の短所である“女嫌い”というものは、決して女性に触れないというわけでは無いらしい。

ーっ!」

 何時ものようにノーマに絡まれ、は琥珀の瞳を細めた。
 近寄って来てそのまま引っ付こうとするノーマの額を押さえて止める。

「ぐううーっ! 何でいっつも止めんのよー!」
「俺は女嫌いだと言ったろう」
「じゃあ男のが良いってわけ?」
「それは無い」
「ならこんないたいけな美少女にこの仕打ちは何よぉ!」
「いたいけな美少女? そんなの何処にいる?」

 むきー! と騒ぎ立てるノーマを口許だけの笑みで見つめる
 だいぶ慣れて来た光景を、セネルはぼんやり見つめていた。そばにいるクロエもモーゼスも似た感じである。

「ノーマも懲りないな」
の女嫌いを治してやる! と意気込んでいたからな。暫く粘るだろう」
「ほお、健気じゃのう」
「健気なのか……?」

 その健気なノーマは遂に諦めてと距離を取り、普通に話し始めた。も普通に応じる。そこにシャーリィ、グリューネまで合流して、輪が広がった。流石にの顔が若干引きつり始める。

って女嫌いの割に、女性に挟まれることが多いよな」
「何処となく辛そうだな……」
「それでも、前のよか進歩しちょるわ。女子一人の相手もまともに出来んかったからの」
「そういえば」

 初めて会った頃のは、女性と口を聞くことさえ拒んでいた。今では何とか会話出来ているのだから、確かに進歩だろう。

「折角いい男なんじゃから、女嫌いっちゅうんは勿体ない」
「確かに、整った顔立ちではあるな。瞳も人と言うよりは獣のように鋭いし……」
「惚れたのか、クロエ?」
「それはない!」
「やたら一生懸命に否定するなぁ……」

 そうこうしている間に、いつの間にかが消えていた。ノーマたちの様子からして、が限界を迎えて離脱したと見える。

ってば本当につれないね」
「そうかしら? ちゃんは、わたくし達のこと、すっごく好きでいてくれてるわよぉ」
「そっかなー」
「だって、ちゃんとお話の相手をしてくれるもの」
「ああ、なるほどー!」
「最初は、まともに挨拶も出来なかったですもんね」

 あちらでもこちらでも、の話になっている。何だか不思議な気分だ。
 そんなは何処に行ったのかとセネルは周囲を見渡した。
 どうやら、ウィルとジェイの話し合いに参加しているらしい。は頭も切れる方だから、別段珍しい光景ではなかった。

は、あまり山賊という感じがしないな」
「それはワイも思っとった」
「俺がアジトに行った時も、まるで知り合いに会ったかのように軽かったし」
「……ワイも何とかしようとは思ったんじゃが、治らんでの……」
は、チャバ達みたいにモーゼスを敬う様子もないし」
「…………ワイも判っちょるわ、そんなの」
「クーリッジ、もうこの辺にしてこう?」

 何故かモーゼスが落ち込み始めたので話を区切った。
 ――なんにせよ、セネルは、のことをこうやって気軽に話題に出来るくらいには信頼している。
 のらりくらりとしているようで、彼は実際、仲間たちの状況や心情を察して行動しているのが判るからだ。
 モーゼスが気付いていないだけで、はモーゼスを大層慕っている。いつだったか、彼自身から聞いたから間違いない。

『俺にとってモーゼスは名付け親だからな』

 とても懐かしそうに、その時の想いを振り返りながら、セネルに話してくれた。
 ただ、ちょっとばかしぶっきらぼうなだけなのだ。

「ん? どうしたんだジェイ。話し合いは終わったのか?」

 気が付くとげんなりしたふうのジェイがセネルたちの側に来ていた。

さんからちょっと距離置きたくなっただけです」
「何かされたのか?」
「いいえ、話をしただけです」

 ジェイは盛大な溜め息と共に告げる。

「以前からさんは剣術の心得もあるようなので“鞭より剣で戦った方が早くないですか”って聞いたんですけど、そうしたらあの人、“そう、早く終わる。だから嫌なんだ”って……。少し引きました」

 ……。ぶっきらぼうに喋りすぎて変な誤解が生まれるから、そういう時にはもう少し具体的に話してくれ。
 セネルが後々確かめると、実際に色々語弊があったことが判った。

「剣を使うと確かに早い。だがモンスターはともかく対人戦じゃ早く終わらせるために剣をふるったら気分が悪い。あと使えるからといって剣術が好きな訳じゃない。だから鞭にした」
「ジェイから聞いた限りじゃ相手を長く痛め付けるためみたいなニュアンスに聞こえたぞ」
「腹立つ相手は痛め付けるからな、嘘ではない」

 ――モーゼスたちがお人好しなぶん、一人くらいシビアなメンバーがいても良いのかも知れない。
 セネルはただ苦笑するばかりだった。

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