「お嬢様、アンタの“好き”って何なんだい」
仙道くんにとっては大したことじゃあなかったのでしょうけど、私はその言葉に何と返したらいいのか判らなかった。
頭を金属バットで殴られるよりも、きっと、強い衝撃。
他愛ない問いかけに、私の芯をひっくり返されてしまいました。
彼が疑問に思うくらい、私の行動は安っぽかったんだと思い知らされたのです。
この想いは間違うことなく本当で、私の人生において最大限かつ唯一無二の大切なものなのです。けれど、それを表現する技量を、私は併せ持ってはいなかった。
「迷惑、でした?」
おずおずと問えば、仙道くんは緩くかぶりを振って、肩を竦める。
「いいや、別に。ただ、アンタにそこまで気に入られる理由が俺には判らないもんでね」
「……理由?」
私はまた困る羽目になりました。
たまたま出掛けた先に、たまたまあなたがいました。それがキッカケだったんです。
そして私は、あなたに、あなたの分身である魔術師に、惹かれました。それだけなんです。
――ああ、私が答えられない理由がようやっと判りました。
私は感覚的に、本能的に、あなたに惹かれたからです。何がどうして、とかではないのです。
考える間もなく、言動を選ぶ間もなく、ただただあなたへの想いが溢れてどうしようもないのです。
「仙道くん。惹かれてしまったものは、惹かれてしまったで仕方ないんです。そして私はそれが幸せなんです。……なんだか理由らしくなくて申し訳ありません」
素直に言葉を紡ぎ、答える。それが彼の疑問を解消するかは判らないけれど。
黙って私を見る彼に、私は続けた。
彼と私の距離感が適切であるように、自制の意を込めつつ。
「安心してくださいな。わたくしは、あなたを男性として好いた訳ではありません。あなたと、あなたの戦うすがたに、惚れ込んだ。そう、ただのファンですから」
見開かれた紫水晶の眼差しは、とても綺麗でした。――思春期の少年らしい輝きが、確かにあったその瞳。
仙道くんは、本当に不思議そうな顔で私を見ていました。そして。ゆっくり口を開きました。
「……最初の頃に比べて、随分と饒舌になったもんだ。なぁ、」
中学生には不釣り合いな大人びた口調、涼やかな笑み。
細やかな嘘を吐いたせいで苦しかった胸を、その笑みがまたきゅうっと締め付けてくるのです。
泣いたらいいのか、笑ったらいいのか。私には見当がつきません。
苦笑いするしかない私の頭をぽんとひと撫でして帰った彼の残影を、ずっとずっと見つめることしか出来ませんでした。
私は嘘も作り笑いも下手くそでした。
彼はそれを見て見ぬふりをする優しい器用さを持つ人でした。
その優しさが、どうしたことか、少しばかり憎らしいと思う私は、悪い子なのでしょう。
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