シャドウや影時間を通して学園の有名人と関わりが出来てから、が今まで独りで静かに過ごしてきた生活は一変した。
「だから、真田先輩! 話なら寮で聞きますからっ」
特に真田明彦という人間は、ファンクラブが出来るほどの存在である。ファンクラブには“抜け駆け禁止”という暗黙のルールが存在し、クラブに属していようが無かろうが、真田に近付いた女子には冷たい洗礼が待っているという噂も聞いた。
そんな争いに巻き込まれるのは御免だし、中身が男である自分なんかが話して恨みを買うのも遠慮したい。
しかし真田は世話焼きだった。そして単にサボっていただけなのに周りから「病弱」とされていたの存在は、世話焼きの心に火を点けた。
「寮で……って、やはりサボる気満々じゃないか」
「そんなんじゃなくて……」
しっかり捕まえられた右腕は、幾ら振りほどこうにもびくともしない。
近い。あの真田先輩が、近い。人気があるのも頷ける顔立ちだ。
……周りの生徒たちの視線が、静かに突き刺さる……。
何時か視線をはねっ返すぐらい輝いてみせる畜生!
は胸中でそう叫びながら、口では別の言葉を紡いだ。
「先輩、あの、周りの視線がやばいくらい痛いんですが」
「美鶴や山岸から聞いたぞ。お前が周りとの交流を一切断ち切っていて、サボりの常習犯だってこともな」
「うああ、ごめんなさい、ごめんなさいってば……」
の胸中の叫びは勢いと量を増していく。
こんな、人の注目の的にされたの、久しぶり過ぎて怖い……! 下手したら…いやしなくとも、真田先輩ファンクラブの攻撃の的にすり変わるっ! そんなの、シャドウと戦うよりよっぽど怖い! てか先輩、人の話ちゃんと聞いてる!? スルーされてますよね、俺の叫び! 傍から見たら、何事だって感じだよね。そこらの女子に詰め寄る学校いちイケメンの先輩というこの構図。
俺、本当に明日から学校来れないかも。怖くて。
が目に見えて気力を失っていくのを、真田も気付いた。
「な、何だ。、お前泣きそうじゃないか? まさか本当に具合が悪かったのか?」
「いや、あの、これはビビって……」
「まさか連日の探索が……。すまない、気を遣ってやるべきだった」
「あ、あの……」
真田先輩と関わって、は気付いたことがある。
この人、思ったより馬鹿な人です。すぐ突っ走るんです。人の話聞いてくれないんです! クールな顔してますけど中身は天然なんです!!
見当違いな心配をする真田へ、は必死に訴える。
「だ、大丈夫ですから! 周りの視線に気付いて……」
「は? 周りの視線が何だ」
「下手したら、自分、攻撃の的に……!」
「攻撃? ……ああ、安心しろ、」
やたら綺麗な笑顔で真田は言った。
「ちゃんと俺が守ってやる」
は目の前が真っ白になった。
同やら真田は“攻撃”という言葉から、シャドウか何かと対した時の話と勘違いしているらしい。
(だから周りの視線に気付いてくれぇぇえッ!)
このまま倒れて気絶したら、楽になれるだろうか……。
力ないの腕を真田はしっかり引いて、歩き出す。
「放課後、ヒマだよな? たまには二人でメシでも行こうぜ」
「っ、でも、皆の夕飯……」
「毎度毎度、あの人数分の食事を作るのは大変だろ。今日くらい休め。皆にも伝えておく。……面倒見良過ぎなんだ、お前は」
――そういう訳だから今日は、サボらないで学校にいろよ。
真田の言葉に、は諦めたように頷いた。
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