ラムレザルは奇妙な拾い物――いや、拾い人をした。こっそり散歩に来た先で、少女が行き倒れていたのである。かつてならばともかく今の彼女にとって、傷ついた少女を放っておくことは出来なかった。少女を背負って、世話になっているカイの屋敷へと戻ると、すぐにカイたちに事情を説明した。
 ディズィーの手厚い看護により、程なくして少女は目を覚ました。
 ……ちょうどディズィーとカイに顔を覗き込まれている時に。

「ここは天国かぁ……天使様ふたりでお迎えしてもらうなんて豪勢だなぁ……」

 ぼんやりと少女は呟いた。そして再び目を閉じた。
 カイは慌てた。

「お、落ち着いてください。確かにディズィーは天使のように愛らしいですが……ここは天国ではありません」
「え?」

 ぱちりと少女は再び目を開く。

「ほんと? 私死んでない?」
「ええ、生きていますよ。安心してください」

 少し恥ずかしそうにディズィーがそう返した。「天使」と呼ばれたこと、夫にさりげなく褒められたことに照れているらしい。

「……起きた?」
「大丈夫ですか?」

 声を聞きつけてラムレザルは部屋へ駆けつけた。エルフェルトも一緒だ。
 するとカイは、少女に、「彼女……ラムレザルが貴女を保護してくれたんですよ」説明した。
 それを受けて、少女は少しふらつきながらもベッドから抜け出る。

「ありがとう、ラムレザル!」
「ううん。放っておけなかっただけだから」
「そう言ってまたまた~。ラムは優しいから! あっ私はエルフェルトです!」
「よろしく、エルフェルト!」

 ニコニコ笑ってはいるが、まだ血色が悪い。
「まだ横になっていた方が良いですよ」とディズィーに支えられ、少女は再びベッドへと戻っていく。
 カイは少女に今日はゆっくり休むように伝えた。
 ……そして、翌日。
 カイは改めて少女に事情を尋ねた。そして、少女が記憶喪失であることを知った。どこから来たのかどころか、自分の名前すら覚えていない重篤なものだと分かり、頭を悩ませた。

「困りましたね……」
「なんだかごめんなさい」
「いえ、貴女は悪くありません」

 側で話を聞いていたラムレザルは、何か手助けになることはないかと考えた。
 少女を拾ったところを思い返す。

「私があなたを拾ったのは、空が高くて、お花が咲いていた草原……。とりあえず名前を思い出すまで、『』と呼ぶのはどうだろう」
「それは良いですね。……どうでしょうか?」

 カイがラムレザルの言葉を受けて少女に尋ねると、少女は顔を輝かせて頷いた――。
 そうして少女はラムレザル、エルフェルトと共にカイの元で世話になることになった。
 の年齢がゆうに100歳を超えていることなどが判明して度肝を抜かれるのはまた別の話である。

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