何時ものように仕事に励むクリステルの姿をDVDに録画していた時のことだ。
時間を持て余したのか、近くの通行人に軽いインタビューをすることになったらしい。
『あ、お姉さんちょっと良いですかー?』
『あ! ああ! は、はい!』
クリステルが呼び止めた乙女に、わしの目は釘付けになったんじゃ。
『うわクリステルさんだ本物だ綺麗かわいい!』
『ふふっ、ありがとうございます』
『あ、握手してくださいっ! あ、あとお天気聞いていいですか?』
『今日は晴れ後くもりです。雨は降りませんが肌寒くなるので気をつけてくださいね』
薄紅の着物の似合うこと。長く艶やかな髪に、ふんわり朱が差した頬…。陶器のように白い肌はシミひとつ無い。
『あ、ありがとうございます! あ、クリステルさんも寒さには気をつけてくださいっ! これホッカイロ使ってください!』
終始、赤い顔は笑みをたたえたままで。
クリステルに労りの言葉とホッカイロを送り、乙女は去って行った。
(この女子と結婚したい)
それからわしは式もフル活用で、乙女を探し回った。
…わしの嫁として迎える為に。
◆◆◆
誰も聞いていないのに晴明は自らそう語った。
幾らか落ち着いたは定春の後ろからようやく出て来てソファに座っている。
「いきなり朝ホテルから出たら、この人がいたんだよ! 部屋出た途端『結婚して下さい』って! まじ怖かった! 銀時の知り合いだったのかよ、もうとにかく助けてくれ!」
「くっ、お主、さんと名前で呼び合う仲じゃと…!?」
「止めて、さん付気持ち悪いー!」
叫び続けるに対し、晴明は何故か顔を赤くした。
「し、しかし、呼び捨てるにはわし等、まだ知り合うたばかりでは」
「それより根本的なトコが違うからっ、知り合ったばかりで結婚申し込むか普通!? てかこちとら男じゃい!」
さん、こんなに叫ぶ人だったんだ…。
新八は呆然としていた。
「さん、性別なぞ愛の前では何ら問題ではない」
「怖い。ときめかない。怖いだけ。怖い」
「わしは一週間も式をさんにつけ、さんの事を知ろうと…」
「アンタそれ普通にストーカーですよ!?」
悲しいかな、新八のごもっともなツッコミは何の意味もなさない。
は怯え、神楽がなだめ、新八が頭を抱えた時――銀時が口を開いた。
「おにーさん。は、既に違う人のものなんです」
「おにーさん言…何じゃと!?」
「こいつも万事屋の一員なんで、いきなり持ってかれたりしちゃ困るんですよねー」
が瞳を潤ませながら銀時を見つめる。とっさのでまかせではあるが、身内同然に思われているようでつい感動してしまった。
「って訳で諦めてもらえませんかね。ぶっちゃけも迷惑してるんで」
「ぎ、銀時ィ」
神様か何かを見るようなの眼差しに気恥ずかしさを覚えつつも、銀時はまったりと晴明を諭した。
晴明は神妙な面持ちである。
「迷惑じゃったか、それはすまぬことをした」
「判ってくれたか」
「お詫びがしたいので、うちに来ませんかさん」
「うん何も判ってないと」
「シスコンの上にストーカーとか救いようねえ男アルな」
そうこうしているうちにの姿が消えていた。
「さんが消えたじゃと!? くっ…!」
晴明はばたばたと万事屋を飛び出して行った。
嵐が去ったような静けさに、取り残された三人。
「さん、逃げたのかな?」
「ワン」
「どうしたアルか定春」
定春が何か封筒をくわえている。神楽はそれを受け取り、中を確かめると――固まった。
不審に思った新八が近付き、封筒を確かめる。――そして固まった。
「何だよ、お前ら何を――」
銀時も固まった。
中にはぎっしりと万札が詰まっていた。
『迷惑かけた。これで飯でも食ってくれ。自分で何とかする。より』
小さな、手紙と共に。
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