うつらうつらという表現がふさわしい、眠気全開のの顔と様子に、俺は妙な胸騒ぎを起こしていた。
「眠い、眠いですわ……」
「大丈夫かよ、ふらふらしてるぜ」
「徹夜でヴァルキリーを手直ししてましたの……。ほらっ、ご覧下さいませ!」
思わず声を掛けると、笑顔を絞り出しながらがこっちを向いた。
その手にはピカピカにメンテナンスされた、のLBX・ヴァルキリーの姿が有る。
あんな大事そうにの手に包まれて、少しでもLBXを羨ましいと思った俺はバカなんだろうか。
……とか思ってると、急にの体がぐらっと傾いだ。
「新しいヴァルキリー……はぐぅ……ぐぬぬ…ぬっ……眠っ……」
「ちょっおい、ぬわっ! あっぶねぇな!」
反射的にの体を受け止め、庇いながら倒れた。よく間に合った、俺! 後ろには丁度ベッドがあった。そこに上手く倒れ込んだおかげで衝撃はほとんど無かった。
操り人形の糸が切れたみたいに、一瞬のことだった。あと一秒遅かったら、は床に顔面ぶつけて鼻血でも出してたかもしれない。
一安心した俺に、は最後の気力で声を振り絞った。
「すみませ、無理ですわ、もぅ…………」
「寝るなよ! おい、おい……ったく、よりにもよって、おい……マジかよ…」
最後の力で、寝落ち宣言されちまった。
ごくごく自然な成り行きで抱きつかれるような感じになってしまった。
ふわふわの髪がやばい。
無防備な寝顔がやばい。
寄りかかられてゼロ距離と化してるのがやばい。
きゃしゃでほそっこくて、なのに柔らかくて。
年上の割に危なっかしくて目が離せねえし。
馬鹿みたいに警戒心もねえから何時変な奴に捕まるか判ったもんじゃねぇ。
「……何か、当たってるし」
そういやこいつ大きかった。何がってそりゃあアレだ、柔らかくてふにふにで、アレだった。
気を失うみてえに倒れたこいつを支えて、一緒に倒れちまったから、否が応でもくっつく。不可抗力だ。
ふかふかのベッドにはこいつの匂いがいっぱいで、枕のそばに何だか仙道みてぇな顔の大福みてぇなぬいぐるみがあって、ああもうお前どんだけ仙道が好きなんだよって。あんないけ好かねぇ野郎のどこが良いんだよ。
はでしっかりヴァルキリー抱えたまま寝てるしよ。
何なんだよ。
生殺しってこれのことか。
ああもうやべえよ! 俺の我王砲は限界です!
そんな時、腕の中でがもぞっと動いた。
「ふはっ?」
まだ寝ぼけ眼ながらも顔を上げ、周りを見渡す。
思わず俺は訊いていた。
「お、起きたのか!?」
「はっ、寝てました私?」
「明らか寝てただろうが!」
今のが寝てなかったら何だってんだよ! という全力の思いを込める。
別にこちらとしては素敵な経験と時間を過ごしたけどよ、あとちょっと起きるの遅かったらこう……もっと……何かしてしまいたくなるとこだった。
俺のツッコミに、は申し訳なさそうに頭を下げた。
「す、すみません……」
いそいそと起き上がり俺から離れるの顔は、やっぱりまだ眠たそうだった。両手に抱えたままだったヴァルキリーを机の上に置くの背を見ながら、俺は心底願った。
――寝るなら俺が帰ってからにしてくれ。頼むから。
「とりあえず、LBXについては、また今度な! とりあえず寝とけ」
「はい、ごめんなさい……」
「じゃあな!」
またが寝てしまう前に、俺は足早にの部屋を後にした。
心臓がまだバクバクしてたけれど、それは早足のせいだと言うことにして誤魔化そう。
のせいでこんなに心臓がうるさくなったなんて、誰にも知られたくは無かった。
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