「頼む、一度で良いんだ」
「ちょっとだけだから!」

 桐条先輩とゆかりちゃんのお願いごとは大したことじゃなかった。
 ちょっと着て欲しいものがある。ついでに服装に合わせて髪もいじらせて欲しい……と。
 だから、必死な二人の申し出にもすんなり頷いた。
 二人は大層喜んでいた。

「では早速だ。これに着替えてくれ」
「はい……って、これは」
「リーダーが用意してくれたのよ」

 入手経路が気になりつつも、渡された衣装に着替えてくる。
 二人は、はしゃいでいた。

「やはりな! 君にはこういうものも似合うと思ったんだ」
「早速髪型いじらなきゃ!!」

 二人に囲まれ、ショートヘアのウィッグを被り、細い鎖のついたルーペを装着させられる。モノ、モノ……なんて言ったっけこれ。更におまけに白い手袋を渡され、立たされ、服装に乱れがないかの最終チェック。

「うむ、素晴らしいな」
「美鶴先輩、私、風花呼んできますから写真撮りましょ!」
「ああ!!」

 俺は半笑いを浮かべた。
 この盛り上がりっぷり、すごい。二人ともキャラクターを放棄してる。
 ゆかりちゃんに呼ばれて来た風花ちゃんは、俺を見るなり目を丸めた。

「……本当に執事みたい」

 うん。俺が着ているのは執事服だった。生地も見るからに厚手で上等な奴。リーダーは一体どうしてこんなもん手に入れてんだ。サイズもぴったりだし!

「私の屋敷で実際に働いて欲しいぐらいだな、これは」
「あ、桐条先輩とゆかりちゃんはメイド服ありますよね? 着るんですか?」
「風花、そういう訳じゃないから!」

 盛り上がる三人。女三人寄ればカシマしい、というアレを思い出した。
 まあみんな可愛いからいいけど。
 そして俺は、三人のよくわからないはしゃぎっぷりに、それこそ執事のごとく従順にしてみせた。
 コロマルがこちらを見る視線が、やたら生暖かく感じた……。

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