タルタロスに潜る日々に、真田明彦ひとりを除く皆は疲労していた。
 特にラウンジのテーブルに突っ伏す順平の疲労困憊ぶりは痛々しかった。

「順平、風邪?」
「うぅー……ちくしょー……だりぃ……」
「なのにコンビニとか行くから、あんたは」

 奏夜とゆかりに挟まれ、風邪に苦しむ順平の姿。
 もしかしたら脆い方なのかな。この間も風邪っぽいって唸ってたような。
 のんびり焙じ茶を啜りながら、は見守っていた。しかし。

「めんどくせー……、ゼリー食って寝よ……」

 順平のその一言は、黙っていたに火をつけた。

「若いからってそれはいかーん!」
「っうわ!? 、どうしたの?」

 叫ぶにゆかりが真っ先に反応するが、の耳には届いていない。

「待ってなさい! 今おねーさんがちゃんとしたもの作ったげるから」
「え? てか、おねーさんって……」

 やはりゆかりの言葉に反応するより先に、は素早く自室に飛び込んでいった。5分もしないうちには大きな袋を抱えて戻ってきた。そしてそのままキッチンへと突入する。

「……なに?」
「作るって、なに?」
「さあ……」

 三人が向き合っているうちに、美鶴が、真田が、そして風花が……と、いつもの面子が集結していた。
 キッチンから漂ってくる良い匂いに、自然とお腹が食事を求める。
 いい加減何か食いたい!
 よくわからないフラストレーションが一同の中で弾けそうな時、が小さめの鍋を抱えてやって来た。

「順平くん、梅干しは平気?」
「え? あー、うん」
「良かった、さあお食べ」

 順平の前に置かれた鍋。がニコニコと笑いながら蓋を開ける。
 ふんわりとした湯気と共に顔を出したのは、お粥だった。

「玉子とか野菜とか、有り合わせの材料だけど」
「い、良いの? これ、オレが食っちゃって良いの?」
「風邪引きさんの為に作ったんだよ?」
「……いっ、いただきますっ!」

 熱いから気をつけてねー、とが笑う。
 お粥をどんどん食べ進める順平を見て、奏夜がぽつりと呟いた。

「……俺も食べたい」

 そんな奏夜には話し掛ける。

「いっぱい米炊いたから、皆にも雑炊作ったよ。食べます?」
「食うっ!」
「食べるっ!」

 やたら元気よく名乗り出た真田と奏夜に、は苦笑した。

「食べるからには不味いとか言って残したりしないでね」
「勿論残さん!」
「凄い気迫だな……明彦……」

 そして、その日の夕食は皆で過ごした。騒がしくも楽しいものとなり「食べ物に困ったらまたに何か作らせよう」というささやかな流れが出来た。

「飯炊きババアか俺は!」

 そう言いつつもは、それから皆の朝食の面倒まで見るようになったのである。



+α


、自炊するんだね。俺もだよ」
「奏夜くんも? へえ、自炊仲間だね俺たち」
「だね」
「良かったら米分けるよ。祖父ちゃん祖母ちゃんがいっぱい送ってくるんだ」
「何処の米?」
「新潟」
「ぜひ下さい!」

 そうして、またひとつ、絆が深まったのである――。

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