※ハイセが女性です
※ハイセとハイルが言い争いますが最後はちゃんと仲良しです


 私は三等捜査官と申します。自分で言うのもなんですが、肝はそれなりに据わっている方だと思います。最近“喰種”を三体討伐しました。レートは精々B+いくかいかないか。上司には褒めて頂いたので、きっと良い方なんです。
 倒した奴らで私の新しいクインケが作られている最中で、ワクワクとドキドキと楽しみで浮かれていました。
 だから自分の欠点を忘れていたのです。……あまり運がよろしくない、ということを。

「た、助けてくださいさん!」
「ママンが、ママンがー! 大変でござるぅぁ!」

 そう叫んで私に泣きついてきたのは、局内で噂のクインクス班の六月透くんに、米林才子ちゃん。才子ちゃんが出勤しているなんて奇跡だ。それはともかく二人のこの慌てよう、ただ事ではない。
 昇格とは無縁だけれど無駄に古株な私は、彼らとの交流もそれなりにある。故に役職も何も関係なくフレンドリーな交流をさせて頂いている。

「どうしたんですか、二人とも? 私が力になれることでしたらお手伝いしますよ」

 ここは人生の先輩らしく話を聞こう、なんて思ったのが間違いだった。

「あの、実は先生が、伊丙上等と顔を合わせるなり、また言い争いになって……」
「アタイもうどうしたら良いのかわからぬぅ、あんな怖いママン初めて見たお……。助けてくだされさん……」
「は、琲世ちゃんと入ちゃんが!?」

 私が自身の不運さを思い出したのは、ここになってから。
 琲世ちゃんもとい佐々木琲世上等捜査官と、入ちゃんもとい伊丙入上等捜査官は、両者ともに有馬特等班出身のホープだ。二人とも女の子で私より若いというのに――私が二人をちゃん付けさせて頂いているのは、二人に“年上の同性から畏まって呼ばれると何かムズムズするので”と言われたためである――、それはもう素晴らしい実力者だ。長年補佐に甘んじていて漸く捜査官になった私とは、まさしく格が違う。
 この琲世ちゃんはクインクス班を率いるまさしく“母親”であり、その慕われようは透くんたちを見ていれば十二分に伝わってくる。
 入ちゃんも宇井特等とタッグを組み、着々と実績を重ねているエースである。先日は大物“喰種”集団の一員を捕獲する際に活躍したという。
 二人ともとても可愛らしく良い子で、私は「まるで妹が二人出来たみたいだわ」なんて気分で交流をしていたのだけれど……この温厚な二人の気性はいきなり荒くなる時がある。
 それは――有馬特等が関わったトークに縺れたとき。
 二人とも大層有馬特等を慕っていて、それ故に競い合うような光景を繰り広げてしまうのだ。
 こうなると、周りはもうオロオロするしかない。そして私みたいな、のんびりした人間が仲裁に入るはめになってしまう。もう何回この修羅場に挑んだが……。今のところ“喰種”の駆逐回数よりは上回ってる。
 透くんと才子ちゃんの半泣きっぷりを見たら、このままスルーなんて出来ない! 瓜江くんは我関せずでイヤフォンつけちゃってるし、不知くんは目が点状態じゃないですか。ちょっとは自分のところの上司なんだから、挑んでいってみてよ! ……と、心の中だけで叫んでみる。でも、普段とても優しいお母さんな琲世ちゃんしか知らない彼らなら、あの反応も仕方ないよね。

「琲世ちゃーん、入ちゃーん、こんにちはー」

 とりあえずは挨拶から。
 礼儀正しい二人は此方を向くとき、しっかりと笑顔を見せた。

「こんにちは、さん」
「ちょうど良いところに来てくれましたー。さんからもハイセに言ってやってくださいよー」

 ああ、早速剣呑な感じに。ほわほわとした入ちゃんの言葉に、「はあ!?」と琲世ちゃんが顔を顰める。普段は本当に温厚で優しくて面倒見の良い、クインクス班のお母さんな彼女が、なんという豹変ぶりだろう。

「ハイルが原因なのにそれってどうなの……? ねえさん、ハイルを甘やかさないでくださいね? また調子乗っちゃいますから」

 琲世ちゃんの顔に笑顔が戻ったけれど、その背後に般若が見える……。
 そんな琲世ちゃんに、入ちゃんも笑顔のまま……やっぱり般若を背負いながら首を傾げた。

「私がいつ調子乗りましたっけー? さん、相手が上等捜査官だからってこういう時に遠慮はナシですよぉ」
「お話が全く見えないのに甘やかすも遠慮もへったくれもないです、お嬢さんがた……」

