(P3女主人公の名前→野木坂 綴)


 こんにちは。みんなの飯炊きババア、 です。嘘です。本当はジジイです。どうでもいいか。
 突然ですが、綴ちゃんの様子が変です。

 綴ちゃんとは、我らが特別課外活動部(もといタルタロス探検隊もといシャドウ撲滅委員会)の可憐なリーダーです。
 で、その綴ちゃんの様子が変なんです。
 何だかそわそわしているというか、俺を見て何か言いたげにしているような。
 ちなみに今日は日曜日。寮のメンバーは俺たち以外ことごとく外出しているようで、二人きりになっています。そのため彼女の様子のみが素直に視界に入って来ており、すぐに俺は、彼女の様子に気づいてしまったのだ。
 何かしでかしたろうか俺。順平君のようにエロ本をコロマルに引きずり出された訳でもない。真田先輩のように冷蔵庫を豚足やプロテインで埋め尽くした訳でもない。いくら思案しても、思い当たる節はなかった。……とりあえず様子を探ることにした。
 一旦俺は、近くのコンビニに行ってアイスを買ってきた。ラウンジにてくつろぐ綴ちゃんは、帰ってきた俺に「おかえり」と微笑んだ。そこですかさず俺は何時ものノリで対応する。

「ただいまー。綴ちゃん、ガリガリ君食べる? 買ってきた」
「あ、うん! ありがとう」
「梨味すんごい美味しいんだぜー」
「そうなんだ? 私、初めて食べるよ、梨味」

 ちょっとるんるんしながら袋を開ける綴ちゃんマジ可愛い。俺も早速アイスにガリッとかじり付いた。
 梨まるごと食ってるみたいに味が濃い。暑さに参った体に荒削りの氷が染み渡る。やっぱり暑い日はアイスだよね。今度まとめ買いしてこようかしら。
 アイスをかじりながら上着を脱ぎ捨て、流れ作業でソファーに腰掛ける俺。ちらりと綴ちゃんの様子を伺う。
 綴ちゃんは、ほわんとした表情でこちらを見ていた。しかし俺と目が合うとすぐにハッとして、早くも溶け始めているアイスにかじりついていた。
 ……なに今の顔かわいい。
 とまあ、今日の綴ちゃんは、ずっとこんな調子なのである。
 可愛いっちゃ可愛いんだが、何だかこそばゆく、原因も判らずにこのままではもやもやである。俺が何かしてしまったのかもしれないし。何か居心地よろしくない。
 慌ててアイスを食べる彼女が一段落したころ、俺は意を決した。

「ねえ綴ちゃん」
「な、なに?」
「俺、何かしちゃった? 今日の綴ちゃん、何かわたわたしてるって言うか……大丈夫?」

 綴ちゃんが目を丸めた。アイスの棒を持ったまま、俺を見て固まる。何時も明朗快活な彼女にしてはなかなか貴重な姿だ。
 しばしの沈黙のあと、ようやく綴ちゃんは口を開いた。

「だって慣れてないんだものー!」

 ――それはもう勢いよく。

「普段女の子の格好してるのに、薄着で男の子みたいな格好してるから、なんか見慣れなくてー! 胸板とか鎖骨とか二の腕とか、ああ結構筋肉あるんだなぁって…! ついつい見ちゃって、ちくしょー触っちゃうぞこの細マッチョ! ってくらいなの!」

 顔を真っ赤にして、両手をぶんぶん子供みたいに振って、彼女はまくし立てる。
 呆気にとられ、俺は言葉を失っていた。ようやく口を開いたのは、綴ちゃんがうらめしそうに俺を見つめてきて「わかった!?」と聞いてきた時だった。

「……お、俺のことなの? それ俺のこと?」
「そうだよっ! 年頃故にそんな目で見ちゃってたんですよ!」

 確かに今日は男物着てるけど、暑いから薄着だけど。
 綴ちゃんのそわそわ理由がまさか俺自身だとは予想だにしなかった。
 何だ、ちゃんと俺も男に見えてたのね。安心。

「色男ですいません」
「あほかー!」
「いてっ!」

 アイスの棒が飛んできた。額にクリティカルしたそれのくじは「あたり」。
 俺、初めて見たよ、あたり。
 叫んだ勢いで息の荒い綴ちゃんはそれきりそっぽを向いてしまったけれど、耳まで赤くしていた彼女の可愛さに、俺はひっそり微笑んでいたのであった。

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