心細いだろ。
 今まで見ていたものが全て違うものに変わって、その「違い」を認識するのは自分だけだなんて。
 どんな気分なんだろ。
 オレも恵まれた生活をしてきたとは言えねーし、死人と戦う羽目にもなったし、よく判らねえことだらけで、でも。
 周りと違う、明らかに「異質」な自分ってのは……どんなもんなんだろな。


「“あなたの正直さと誠実さがあなたを傷つけるでしょう。気にすることなく正直で誠実であり続けなさい”」

 いきなりオレを見てそう話したの考えてることなんて判るはず無かった。
 こいつはバカで、突拍子が無え。そして固まるオレを見て楽しそうに笑いやがった様は、イタズラに成功したガキのそれと変わり無かった。

「どうだ! 俺の世界に生きてた、信じられないくらいすげー白衣の天使サマの言葉だぜ」
「さも自分の言葉みたいに語ってたじゃねーか」
「まあまあ、今から俺めっちゃ素敵なこと言うから」

 帽子を被り直して、が話す。

「この“あなた”がまんまクロウたちみたいだからさ。何かね」
「はぁ?」
「クロウたちの傷つきようは半端ないだろ」

 犬みたいにくりくりした目で瞬きして、ひとりで頷く。何なんだ。コイツまたどっかで頭でも打っちまったのか。

「クロウの誠実と正直は、クロウの優しさに拍車をかけ、しかし逆にその優しさが俺には痛いんだ」

 オレはハッとした。
 年下のくせに、バカのくせに、は妙な知恵が回る奴だ。

「俺は“異質”と表現されたのがちょっと痛かった」
「……わりぃ」
「だけど、クロウが俺を案じてくれてるのは嬉しかった」

 こいつは、痛いや辛いをも自分の中で処理してから笑う。周りには結果しか見せない。
 はそういう奴だった。
 最初は動揺してる時もあったのに、今は上手く隠して、オレたちには「そうだったのか」ぐらいしか言えない状態を作り上げる。

「でも俺は大丈夫なんだぞ。クロウお母さんを支えるためにバイトを頑張らなきゃだしな」
「誰がお母さんだ!」

 へらへら笑うが、へらへらとオレの怒鳴り声さえ受け流す。

「いつかの為に、みんなには楽しそうで笑わせてくれる俺だけ覚えてもらわなきゃいけないからな!」

 がその言葉に込めた意味に気付いたオレは、思わず息ごと声を詰まらせた。
 なのに、変わらず笑うが、なんだか腹立たしくて仕方なかった。

 ――こんのバカ野郎が!

 来るはずの“いつか”。
 オレが誓ったはずの、その瞬間のことを考えたら、どうしようもなく苦しくなった。

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