クリスマス。聖なる夜。人々が大切な人と過ごす、大切な日。
にとってクリスマスとは、ケーキと食事を家族で囲み、大切な人にプレゼントを贈るという認識だった。実際の家族とそのような行為に及んだことは無い。長い時を生きて、そう認識しただけだ。
そしては、東チップ王国にて、その実践に及んでいた。
相棒兼助手のミミックを横に、様々な料理を作り、可愛らしいケーキを作り、チップとアンサーと共に過ごそうと決めていた。
実際、準備のほうは順調だ。は戦闘はからっきしだが家事は得意である。数日前から仕込んでいたので今日はもう仕上げだけだ。
「おいおい、どうしたんだよ。こんな時間から良い匂いさせて」
「あ、チップ」
珍しくチップがやって来たのを見て、は微笑んだ。
「クリスマスの準備中なの。ちゃんとチップとアンサーの口に合うような料理セレクトしてるつもりだから」
「クリスマス? ああ……オマエ好きそうだもんな、そういうの」
「うん! 憧れだったの」
その一言にチップは一瞬だけ目を丸め、ふっと微笑み返す。
「そうか……。じゃあ、チップサンタがにプレゼントを用意してやらねぇとな」
「え? がサンタだよ?」
「こんだけ用意させてサンタもオマエじゃ悪ぃだろ。案ずるな、忍者に不可能は無ぇ!」
きょとんとするにそう言ったチップは、一瞬のうちに姿を消した。どうやら宣言通り、本当にへのプレゼントを調達しに行ったらしい。止める間も無かった。あのスピードはサンタというよりトナカイだ。
まあ良いか、と内心楽しみにしながら、はクリスマスディナーの準備を進めた。
仕事が一段落したアンサーにクリスマスパーティーのことを伝えに行ったのと、チップが戻ってきたのはほとんど同時だった。
「クリスマス、そう言えばそんな時期でしたねぇ」
「そうそう! だから今夜はとびきり豪勢だよ」
「それは楽しみだ」
アンサーが本当に楽しみにしてくれているのが伝わってきて、は嬉しかった。
戻ってきたチップもうんうんと頷いてくれている。
は恐らく初めてのクリスマスパーティーに胸を躍らせていた。心なしかミミックも嬉しそうに見える。
その夜、いつもとは一味違う贅沢な夜を三人は共に過ごす。
宴も佳境という時に、はふたつの包みを取り出した。
「から、チップとアンサーにプレゼント!」
が二人に贈ったのはネクタイだった。チップがおお、と感動している横で、アンサーは今しているネクタイを外し、早速プレゼントされたネクタイをつけてみせてくれる。
「の見立てはバッチリですね。良い感じだ」
「でしょでしょ? アンサーよく似合ってる~! チップもスーツ来て演説とかキメる時には使ってよね!」
「おう、ありがとうな」
すると今度はチップ……と思いきや、アンサーが包みを出した。
「。私からあなたにプレゼントです」
「え」
「は」
「はともかく何でお頭に驚かれなきゃならないんですか」
どうぞ、と渡された包みをはそっと受け取る。「開けていいの?」「良いんですよ」促されては包みを開いた。
中に入っていたのは可愛らしい女性ものの洋服だった。
眼鏡を上げながらアンサーが話す。
「いつも地味な服ですからね、たまには華やかなものがあってもいいんじゃないかと思いまして。良い子にしていたあなたへのプレゼントは用意されて然るべきでしょう?」
「う、わぁ……すごい嬉しい……。ありがとうアンサー!」
アンサーは少し照れ臭そうだった。がニコニコしていると、チップが咳払いした。
「オレも、良い子にしてたちゃんへのプレゼントを用意してきたぜ」
「ちゃんって」
「良いだろアンサー。今宵は大統領兼サンタなんだからな」
唇を尖らせてそう言ったチップは、改まってに包みを渡す。
「ほらよ。ちょっとアンサーと被っちまうけど」
「被る……?」
チップがくれた包みを開くと、は目を丸める。
こちらも、女性ものの服だった。アンサーと違うのはスカートではなくパンツスタイルであること。
「オレもよ、オマエがしょっちゅう同じような服着てるのが気になってよ。他にも動きやすい服があって良いんじゃねえかって思ったんだ」
「ありがとう、チップ! これも可愛い!」
ふたつの洋服を抱えて舞い上がるに、チップもアンサーも笑みを零す。
しかしふと立ち止まったの一言に、二人は言葉を失うことになる。
「……いつの間に二人とも私のサイズ分かってたの?」
何故か気まずくなる二人に、は更に首をかしげる。
「私、教えたことあったっけ」
「見てりゃ何となく分かるんだよ」
「そうです。目測わりとバカになりませんよ」
ふうん、と納得し、また喜びまわるに、チップとアンサーはほっと胸を撫で下ろしたのだった。
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