「土方さん、山崎くんは何処?」
「部屋じゃねーか」
「ありがとう」
「――って待てオイぃい!」
過ぎ去ろうとするの手を慌てて掴んだ。
「何を当然みてえな顔して屯所上がりこんでんだぁぁあ!!」
「毎回毎回よくツッコミますねー。毎回ながら、見張りの子も沖田くんも近藤さんも許してくれたよー?」
「……ああそうかい」
花柄の着物に、不釣り合いな白い袋を背負い、は笑った。
うなだれる土方の頭をぽんと叩き、うんうん頷く。
「ツッコミしすぎて胃に穴開いちゃったりしないでね。あと山崎くん苛めないでね。穴と言う穴にマヨネーズぶち込んじゃうから」
「穴…っ、おま」
「あっ土方さんにもプレゼントあるんだよ。だからさ…」
土方のツッコミを遮り、は途端にしおらしくなった。首をかしげる土方に、は乙女っぽく告げる。
「手、離して貰えないかな?」
「っ、ああ、悪ぃ……」
不覚にもときめいてしまった己を恥じつつ、土方はの手を離した。
袋を下ろし、中に手を突っ込みまさぐるの様子を無言で見守る。
「…ん! 発見!」
取り出した包みを満面の笑みで土方に押し付ける。土方は反射的に受け取り、を見た。
開けて見ろ、と目で訴えている。…土方は呆気にとられつつ、包みを開いた。
「これは…!」
「世界のマヨネーズ詰め合わせプラス、手編みのマヨネーズ柄マフラーだ! 有り難く受け取りなさい」
土方は素直に感動していた。心なしか瞳は輝き、ほんのり顔も赤い。
自分の性癖を理解した上でのプレゼント。の気遣いは嬉しかった。
(……こいつは凄えよな)
思い返せば、誰もが引いたマヨネーズの量、マヨネーズ尽くしの土方の料理を、は平然と受け入れていた…。
天然といえばそれまでなのだが、とにかくといるのは楽なのである。
(男を見る目は無えみてえだが…)
――こんな感想を男に対して抱く自分も自分だった。
「…」
いつもは素直に言えない気持ちを伝えようと土方は顔を上げた。
……は既にいなかった。
土方の胸を、空っ風が吹き抜けたのだった…。
◆◆◆
は山崎の部屋にやって来ていた。
「メリークリスマス山崎くん!」
「うわっ! わ、さんっ!?」
に飛び付かれ、山崎はふらついた。何度も経験しているのだが、未だに慣れない…。
赤面しつつもを離すことに成功した。
「きょ、今日はまた元気ですね」
「うん。クリスマスでしょ? 山崎くんにプレゼントしに来たんだよ!」
は笑いながら、大きな包みを差し出した。
山崎が受け取ると、「開けて開けて」と子供のように催促する。こくりと頷き、山崎は包みを開いた。
「どうかな、山崎くんのお気に召すかしら」
暖かそうな羽織と、コート。和洋折衷をかもしだすそのプレゼントに、山崎は「うわあ」と声を上げた。
そこにはすかさず箱を差し出して来た。…中身はクリスマスケーキである。
「要らなかったら売ったら金になるし!」
「売りませんよ! …い、良いんですか? こんな上等なもの…」
「山崎くんへの感謝と愛情のしるしだから」
恥ずかしい台詞をさらりと零すに、山崎はますます赤くなった。
とりあえず羽織を肩にかけてみる。凄くあたたかい。
「似合いますかね」
「うんうん!!」
「本当にありがとうございます、さん」
山崎から礼を言われ、は恥ずかしそうにはにかんだ。恋する乙女さながらのいじらしさである。
「どう致しまして~! …あ、そろそろお暇するね。あんまり長居したら見つかっちゃう」
「え?」
「土方さんに“許可貰って入った”って言ってきたんだけど、実は普通に塀越えてきただけなのよね」
のアグレッシブぶりには、ただただ閉口するばかりである…。
それもこれもは、「山崎くんに会いたいから」だと片付けてしまう。
山崎は、内心困っていた。嬉しくて有り難いけれど……自分のためにがそこまで尽くしてくれるのは、勿体ない気がした。
(僕とさんじゃ、全然釣り合いませんて!)
それでもの好意からくる行為は、とどまることを知らない。
「じゃあまた来るからね。良い聖夜を」
でも、言い訳ばかりして、好意に戸惑うばかりなのも、気が引けた。
去りかけたの手を、山崎が掴む。
「さんっ」
「なに?」
「その格好じゃ風邪引いちゃいます、少し待って下さい!」
山崎は何やらがさごそと漁り始めた。が首をかしげて待つ中、ようやく何か発見したらしく、に向かった。
「これ、さんに」
桜色の、柔らかそうなマフラーだ。山崎は赤い顔で、しかし微笑みながらを見ている。
かたまるに歩み寄り、山崎はそっとマフラーを巻いてやった。
「無いより、ずっとマシだと思いますから」
はじっと山崎を見る。マフラーを両手で撫でると、ふるふる震え、……破顔した。
真っ赤な顔で、山崎に飛び付き、言葉もなく歓喜に燃えている。
「さんっ…?」
「っ、ありがとう、ありがとうー! 一生大事にするッ、ありがとうー!!」
「は、はい、どういたしまして」
から漂う柔らかな香りに、山崎は鼓動が高くなるのを感じた。
無意識のうちに自分もの背中に腕を回していて。まるで恋人同士のような密着ぶりに、幸せで泣ける気がした。
「だーいすきだ、山崎くん」
囁くような声に、我に返った山崎は、真っ赤になって沈黙してしまったのだった。
Top