「オヤジ~何か拾った」
「元の場所に戻してこい」
「そんなん可哀想じゃん!」
驚くシンの小脇には、だらりと手足を投げ出す力のない少女が抱えられていた。気を失っているらしい。シンが拾ってきたものが人であることに気づいたソルは、チッと舌打ちをした。
「行き倒れか」
「すっげー顔色悪いし多分何も食べてねーんじゃねえかな」
「……寝かせとけ」
汚れた少女を焚火の側に横たえて、シンは座り込んだ。ちょくちょく少女の顔を覗き込んでは「起きねえなあ」と首を傾げている。早く起こして何か食べさせなくては、とシンは少女の体を揺らした。
「おーい、大丈夫かー?」
「うう……」
唸り声を少女があげたのを聞いて、シンは顔を輝かせた。まだ生きている! そして反応している! ならば早く食事をさせてやらなくては!
善意に満ちたシンの行動は激しくなっていく。ゆさゆさと強く少女を揺さぶり始めた。
「頑張れ、起きろ!」
「うう、うう……」
「頑張れ~!」
少女が遂に目を開くと、シンは満面の笑みを浮かべた。
「起きたな! よっしゃ、これで一安心!」
「あなたは……」
「オレはシン! あっちはオヤジ!」
「オヤジ……?」
「……ソルだ」
このままでは「オヤジさん」とでも呼ばれそうな雰囲気を察したのか、ソルは珍しくそう答えた。「シン、ソル」指をさしながら、少女はふたりを確認した。ほそっこい腕を突っ張らせて体を起こすと、ぺこりと頭を下げる。
「……助けてくれた? ありがとう」
「どういたしまして!」
シンの明るさに反して無愛想なソル。全く両極端なふたりの様子に戸惑いながらも、少女は呟いた。
「ここは一体……」
「そこらへんの野原だぜ。なあ、お前はどこから来たんだ? なんで倒れてたんだ?」
そこからシンの質問攻めが始まった。
しかし、少女の回答はどれもちぐはぐだった。話を聞けば聞くほど、世間離れしているようにも思えた。
流石のシンもおかしいと気づいて、ソルを見る。
ソルは溜息を吐いた。
「……覚えてることは無ぇのか」
「なんにもわからない」
「それ、記憶ソーシツってヤツじゃん!?」
心配そうに少女の顔を覗き込みながら、シンは叫んだ。
「自分の名前まで分からないって不便だろ? オレが何か考えるよ」
「え、ええとお……」
「待ってな。う~ん……」
その時シンは、少女の髪に小さな花がくっついていることに気づいた。それに手を伸ばし、掴む。白くて小さなちいさな花。運んでいる時もあまりに軽かった少女の姿と花が重なる。
「! って呼ぶことにするぜ! 良いだろ?」
「あ、ありがとう」
「気にすんなって!」
シンの笑顔に、少女はぎこちないながらも微笑んで返したのだった……。
後々、ソルと酒を飲み交わしたり、シンと稽古をしたり、それはそれはのびのびと生活をしていくことになる。
彼女が数百年を生きる存在と知ってからはなおのこと。
偏見に捕らわれないふたりとの旅路はそれなりに円満に続くのだった。
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