そっと触れた彼の手は、思ったよりも冷たかった。
「ジャック、寒い?」
頭一つ分より背が高い彼を見上げるというのは、いささか首にくる。
紫の瞳が俺を見て固まっていた。
俺は困った。首にじわじわ疲れが溜まる。平均的な己の丈が少しばかりいやかなり悔やまれた。
とりあえず、もう一度声を掛けてみる。
「寒いのか。って聞いたんだけど」
彼は無言で首を振る。
なら良いや、と俺が離し掛けた手を、何故かジャックは掴んだ。
背が高ければ手も大きいのか。平凡サイズの俺の手は、ジャックの手にすっぽりと収まった。
手のひらまで冷たい。
「ジャック?」
「……すぐに離す」
だから、少しの間だけ。
ジャックはそう言ってまた黙り込んだ。
こんなに静かなジャックは初めてだ。俺はいったいどう対応したら良いんだろう。
ジャックのいう“少し”がどのぐらいのものか俺には判らない。けれど、待てども待てども手を離してくれる様子は無かった。
「ジャック寝てんの?」
「起きている」
「なら良いけど」
また沈黙。
普段のジャックならまだしも、今のジャックを笑わせるようなネタが俺にはない。仮にしくじっても、普段のようにつっこみをしてくれる様子もなかった。
俺が悩み、小さく唸り始めたころ、ようやくジャックが口を開いた。
「……嫌か?」
「手のこと? 嫌なら言うって」
「そうか」
どことなく嬉しそうだ。俺の気のせいだったら恥ずかしい。
キュッと気遣うように手を握り直した後、ジャックは俺の手を離した。
若干眠くて熱かった手の温度は、ジャックの手の温度と交じって丁度よくなっている。
ぼけっと自分の手を見つめていたら、少し眠気がやってきた。もう日が変わる時間だ。俺は明日に備え、日付が変わる前に寝るという真面目な奴なのである。
「」
ジャックが俺を見た。
「何故、オレの手を掴んだ」
「え?」
俺は一瞬呆気にとられたけど、考えるまでもない質問にさらりと返す。
「なんか、寂しそうだったから掴んだだけ」
ジャックは目を見開いて俺を見ていた。珍しいな、こんなジャックの顔。
でもいい加減眠気が限界に来ていた俺は、勿体ないと思いつつも踵を返した。
「おやすみー、ジャック」
返事も聞き取れないままに部屋に帰って、俺はベッドに倒れ込んだ。
――それ以来、時々意味もなくジャックに手を掴まれるようになったけれど、俺は特に気にしなかった。
大きいわりに縋るように伸びてくる手を、拒める訳もなかったから。
それに……。
「この甘えん坊さんめ」
「誰が甘えん坊だ」
ジャックの顔が赤いことに触れないであげるあたりからも判るように、俺はすごく優しい奴なのである。
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