12月24日。
万事屋に、がやってきた。
「サンタさんだよー!」
ワンピース風のサンタ衣装に身を包み、白い袋を抱えてくる気合の入りよう。
神楽は真っ先に歓声をあげた。
「わぁあ! ちゃんすげーアル!」
「ふふふー。七面鳥とケーキもあるからね! 夜は予定あるらしいから昼間を狙って来たよ」
「ありがとうございますさん! あっ荷物持ちますから」
「サンキュー新八くん」
ふうと一息ついたへ、銀時は労うように笑いかけた。
「悪いな」
「気にすんなよ銀時。やりたくてやってるんだ」
の笑顔が眩しい。本当にやりたくてやっているのだと、裏付けるような笑いだった。
子供ふたりは、既に居間で袋を広げ盛り上がっている。…というか、神楽が袋を開け、新八が慌てて止めている。定春が既に肉にかぶりついてと、騒がしい。
は嬉しそうに様子を眺めている。いつの間にかサンタ衣装ではなく、花柄の鮮やかな着物に着替えてしまっていた。
「お前、早着替えにも程があるぞ」
「何だよ、もうちょっと見たかったのかいサンタ」
「んな訳じゃあ…ないですよ」
「ふうん、そうだよね」
銀時の曖昧な返事を、は含んだような笑いで流した。
「まぁ、とりあえず俺行くね! 忙しいんだわ、次行かなきゃ」
「忙しねー奴だな。ちっとぐらいくつろいでけよ」
「だって、おねーさん、山崎くんのとこ行かなきゃ!」
「んな急がなくてもアレは暇こいてんだろ…」
銀時がの襟首を掴む。
着崩れすんだろ、と振り返るの顔に、銀時は何かを押し付けた。
細長い箱である。
「ん? 何これ…」
「メリークリスマス。サンタさん」
「え?」
細やかなラッピングを丁寧に解き、開いた箱の中身は――かんざしだった。
透かし細工で花をあしらってあり、美しい。それなりに値が張るものであろう。
「お、おお…! 銀時がプレゼント寄越すなんて…!」
「有り難く受け取って大事にしろよ。給料三か月分なんだからな」
「結婚指輪か!」
ばしんと銀時を叩いては笑った。ほんのり顔が赤い。
は早速かんざしをさすと、改めて銀時に向き直る。どうだと言わんばかりのの自信に満ちた表情。銀時は苦笑した。
「ハイハイ似合ってる似合ってる」
「テキトーだな!」
「銀さんがね、お前に似合わないもんをプレゼントする訳ないでしょーよ」
おそらくは、沢山の意味を含んだその言葉の、半分も理解できていないだろう。
しかし嬉しそうに笑って頷くを見れただけで十分であった。
「あっ! 銀時にもプレゼント用意してるからな。あの袋ん中に」
「ん。後で見る」
「そんじゃあね、ありがと、銀時!!」
銀時はを見送り、居間に戻った。
新八と神楽のにやにや顔を黙殺し、だいぶ開かれた袋の中を漁る。…目的の物はすぐに現われた。
万事屋の三人と一匹にあてられた包み。中には、色違いのマフラーが入っていた。
「わあ、御揃いのマフラーとかちゃん乙女アルな!」
「すごいなぁ! これ手編みですかね?」
「定春にもあるよー!」
「…あれ? 銀さんのはもう一つ包みがありますね」
「だな」
他の包みと違い、赤文字で注意書きが添えられている。
“銀時ひとりきりの時に開くこと! 見つけたらさっさと開け! 今すぐひとりきりになって開け!”
……なんだこれ…。
新八と神楽は妙なにやにや顔を復活させていた。
「銀さん、早く開けてきたらどうです? 僕らこっちいますから」
「銀ちゃんに引っ掛かるなんて、ちゃん男運ないアルな…」
やはりふたりを黙殺し、別室に移った銀時は、いささか緊張しつつ包みを開いた。 ――そこにはサンタの衣装フルセットが、あった……。
手紙が添えてある。銀時はそっと目を滑らせた。
『前にぼやいてたサンタ衣装をあげます。これで神楽ちゃんたちに夢を届けてあげてください』
……。
「……とりあえず、使ってやらねーとな」
そんな銀時が今夜、サンタとして奮闘するのはまた別の話である。
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