※荒垣離脱後設定


「真田先輩って、雪景色に埋もれそう」

 笑うを、真田はきょとんとした顔で見返した。

「髪とか銀色だから、きっと埋めれば溶け込むよ」
「埋めるなよ……」
「あはは、冗談ですって」

 でも、と一区切り置いてはまた話しだす。

「先輩、赤い服多いから、大丈夫かもなぁ。いやぁ一度冬の新潟連れてってみたい! そして雪掻きをさせてみたいッ!」
「後半が本音だろ、全く」
「でも良い所ですよ。先輩も好きになると思うけどなぁ。トレーニングにもうってつけ」

 マフラーに顔を埋めたまま、くしゃりと笑うその姿に、少しだけ息を呑む。
 黙っていれば綺麗なのに、こいつはよく喋る。コロコロと表情も変わって、忙しそうだ。
 彼が笑えば自分も嬉しいし、泣けば自分も悲しくて、泣かせた奴を叩きのめしてやりたくなった。

「荒垣さんにも、見せたいな。新潟の雪」

 少し寂しそうな声音に、真田は声を詰まらせた。
 はまた、ぽつりぽつりと、言葉を零す。

「俺がもう少し早く行けてたら、荒垣さん、あんなことにならずに済んだ」
「お前は……何も悪くないだろ」
「良い悪いじゃなく、悔しいんです。判るっしょ先輩なら」

 癒えない傷を押さえて笑う後輩に、真田は眉をひそめる。
 ――シンジには、勝てないな。
 荒垣を想って俯く後輩の背を、見つめることしか出来なかった。
 ――俺じゃ、駄目なんだ。
 伸ばし掛けた手は、空を掻いて、静かに下げられた。


(Title by 貴方の唇に届かない)

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