友達だ? 仲間だ? 馬鹿馬鹿しい。
 だが、馬鹿馬鹿しいと思いながらも、ずっと羨んでいた。もう一度手に入らないかと思う自分に気付いて、それを隠していた。もう情なんて抱くもんか。思春期だから突っ張った、とか、そんな単純な理由じゃない。生涯孤高で良いと思っていた。俺にそう思わせたのは、他でもない「友達」であり「仲間」だったんだ。
 反吐が出る。気持ち悪い。
 誰も俺に触れるな。
 関わるな。
 もう厄介事は御免だ。
 傷つきたくない。
 傷つけられたくない。
 俺はそのために、孤高を目指し、強くなった。容赦はしなかった。
 徹底的に追い詰めて徹底的にいたぶって徹底的にぶちのめして徹底的に屈服させる。
 ひれ伏せばいい。みんなひれ伏すんだ。
 ひとりで良い。俺はひとりで良い。
 そう思っていた。

『わたくし、あなたの大、大、大ファンですのよ!』

 馬鹿な奴だと思った。あいつの無垢な眼差しには不釣り合いなほど俺は歪んでいるのに。
 他の誰でもなく、俺に踏み入ってきた。
 手を振り返すだけで顔を真っ赤にして、この世の幸せを全部味わったみたいに満面の笑みを浮かべる。俺の一挙一動に大袈裟なまでに舞い上がり、しかし近づきすぎることはなく。指先を掠めるか否かの距離感。
 真っ直ぐに裏表のないすがたは、騒がしくもあったが嫌ではなかった。むしろ心地よさまで感じてしまって、「孤高」と「孤独」を行き交う俺は必死に堪えて、何も感じていないふうに振る舞った。
 いつでも変わらないまま、あいつは俺を追いかけて来た。
 慣れない手つきで慎重にLBXを触り、生傷を作り、服を汚しながらも楽しむ姿は、たまに見ているのが辛くなるほど真っ直ぐだった。
 俺が厭味を言おうと、俺が誰かをコケにしようと、俺を慕い続けていた。もちろん許容しきれないこともあったろう。それでも俺を慕い続けた。絶えず降り注ぐ温い温い情愛に、答えまい答えまいと耐えながら、しかし嫌われたくはないからと曖昧に返しながら、俺は彼女との距離感を保った。
 でも、遂にラインを越えてしまった時があった。

『死んでも大事にしますわ! 家宝ですわ!』

 気紛れにくれてやったジョーカー。彼女は泣きながら、笑いながら受け取ってくれた。ぐしゃぐしゃの顔は綺麗とは言い難かったかも知れない。けれども、俺はどうしてもそのすがたが忘れられなかった。
 もう一度、こんな風に喜んでは貰えたならどんなにか、と。
 素直に明かしてしまおうか。きっと受け止めてくれるだろうから。
 考えては止め、また考えては止めた思考。
 繰り返しているうちにタイムリミットは迫る。
 挙句、ついに感情を伝えることは叶わなくなった。
 届かない場所にあいつはいた。
 間に合わなかった。
 万が一の失敗を恐れていた自分の情けなさが引き起こした。孤高であれと言い聞かせてきたうちに焼き付いた意地が邪魔をした。

「馬鹿馬鹿しいねぇ」

 最期まで俺のことばかり話してたんだってな。
 こんな素っ気ない奴の何処が良かったのかね。
 違う人間に惹かれていたなら、もう少し幸せだったろうに。

「また会ったときには、ちゃんと全部言ってやるよ。なぁ、……」

 ひとりきりの時でも、強がりを捨てきれない俺を許してくれ。

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