が家に帰ると、久々に両親の姿があった。
 この頃の両親は、大臣・海道義光を中心に推進されている地殻動発電に関しての研究に追われ多忙であった。それを重々理解していたゆえに、両親を見た途端のの喜びはひとしおだった。

「お父様、お母様! 海道様とのお話はもう良いんですの?」
「その大臣が“たまには娘との時間を過ごせ”と仰ってくれたんだよ」

 の父・孜郎はそういって朗らかに笑って見せた。隣に立つ母・京子の顔にも同じような笑みが浮かんでいる。
 その夜、たちは家族揃って夕食をとった。食事の合間に言葉を交わしながら、流れるようには今日のゲームセンターでの出来事を話した。
 最近やり始めたLBXのこと、素晴らしいプレイヤーが揃っていたこと、それから、海道ジンにあったこと。
 しばらく笑顔での話に耳を傾けていた両親は、ジンの名前が飛び出すと目を丸めた。

「ジン君がいたのかい? 珍しいこともあるものだ」
「そうなんですの? でもLBXプレイヤーの方々のなかではとっても有名みたいでしたわ。通称“秒殺の皇帝”って」
「ジン君の腕前は海道先生からお聞きしているわ。私たちが珍しいって思ったのは、街中にいたっていうことよ。ミソラタウンの中学校に転校してきたとは聞いていたんだけれどね」

 はその話を聞いて、ジンを羨ましく思った。
 自分も学校に通い、同年代の友人を作り、交流できたならばどんなに楽しいだろう? 屋敷での勉強や習い事は充実していたが、常にどこかで寂しさを感じていた。
 そして、今日のゲームセンターで出会ったバンたちのことを思い出した。LBXが大好きで、まっすぐな少年少女たち。もし彼らと友達になることができたら――。
 そう考えると、の気持ちはもう止められなかった。
 もう一度ゲームセンターに行ってみよう。そして彼らがいたら、お願いしてみよう。
 ――わたくしとお友達になってくれませんか、と。
 ひっそりがそう決意したとき、孜郎は何か思い出したように声を上げた。

「そうだ、
「はい? なんでしょう、お父様」
「もし良かったら頼みたいことがあるんだ。ミソラ商店街のとある店まで届けてほしいものがある」

 孜郎は席を立ち、の元まで歩み寄ると、ひとつのUSBメモリを取り出した。
 きょとんとする娘の顔を見下ろしながら、父は話した。

「ブルーキャッツという店にいる、檜山蓮という人にこのメモリを届けて欲しいんだ。内緒で進めている仕事についての、大切なことが入れてある」
「まあ、わたくしで良いんですの? お仕事に関わるだなんて……」
「ああ。私や会社の人間ではないほうが良いんだ。だが確実に渡したい。そう考えると、に任せるのが一番なんだ。頼めるかい?」

 もちろんは頷いた。

「わたくし、明日もミソラタウンに行きますの。しっかりと届けてきますわ」

 ブルーキャッツは、がちょうど訪ねようとしている場所であった。
 明日その店でLBXの大会が開かれるのである。大会の名は、アングラビシダス。仙道やバンたちが参加すると話していた、あの大会だ。
 ゲームセンターでその大会の名を慌てて調べてかろうじてそこまでの情報は入手したが、詳しいことはは知らない。なにせLBXの大会を見るのも初めてだ。
 様々な好奇心や期待に胸を踊らせながら、はしっかりとメモリを受け取った。
 父も安心したように笑ってみせる。
 その後たっぷり両親との時間を過ごしたは、自室へと戻ったのだった。

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