転がって煎餅を貪りつつテレビを見ている銀時に電話の内容を伝えた。

「なんかさんが今から来るそうですよ。困ってるとかって」
「珍しいな」

 銀時は重たそうに体を起こし、ふむと考えるふうな顔で煎餅を一口かじる。

「アイツが困るったら相当の何かがあったに違いない。だってアイツ器量いーもん。ヅラみてーにドジっ子気質でもねーもん。それにー…」
「ああもう理由は来たら聞けますって。もしかしたら依頼かもしれないですし…」
「久々の収入か、銀さん少し元気になってきたよー」

 神楽も定春との散歩を終え、お腹を空かせてやってくる頃である。
 きっと今日の食卓は、四人プラス一匹の賑やかなものとなるだろう。
 は、神楽の食欲にさえ怯むことなく大量の食事を振る舞ってくれる、神様のような存在であった。
 人好きのする性格に気前の良いに神楽もすっかり懐き、「ちゃん」に「神楽ちゃん」と呼び合う様は姉妹にも思える。
 ……いくら女性らしくてもは男であるが。

「いっそのことさんが万事屋に入ってくれたら良いのにな…」
「あんな面倒見良いのいたら俺らニートになっちゃうだろ」
「ですね」

 そうこうしていると賑やかな声がした。

「ただいまー! ちゃん来たアルよー!」

 ……何故かは、神楽にプリンセスホールドされていた。

「な、なに、どうしたの神楽ちゃん! さんもどうして?」
ちゃんを守るためアル」
「自分が走るより神楽ちゃんに抱えられた方速かったんだ…申し訳ない」

 定春ものっしのっしと家に上がる。はうなだれて頭を下げていた。

「特上寿司奢るから助けてもらいたいんだ、銀時。良いかな?」
「大事な旧友の為なら身を粉にして働きますよ!」
「ありがと、ホント」

 身なりを整え、がソファに座る。隣には神楽、向かいには新八と銀時が腰を下ろした。

「実は…残念なイケメンに追われてるんだ」
「は?」
「そうとしか言えないんだけど…とりあえず助けてくれ、銀時ー!!」

 は真っ青な顔で泣き出した。
 よしよし、と神楽がの背中をさすったり頭を撫でたりしている。
 呆気に取られ、銀時は頭を掻きながら溜め息をついた。

「んなこと言われてもなー…どういうこった、そりゃ…」
「そんなに泣いては喉も渇くじゃろう、おい茶を出してやれ」
「あ、はい、そういえば忘れてましたスミマセン」

 腰を上げて、一拍置く。
 なにか違和感が……。
 新八はそっと視線を巡らせた。
 …え、狩衣?

「――うぁあああ!!?」

 が叫び飛び上がる。そのまま定春の後ろに逃げ込むという、混乱しているにしても命知らずな行動を見せた。
 新八は叫んだ。

「せっ、晴明さん! 何でこんなとこにいるんですか!?」

 先のあれこれで関わった結野晴明が、いつの間にかソファでくつろいでいる。
 何処から入ったんだ、この人は?
 そしての驚きようと一向に定春の後ろから出てこないところを見ると、もしや。

さんの言ってた“残念なイケメン”って」
「そ…そいつッ!」
「えぅえええ!?」

 よりにもよって江戸を守護するお偉いさんに追われているとは、一体どうしたのだろう。
 悩む新八の横で、銀時は深く合点がいったように頷いた。

、遂に年貢の納め時だな…」
「や、止めろ銀時、別にしょっぴかれる訳じゃない! 山崎くんの為にも心は入れ替えて……ってそうじゃなーいーのッ!!」

 定春にしがみついたままは懸命に訴えている。
 ぱしん、と小気味好い音を立てて晴明は扇子を閉じた。

「わしはさんを娶りに来た。さん、わしと一緒になって欲しい」

 時が止まった。

「……え?」

 もう一度、晴明は言った。

さん、どうかわしと添い遂げてくれぬか」

 は、定春の後ろで震えていた…。

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