さんは、マオやティトレイさんときゃいきゃい騒いでいるのがよく似合う。
 子供っぽいということでもあるけど、何よりさんにとって自然体な気がするから。
 操るフォルスは、時に激しく、時に繊細で。嵐のフォルスを持つあの人と、似て非なる力だった。
 彼にかかれば誰もが遊び相手で、男女もヒューマもガジュマも関係無い。それは、敵でさえも同じ。
 戦いの腕は確かで、私は、弓で敵を殴る人を見たのは彼が初めてだった。
 さんは、きっと何処かで傭兵の経験でも積んでいたんだと思う。
 だって、狩りだけでは、人と戦う術は身に着かないはずだから。

「アニー、下がれ!」

 呼び声に、私は素早く後ろに飛び退いた。
 代わるようにさんが少し前に出ると、バイラスに向けて連続で矢を放つ。

「回復しときなよ?」
「は、はいっ」

 さんは笑うと、接近していたバイラスを弓で殴り飛ばした。

「弓、壊れないのかしら……」

 私の呟きは、戦闘の激しい騒音に飲み込まれていった。


「あっ弦やべえ……」

 戦闘が終わり、弛んだ弓の弦をさんが引っ張りながらぼやいていた。

「お前、弓で殴るからだろ、それ!」
「拳でやると痛いだろー」
「だからって弓は無いだろ、弓は……」

 ティトレイさんの指摘はご尤もだった。さんも笑って頷いている。
 自覚はあったらしい。

「今度からは短剣でも使うわー」

 さんは弓の手入れ道具を広げ始めた。弦を張り替えるのだと思う。傍にいるティトレイさんが、弓を押えるのを手伝っている。

「ティトレイ、そのまんま押さえといてね」
「おう!」
「うわちょ待てあんま力入れないでよ折れるだろ!」
「ぬぁー難しいなぁ!」

 文句を言い合いながらもさんの手際の良さで、あっという間に弓の手入れは終わった。それからしばらく二人は何かを話していたけれど、よく聞こえなかった。
 気付いたら、呆ける私の目の前にはさんがいて。私は、きゃ、と小さいながら悲鳴を上げてしまった。

「お、悪い悪い。驚かせちゃったかな?」
「い、いえ、大丈夫です」
「ははは、いやぁ何かアニーがずっとこっち見てたから何かあんのかと思ってさぁ」

 別段用事がある訳では無かった。ただ、気付いたらさんを目で追っていただけで。
 何だか惹かれるのだ。

「意味も無く見てちゃ、ダメですか?」
「良いと思うが……あんまり見つめられるとお兄さん恥ずかしいぜ」
「うふふ、ごめんなさい」

 夢見がちな私のことだから、きっとこれは憧れというもので。

さんの生き方は、時々羨ましい)

 何時か私も、あなたみたいに素直な自分で笑えたら良いなと思う。
 何にも囚われない、ありのままの姿で、生きていけたなら。

「私、さんのこと、尊敬してます」

 そう言う私に、あなたは微笑んでくれた。

「お互い様って奴だな」

 意味が判らずに私が目を丸めていると、さんが私の頭を撫でる。

「僕はアニーを尊敬してるぞ。立派な医者になってくれよな」

 ――だから僕が病気になっても仲間のよしみで何とか頼むわ。
 さんらしい言葉だった。
 なんて飾り気ない、真っ直ぐさだろう。
 はねつけるのは憚れるくらいの、子供のような澄んだ声。

「はい、任せて下さい」

 憧れの影に生まれた、ちくりとする痛みを感じながらも、私は笑った。

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