 笑顔のまま刺々しい嫌味の言い合いを繰り広げる二人の少女に、私はいつも通り、女同士として向かい合う。後ろで「ファイト、姐さん」なんて才子ちゃんの声が聞こえる。うん、私は極道の女か何かか。とりあえず私の姿を見て、今後の対応への参考にしてね。
 悟りの心で、私は琲世ちゃんと入ちゃんの話に耳を傾ける。
 先に話し始めたのは入ちゃんだった。

「ハイセってばまた暴走して、面倒かけたんですよー。だからもう少ししっかりしてくれなきゃ有馬さんに泥かけるようなもんじゃないのかなって言っただけなんです」

 そうしたら、すかさず琲世ちゃんが反論する。

「いやいやそんな柔い言い方じゃなかったよね? 有馬さんに教えられたもの生かしきれてないメンドクサイ奴ーって、思いきり嫌味たっぷりだったよね? そっちこそ、この間油断して“喰種”を逃したっていうじゃないか! それこそ有馬さんの顔に泥塗るようなもんでしょ。コッチは全力投球なの!」
「全力投球したボールを有馬さんにぶつけんな、って話なんですけど」

 ぴくっと入ちゃんの眉が動いた。笑みが薄くなった、気がする。
 琲世ちゃんはそんなことを気にする風もなかった。怖いもの知らずな琲世ちゃんが羨ましい。
 ……有馬特等のところで鍛え上げられた二人にとって怖いものなど、無いに等しいのだろう。あるとすれば多分、敬愛して止まない有馬特等ぐらいのものかな? あの人、優しいぶん怒ったらとても怖そうだから。
 入ちゃんの嫌味に、ふん、と琲世ちゃんは鼻を鳴らした。

「有馬さんは“大丈夫、限界を引き上げればいいだけ”って優しく稽古つけてくれたから逆に励みになったくらいだよっ」
「わぁ、話を露骨にすり替えつつ有馬さんに構ってもらった自慢かーい。こういうのってイヤですよねぇ、さん?」
「ハイルみたいにネチネチ言う方がよっぽど嫌だと私は思うなあ。ですよね、さん!」

 同時に同意を求められて、どちらにも頷く訳には当然いかない。
 改めて言いましょう。私はただ補佐歴が長くて必然的に局にも長くいるけれど、捜査官としてはまだ三等。勇者レベル1である。そんな私に、彼女たちのハイクオリティ&ハイレベルな日々についてあれやこれや言うなど、出来る筈がない。二人とも私にとってはすごく素敵なお手本の捜査官なんだもの。
 それでも私は二人を止めなくてはならない。
 彼女たちが諍いに気を取られている隙にこっそり振り返ったら、祈るように両手を握りしめる透くんと目が合ったものだから、尚更だ。不知くんと才子ちゃんも加わっていたし。って、アレレ、瓜江くんはどこ行っちゃったんだ!? ……ともかく、あの少年少女の願いを無下には出来ないのです、お姉さんとしては。
 私が答えあぐねていると、入ちゃんと琲世ちゃんは再び口論を始めた。

「周りの期待を裏切るのは勝手ですけど、有馬さんに迷惑かけないでくださいって思うんですよねぇ」
「そのまま返したいところだけれど、期待を裏切るって何!? 周りってつまり有馬さんも入ってる可能性があるし、私がもう期待を裏切ってる前提みたいな、その言いぶりは!」

 ま、まずい。今までにも何度も彼女たちの口論に立ち会って来ているけれど、どう突っ込んだら良いのかタイミングを掴みかねている。今回が一番の難関かもしれない。すれ違う人たち皆“何が起きてるんだ”と此方を見て立ち止まるほどに彼女たちはヒートアップしていた。ああもういっそ有馬さんが来てくれ! 飛ぶハエにも“喰種”にもすべからく容赦なく平等なあの特等殿ならば、きっとこの二人をあっという間に大人しくさせてくれるはず! しかし宇井特等曰く「有馬さんは天然だから……」である。下手をしたら火に油を注ぐかもしれない。
 というか琲世ちゃんも入ちゃんも同じ出身同士ならさ、もーっと仲良くしていこう! 切磋琢磨と口論ドッジボールは全く別物だよ!
 クインクスメンバーが青ざめるほど、諍いは激しくなる。

「もう裏切ってるようなものですし、有馬さんに最初に褒めてもらうのは私が一番ですんで」
「同じ師の元で学んだ相手にかける言葉がそれ!?」

 ――ここだ!
 すかさず私は琲世ちゃんの言葉を遮るように口を開いた。

「つまりは入ちゃんも琲世ちゃんへ期待しているってことだよね。やっぱり有馬さんの教え子同士、何だかんだで相手を想ってるんだねぇ……お姉さん羨ましい」
さん……?」

 ぽかんとした琲世ちゃんの視線が向けられた。可愛いいつもの彼女らしい雰囲気が若干戻ってきてくれている。
 私がにこにことしたまま、ねえ入ちゃん! と話を振ると、入ちゃんはにこにこと笑い返してくれた。

