「ファウスト先生! 空間転移の術を教えてください! もうチップやアンサーにおんぶしてもらうの申し訳ないんです!」
土下座するに、ファウストは「頭を上げてください」と優しく声を掛ける。
顔を上げた不安そうなに、ファウストは穏やかな声のまま続けた。
「私で良かったら力になりましょう」
「ありがとうございます!」
の表情はすぐに満開の笑顔となった。
ファウストがいつもどこからともなく登場するあの不可思議な法術。あれを覚えることができればもうチップやアンサーに背負ってもらう必要もなくなる。ただ、あの法術を覚えるというのは簡単な話ではない。には想像もつかないほど高度で緻密な法力のもと行われているのだ。
それでもはファウストに、相応の覚悟を持って申し出た。
そしてファウストは、そんなの覚悟を受け止めた。
しかし……。
「良いですか、よく見ていてくださいね」
「うん!」
「こうして……こう!」
一度目の「こう」で何処からともなく出現した扉を開き、中に入る。
二度目の「こう」での前に扉を出現させ、出てくる。
「……分かりましたか?」
「……………いいえ」
は、あまりに感覚的なファウストの教えに、術の会得を諦めることにしたのだった。
そのため今でもは大移動となると、チップかアンサーに背負われて移動している……。
「ねえチップ、アンサー。私重たくない?」
「軽い軽い! なあアンサー」
「そうですね。もう少し太らせないとな、と思っています」
「そっかそっかー」
二人が然程困っていないようなので、ひとまず安心である。
それでもはいつか空間歪曲・空間転移を会得できるのであれば会得したいと機会をうかがっている。その為にイリュリアの図書館で法力の本を借りて読んだり、チップやアンサーのみならずソルやカイといった出会った人物手当たり次第に法力について聞いたり、彼女なりの努力を重ねていた。
しかし、いまだに、ファウストの「こう!」の威力を引きずっている。
「こう! で出来たら誰も苦労しないよ~……」
定期健診を行ってくれている恩人に直接言えず、はひとりベッドの上でのたうち回った。
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