山崎くんにもプレゼントはしたし、後はホテルに帰って寝ようかな。
 まばらな人通りの中、ひとり白い息を吐きながら歩く。

「…ふふ、あったかぁい」

 山崎がくれたマフラーに顔を埋めるようにしては笑った。髪には銀時がくれたかんざし…。
 至れり尽くせりなクリスマス・イブである。

「にしても冷えるなぁ」
「予報では雪じゃからな」
「へぇー……っ!?」

 はがばりと勢いよく振り返った。
 ――晴明だ。晴明がいる。
 何時もの狩衣と違い、ごくごく普通の着流しと羽織の装いは、何だか新鮮だった。

「何でこんなとこに…」
「クリスマス・イブとは想いを交わす者同士が聖夜とは名ばかりの性夜を過ごす日なのであろう? が何処ぞの馬の骨の餌食になってはいまいかとわしは…」
「ならないならないだから帰って大丈夫です」

 去ろうとするの手を、晴明が掴んだ。
 が見上げると、晴明は何時になく真剣な眼差しをしている。思わずは声を詰まらせた。

…。お主はもう少し自分の魅力を自覚するべきじゃ」
「みっ…!?」
「外見のみならず、その心の、神秘的なまでの美しさ…。わしのみならず、惹かれる者は多々おるはず」

 吐息が掛かるほどに狭まる距離。ますます固まるに、晴明は更に言い募る。

「しかし…この無防備ぶり、危機感の無さ…。罪な人よ」
「へ、へぇ…」
「よって今宵は、わし直々に傍で見守ることにした!」
「帰れーいッ!」

 が振り上げた手を顔面で受け、晴明は「うぎゅあ」と奇妙な悲鳴を上げた。
 は憤慨しながら歩き出す。顔を押さえながら晴明が慌てて追いかける。

「わしはひとえにの心配を…っ」
「平気だって言ってんの!」

 が振り返りながら叫ぶ。…しかしはそれ以上何も言えなくなってしまった。
 晴明の苦しそうな顔が、細められた瞳が、の声を奪った。の胸には、言い表せられぬ罪悪感が生まれていく。
「…正直に、話そう」

 晴明が静かに口を開いた。

「わしは…世の恋人たちがそうするように、と共にこの夜を過ごしたい。初めてこんなにも愛しいと思えた、お主と共に」

 固まるの手を取り、晴明は真っ直ぐにを見つめた。

がわしではない誰かを想っていることも承知の上じゃ。…どうか今宵だけは、わしに夢を見させてはくれぬか」

 の顔は、みるみるうちに紅潮していく。空いている片手がマフラーを撫でる。

(山崎くん…)

 晴明はの返事を待っている。
 は、意を決した。

「…日が変わる前には、解散しましょうね」

 晴明の手を引いて、小さく笑う。
 の答えに、晴明は子供のように顔を輝かせ、深く頷いた。

(ごめんね、山崎くん)

 いつも江戸を守護してくれている残念なイケメンへの、なりのプレゼント。
 胸の中で細やかな懺悔をして、は苦笑した。

Top