「、俺たちからプレゼントだ」
案内されたガレージで俺が見たものは、とんでもないものだった。
ピカピカの真新しいDホイール。俺好みの明るめのカラーリング。前の世界で乗ってた俺のバイクにどことなく似てるけど、こっちの方が限りなくカッコいい。
「つかプレゼントって、え?」
「このDホイールだよ」
「え!?」
俺の驚きぶりに、みんなは大層笑った。
「バイトに行くにも足があった方、便利だろう?」
「いや、でも、俺、金もねえし!」
「気にすんなっての。お前がこまめに入れてくれる生活費やら何やらからも捻くりだした結果だよ」
夢みたいだ。
前々からDホイールには興味があったんだけど、いつか元の世界に帰ることを考えたら勿体ないし、お金もない。
そんなのみんなも判ってるのに。それも承知で、俺にDホイールを用意してくれた――。
何だか目頭が熱い。
「大丈夫? 、泣きそうだよ」
心配してくれたブルーノに、「大丈夫」と慌てて首を振って返す。
とにかく貰ったからには分身として愛でまくる。名前も考えよう、ブラックバードみたいにカッコいい感じのやつ!
興奮に震える俺に、遊星が話しかけてきた。
「。提案があるんだ」
「ん! 何だ?」
「早速俺達と一緒に、走ってみないか?」
思わぬ申し出だった。俺達ってことはジャックやクロウも一緒なんだろう。
ますます興奮してきた。
ぶんぶん音がしそうな勢いで頷く。遊星がそんな俺を見てクッと笑った。相変わらずのイケメンぶりである。
「じゃあ……明日、少し早い時間だが起こしに行く。一緒に走ろう」
「おお! じゃあ今日中にDホイールのこと覚えておくぜ」
「ならばオレが直々指導してやる。まあ、殆ど教えることはなさそうだがな……」
それから俺は、ジャックからDホイールの乗り方を教わった。バイクと殆ど感覚が変わらない。違うところと言えば、やっぱりライディングデュエル仕様だってことだろうか。
試しに走らせようかとも思ったけど、それは明日の楽しみだ。
ジャックたちにありったけのお礼をして、俺は就寝した。
朝早く、まだ日も昇っていない時間。薄暗い部屋の中に、キィと扉の音がした。
遊星の限りなく控えめな声に起こされ、何とか支度に取り掛かる。
俺はしっかりツーリングの約束を覚えていた。あんなに楽しみだったし、昨日の約束だし、忘れるわけもない。
いつものノリで学生服とパーカーを来たとき、遊星が「あ」と口を開いた。
「ライダースーツも……考えないとな」
「……とりあえずヘルメット貸してな」
「ああ」
ライダースーツの遊星の後ろをついていく。外にはすっかり準備万端のジャックとクロウの姿があった。
「じゃあ行くか!」
「うむ、間に合わなくなってしまう」
話もそこそこに、俺たちは薄暗い空の下を走り出した。
スピードが結構出る! 俺的にドツボすぎる設計だ。前にちらほら話したバイクのこととか覚えてて、反映してくれたのかな。
遊星、ジャック、クロウと共に走り続け、湾岸へと着いた。
人っ子ひとりいない湾岸に、じんわりと光が差し込んでいる。海のほうからだ。
「初日の出、ってな」
クロウの呟きで、俺はようやく全てを把握した。こんな朝早くにツーリングを提案したのは、このためだったんだ。
もっと言ったら今日は元旦元日。新しい年の一日目なんだ!
「あけましてっ、おめでとーっ!!」
俺は一番大きい声で叫んだ。
「新年早々騒がしい奴だな」
「らしくて良いじゃないか」
「そーそー」
呆れたみたいにジャックは呟いてたけど、その顔にはやんわり笑みが浮かんでいた。
……そうだ、閃いた。Dホイールの名前。
「なあ俺、このDホイールの名前決めた!」
「そうか、教えてくれるか?」
「おう!」
きらきら海の向こうで輝く朝日を拝みながら、俺は言った。
「ラビットファイア!」
大事な相棒や色々なものに俺なりにちなんだ抜群の名前。ウサギはちょっと可愛すぎかもしんないが、どうだろう。
みんなの顔色をぐるっと見回す。
「すごくらしい」
「ファイアか……、ふむ。良いではないか」
「ウサギが幸運を運ぶなんてこともあるし、いまいちツキの無いにはぴったりだぜ」
「クロウひでー!」
何時の間にかすっかり日の昇った湾岸に、男4人の騒ぎ声が響く。
色々ありすぎて挫けそうだったけど、俺がいた世界とは違う場所だけど、変わらずに時間は流れた。俺を助けてくれた遊星たちとの絆は、本物だ。
変わったけど、変わらないものもいっぱいある。
俺は改めて遊星たちを見た。
「今年も、よろしくな!」
ありったけの思いを込めた挨拶に、やっぱりみんなは、笑って返してくれた――。
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