オレはのことが大好きだ。もオレのことを「大好きだ」って言ってはくれたが、本当にそうなのかは正直判らない。
はよく走り回る。
デュエルで判らないことがあるとジャックのところに行き、電子レンジの調子が悪いと遊星を呼び、棚にしまった皿がとれないとブルーノにとってもらう。
休みがあればアキと一緒に教科書とノートを広げ向き合い、暇だと駄々をこねた龍亞と呆れる龍可を巻き込み気分転換だとトランプを始める。
やること頼むことの内容は日毎に変わってるが、共通して言えることがひとつ。
オレとの接触が少ねえ!
いや、少ないとかってレベルじゃねーよ! ほぼ皆無じゃねーか!
本当に好きなのか?
お前が言ってたのは、あれか、「大事な友達」ってことか?
オレしっかり説明したはずなんだけどな。もしかして通じて無かったのか?
遊星じゃねーんだから天然記念物級の鈍感だとかそういうオチは止めてくれよ?
悩みながらもテキパキ仕事をこなす自分に涙が出そうだ。
あんまりにもテキパキだったもんだから、何時もより随分早めに終わった。配達の依頼自体も少なかったから、今日はもうのんびり出来そうだ。
ポッポタイムに戻って、ブラックバードの手入れをして、それから少し遅めの昼飯にしよう。後は……テキトーに寝る。
我ながら完璧な計画だぜ。
ポッポタイムには誰もいなかった。ブルーノも出掛けてんのか。ジャックはまた何処かでバカ高えコーヒー飲んでんじゃねえだろうな。
とりあえず、ブラックバードを……と振り返った時、奥の方から物音がした。
また体の向きを戻す。
「あ、おかえりクロウ!」
出てきたのはだった。
今日はバイト無かったんだな。そんなことさえ知らなかったのか、オレは。……何だか嫌だった。
そんなオレの心境なんて知らないは、にこやかにオレに話しかけてくる。
「クロウ、昼は?」
「あー、まだ……」
「ラッキー。俺なんか作るから一緒に食おうぜ」
「おう。んじゃあ、ちょっくらブラックバードのメンテしてくるわ」
「はーい」
るんるんと歩いていくの背中を見つめてから、踵を返した。
メンテナンスを終わらせて戻った時にはもう昼飯のチャーハンが完成していて、扉の近くでとぶつかりかけた。ちょうどオレを呼びに行こうとしてたらしい。我ながらナイスタイミングだ。
テーブルの上に置かれた2人分の食事を挟むように向かい合って座る。
「クロウのほどじゃないけど結構美味く出来たつもりだから!」
の笑顔に押されるようにして、まずは一口。……少し薄味だけど確かに美味い。一緒に用意されてたスープも飲んでみる。こっちは塩加減もばっちりだ。
「確かに美味いぜ、」
「だろ!? やった、クロウに誉められたし!」
ああもうの奴テンション上がりすぎて頬が赤くなってんじゃねえか。
なんかもう可愛い。可愛いよコイツ。ぱたぱた揺れる尻尾がついててもおかしくないレベルだ。
「なんか俺ら新婚さんみたいだなー」
「ぶふっ!」
「ちょ、クロウ大丈夫!?」
いきなり何言ってんだよ。オレからしてみりゃ大歓迎だったが、が単なる冗談で言った可能性は限りなく高い。
オレは混乱してしまった。
「か、からかうんじゃねーよ! ばか!」
「えっ、結構マジメだったのに」
「嘘吐け、お前そんなにオレのこと好きじゃねえだろっ!」
が目を丸めた。
きゅっと唇を引き結んで、凄く悲しそうな顔でオレを見てくる。
心臓が、ずきりと痛みながら跳ねた。
「……クロウ、俺のこと好きだって言ってくれたじゃん」
「え……っ」
は俯いてしまった。
そこでオレはようやく気付いた。混乱したオレの発言が、を傷つけてしまったんだと。
だけど、それじゃあ、まるでこのの反応は……オレのことを「好きだ」って言ってくれてるみてえじゃんか……。
「クロウのばか。ばか!」
「うぁ、あ、悪ぃ……」
「なら何であんなこと言うんだよ! 明確な理由を求める!」
若干潤んだ目と震えた声に、オレは渋々口を開いた。
「だってよ、お前、他の奴らとばっか何かして、オレんとこにあんまし来ねーから……」
「クロウいっつも疲れた顔してるから絡むタイミング掴みづれーの!」
むすっとしながら頬杖ついて、はそう話した。
……そんなの言われなきゃわかんねーよ。
自分だけ苦労してるみてえな言い方に、少しだけカチンときた。
「オレだって、お前がやたら他の奴ばっかり構うから、どうしたもんかって悩んでたんだっつーの」
「だって疲れてんのに絡みにいったら、逆に迷惑じゃん!?」
「そういうことを考えられるなら、他の奴と自分の好きな奴が一緒にいるってのがどんだけ嫌か、想像できねぇのか!?」
はハッとしたように目を見開いた。
「……嫌だ。確かにすんごい嫌だ」
「だろ?」
「でも……クロウはヤキモチやかないと思ってた」
「オレはそんな聖人君子じゃねーから」
鈍いっちゃ鈍いが、物分かりは悪くない。は判ってくれたみたいだ。
けどオレも、怒鳴ったりしちまったのは悪いと思ってる。けど謝りづらかった。
そうこうしてたら、先にに謝られてしまった。
「クロウ、ごめんな」
「あ?」
「これからはまず素直にクロウに甘えに行く!」
さっきまでの泣きそうな顔から一変して、きらきら輝く笑顔がオレを見つめている。
思わず体が熱くなった。
「ああ、何時でも来やがれってんだ」
「だからクロウも俺にじゃんじゃん構ってくれるよう願う」
「ばっ、んなこと恥ずかしくって出来るか!」
慌てて返したオレに「構って欲しいのか欲しくないのか判んない奴だな」とかぼやきながらも、は楽しそうだった。
冷めた昼食を平らげた後、俺たちは、今まで絡めなかった分も取り戻すぐらいべたべたにくっ付いて過ごした。
妬いてたのも妬かれてたのも嬉しくて仕方ない。
オレらは本当に馬鹿だけど、でも、お陰様で最高に幸せだ。
「クロウーっ!」
「っうわぁ!?」
ただ、遊星たちがいる前でも遠慮なく引っ付かれるのはどうにかして欲しいぜ……。
ご機嫌なを受け止めながら、オレはひっそりと願った。
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