※ゲーム本編後日談設定※



「はい問題です。今日は何の日でしょう」
「恋愛にうつつを抜かして仕事をサボった二人の、年に一度の逢瀬の日」
「夢が無い、却下!」

 そんな訳で七夕です。

「去年は七夕とか言ってらんなかったしなぁ」
「そうだね」

 でも七夕だからってやることも無いんだよね。今更短冊書いて吊して笹の葉さーらさらー、なんて言わないし。星空も見えるか怪しい感じだし。

「オレっちは兎も角お前はあてがあるんじゃね?」

 順平くんの意味することを理解するまで、少し時間が掛かった。
 俺のお付き合いしている、ひとつ年上の先輩のことを指しているのだ、と。

「いや、七夕だからってのも意味判んないだろ」
「いーじゃんいーじゃん! お前だけの彦星サマにお願いしちゃえよ! 最近会って無いんだろ?」
「うん……」

 最近俺は進路活動に勤しんで、バイトに勤しんでる。そのために、ちょっと疎遠になっている“彦星サマ”……。
 何処の乙女だよ俺は。
 そう思いつつ、携帯電話をひっぱりだす俺も俺だった。
 けど困る。何を言えば良いんだ。
 悩む俺から、焦れったくなったらしい順平くんが携帯を奪った。

「ちょっ、え!?」
「仕方ない織姫サンだなもう!」

 順平くんは勝手に電話を掛け始めた。

『どうした?』
「もしもし、こちら伊織順平です。彦星サマが来ないようでしたら、放課後オレがあなたの織姫サマをさらっちゃいまーす!」
『は? おい、待――』

 素早く電話を切った順平くんが、爽やかな笑顔でこちらを見てくる。

「楽しみだな!」

 俺は頭の中が真っ白だった。順平くんの、せいだ。

「何してくれてんだよダアホ!!」
「あっはっはー!」

 それからは散々だった。授業の内容は頭に入らないし、昼の食事も味がしない。
 午後は居眠りもできなくて。
 そんな調子で……放課後になった。
 やたらぐったりする。最近暑いしなあ、冬生まれには厳しい。
 ――さっさと帰ろう。
 のんびりと教室を出て、玄関に向かった。
 なんだか玄関は騒がしい。数人の女子が黄色い声を上げている。

「あの人カッコよくない?」
「誰か待ってんのかなっ」
「あれ? あの人って確かー……」

 関わらないようにその脇を抜けて、歩を進める。知らん顔で校門を抜けようとした――その時。

「おい待て」

 捕まれた右手。聞き覚えある声。慌てて顔を上げた俺。

「折角来たってのに、シカトは無いだろ? “織姫サマ”」

 クッと笑って、俺を見つめるその人。
 顔が赤くなるのを、押さえられなかった。

「――せん、ぱい?」

 女子が騒ぐ訳だ。久しぶりに会った先輩の格好良さは、凄かった。美形ぶりが増している気がする。
 会って無かったせいで、この格好良さに対する免疫がなくなってるのかもしれない。

「順平が変な電話をしてきたからな、焦った」
「あ、そう……」
「さらわれる前に来れてホッとしたぞ」

 生で先輩の声きくの、久しぶりだ。
 すごく……落ち着く。
 何だか泣きそうになった。
 会うの、我慢してたからかな。
 進路やバイトのせいにして、時間をなくしてた。
 あんまり会っちゃいけないような、気がしてた。
 あっちだって新生活がスタートして忙しいんじゃないかって。
 でも、先輩は来てくれた……。

「今日は、二人でゆっくりしような」

 笑って俺の手を優しく引く先輩に、俺は子供のように頷いて返したのだった。
 ――順平くんに感謝、だなあ。

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