私はご機嫌で花瓶をいじっていた。活けられているのはチューリップたち。ヒヨリィとショボーイに朝いちばんに贈られた花束だ。何でもバレンタインのお返しだと言う。可愛らしい花を見て、ふふ、と思わず声を漏らす。
「春のお花、良いよねえ。気持ちも春めくわぁ」
テーブルの真ん中にチューリップの花瓶を置いて、私はまた笑った。
お返しを求めて贈ったわけではなかったので、予想外のプレゼントに最初は驚いた。でも、ヒヨリィとショボーイが二人で相談してあれこれ悩んだ結果だという話を聞いているうちに微笑ましくなっていた。そして嬉しくなっていた。そんな風に私の為に時間を割いてくれたことがとても幸福だった。
椅子に腰を下ろして花を眺めていると、「おーい」とチップの声。はあい、と返事すると、チップの後に続いてアンサーもテントに入ってきた。二人とも何やら包みを抱えている。
「どうしたの、二人とも」
「どうしたって、今日ホワイトデーだろ。お返し持ってきたんだよ」
「バレンタインのお礼ですね」
おかしいな。私、バレンタインの時に二人から贈り物貰ってるのに。そのことを指摘すると、「それはそれ、これはこれ」と二人は口を揃える。
だったら私も何か用意しなきゃ、と立ち上がったのを、やっぱり二人に止められる。
「良いからオマエは大人しく受け取りやがれ!」
「そういうことです」
おずおずと私は贈り物を受け取り、中身を開く。
チップからはかわいいキャンディ、アンサーからはほわほわのマカロン。
キャンディはサクッと口の中で溶けていって、マカロンはしっとり口の中に広がって。どちらもすっごく美味しくて幾らでも食べられそうだった。
「ありがとう、チップ。ありがとう、アンサー」
私ばかり貰い過ぎで良いのかなぁ、と呟いたら、そういえば、とチップが口を開く。
「今日はオマエの作るハンバーグが食いてえなぁ」
「ああ、良いですね。久しぶりに」
チップとアンサーが揃って笑って私を見る。あったかい、あったかい笑顔。
「……任せて!」
私は満面の笑みで、ホワイトデーのディナーの約束をした。
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