「遊星のバカ、遊星のアホ、遊星のにぶちん、遊星のおたんこなす、遊星のバカヤロー!!!」

 二回もバカと言われた。
 どうにか俺の話を聞いて貰おうと伸ばした手は、荒れているによって容赦なく払われてしまう。
 少し痛い。

「お前は本当に人前でよくあんなこと言えるよな、あれ告白ってレベルじゃねーぞ! お前モテモテなんだから、少し控えようよ! 俺、闇討ちされるがな! 殿中でござる! 仕事人が来る! 判ってんのか!?」
「あんなこと?」
「あれだよ、“とにかくと一緒にいたい”。……あの流れで言うか、言わねーぞ普通!」

 は憤慨しながらも話してくれた。俺の台詞をわざわざ低めの声で真似ながら。ときめいた。

「お前、シェリーは結構シンプルな性格してんだから! お陰で俺、シェリーとデュエルしなきゃいけなくなっちゃったし!」
「シェリーは“いつか”と言っていたろう?」
「あの“いつか”ってのは、何時挑まれても良いように構えてなさいってことだよ……」

 さっきまでの勢いはどうしたのか、はがっくりとうなだれてしまった。
 よく判らないが、は俺のせいで動転しているということだろうか。いわく“普通言わないこと”を言ってしまった俺のせいで…。
 それは申し訳ない。に悪いことをしてしまった。

「すまない、
「……そう思うなら口説き文句封印してくれな。あーいうのは好きな子につかうもんだ」
「口説き……? 俺は素直に思ったことを言っただけだ。そんなつもりじゃない」
「尚更重症じゃないか……」

 力無くは首を振った。オレンジのニットキャップを被り直しながら、彼はぽつりぽつりと話し始める。

「前言撤回だ。遊星のそういう素直なとこは長所だよ。悪くはない。けど、俺にはいちいち言わなくて良いよ。ちゃんと判ってる。遊星がもっと大好きな子ができた時、その子に、その子にだぞ? 俺に言わなかった分もしっかり言葉にして伝えてあげればいい」

 長いの言葉を、何とか理解した。
 ちらりと俺の様子をうかがうように顔を上げたに、頷いてみせる。
 は目に見えて明るさを取り戻した。

「良かった良かった! じゃあ俺は遊星といつか出会う運命の子を応援してるからね! もうこれで争奪戦とばっちりとはおさらばだ」

 るんるんと踵を返し掛けたの手を、俺は素早く捉えた。
 ぬお、とよく判らない声を上げてが止まる。中途半端な角度で俺たちは向かい合った。

「な、何」
「理解はした。だが、納得したわけじゃない」
「……え」

 の頬が引きつった。
 俺は少しだけを睨んだ。

は俺が何を言っても言わなくても、肝心なところを判っていない」

 はわざと見ない振りをして、聞かない振りをして、ずっと逃げている。
 狡いじゃないか。
 だから今回は、逃がしてやらない。

「俺は、より大好きな人がいないし、が言った運命とやらも、に感じている」

 こうして向き合って言えば、もさすがに知らん顔する訳にはいかなかったようだ。唸りながらも、視線を泳がせながらも、彼は口を開く。

「……あのなぁ、遊星。今までの話の流れで、“コイツ超うぜぇ”とか言うならまだしも、告白ってどういうことなの」
「お前の欠点ごと俺は愛している」
「つ、つかさ。話的に俺はお前をそういう風には見れません範囲外です! ってニュアンスだいぶ漂ってたはずなんだけど?」
「話的には、そうかもな。だが、

 の肩を掴み、しっかりこっちを向かせる。

「……俺をそういう風に見れないなら、どうしてこんなに顔が赤いんだ?」

 意地悪く笑いながら指摘してやると、はますます顔を赤くした。
 帽子を深く被って隠そうとする仕草に、俺はまたときめきを感じてしまう。
 沈黙してしまったに、俺は静かな声で囁いた。

「もう勘違いさせないように、“普通言わないこと”はお前にしか言わないようにするよ」

 が小さな声で、「やっぱり遊星はバカだ」と零す。これで三回目の“バカ”だ。
 言いながら彼は、耳まで真っ赤にしていた。

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