「えへへ、さんには全部筒抜けちゃいますかぁ。さすが人生のお姉さん」
「ハイル……? え、一体どういう……?」
「やだなーハイセはお堅いんだから。私が言ってる“裏切ってる”をどう受け取っちゃってるんですか?」
「始まりが始まりだっただけに悪い意味で捉えちゃったんだよ、きっと」

 入ちゃんの言葉に私はフォローを入れつつ、琲世ちゃんに笑いかける。

「ほら、琲世ちゃんの率いるクインクス班には、あまり良いイメージを抱いてない人もいたでしょ。それを前回のオークションで払拭する大活躍、良い意味で周りを裏切った! ってことだよね入ちゃん?」
「はい、その通りです」

 ふふ、と楽しげに笑い声を漏らす入ちゃん。
 いつも通りの柔和な笑みだ。さっきまでの殺伐とした修羅場モードはなりを潜めてくれている。

「まあ私は、ハイセならやれると思ってましたから? 周りの人たちの反応で逆に笑っちゃいましたよ。有馬班なめるなよーって感じでー……」

 入ちゃんは、同じ有馬班出身かつ同年代の琲世ちゃんの活躍を、何だかんだで応援している。
 有馬さんに褒めてもらいたい彼女にとって、有馬さんが特別に気にかけている琲世ちゃんの存在はいわばライバルだ。実力も申し分ない琲世ちゃんはとても張り合いのある相手だろう。だから入ちゃんは、一生懸命頑張ってこの若さで上等捜査官になった。琲世ちゃんより先に昇進していたのである。あの「梟討伐戦」にも参加していたぐらいなのだから、入ちゃんの努力は凄まじい。クインケさばきも動体視力も反射神経も優秀の一言に尽きる、とベテランの富良上等が話しておられた。
 だが琲世ちゃんだって負けていない。普通の人とは違う体で、数年前までの記憶が無いというハンディキャップを抱えながらも、クインクス班を精一杯に先導している。クインクス自体がとても特殊な存在だし、局内の人間すら色眼鏡で見てくるから、その気苦労は計り知れない。そして琲世ちゃんも琲世ちゃんで、入ちゃんの活躍のことはとても気にかけている。だから先日彼女が“喰種”を取り逃がしたというのを、自分のことのように怒ったりしたんだろう。
 考えると、この二人がとてもそっくりであることに気づく。
 根本にある二人の思いが“有馬さんに褒められたい・彼の役に立ち、期待に応えたい”という共通したものだからこそ、こうやって言い争ったりしてしまうんだ。衝突が激しいだけの仲良し姉妹という感じだろうか。
 ……ちょっとグダグダになったけれど、要約するとこういうことだと私は思っている。二人とも有馬特等が大好きで、有馬特等の為に、有馬特等の元で学んだことを最大限に生かして成長したいのだ。だからお互いのことをすごく意識してしまって、ちょっとのことが気になったり、不満要素になったりする。逆もまたしかり。ちょっとのことで、二人はまたすぐ仲良しに戻るのだ。
 ものすごく強引で、こじつけっぽい話の流れだけれど、何とかこれで穏便な方向に持っていけるはず!
 内心滝のような冷や汗を掻きながら、私はうんうん頷いたり笑ったりして入ちゃんの話に相づちを打つ。ここは無理やりにでもこの流れで全て終わらせたい。

「ただ、有馬さんに教えてもらったくせに上等になるの遅すぎですよぉ。そこはある意味、そういう意味で裏切られてちょっとションボリでー……」
「こっちも必死にやってるんだってば……」
「知ってますよ。けど、ハイセぐらいの競争相手がいないと張り合いないんですもん」

 とても良い感じだ。琲世ちゃんと入ちゃんは、ようやくお互いの本音の言葉を交わしあい始めている。
 背後から、おお……という感嘆の声が聞こえてきた。透くん、不知くん、才子ちゃん、三人の声だ。本当に瓜江くんは何処に行ったのかな……!
 琲世ちゃんは、申し訳なさそうに入ちゃんを見つめていた。

「何だかごめん、ハイル。私ったらつい反論しちゃって、しっかり話を聞こうとしてなかったね」
「私の言い方も悪かったですから、おあいこで良いんじゃないですか?」

 ご機嫌な様子で微笑む入ちゃんに、琲世ちゃんは苦笑いで応じる。

「自覚あるならもう少し優しい言い方にしてよ……」
「有馬さんを見習ってるから甘やかし発言はしないですー、ふふ」
「あっ! 先輩風吹かして……もう!」
「実質、私のが先輩ですから~」

 数分前まで彼女たちの周りすら凍りつかせる勢いで吹き荒れていたブリザードのような雰囲気は霧散した。
 本当に姉妹のじゃれあいのようなやりとりと笑みを交わし始める二人を見て、私は酷い脱力感と達成感を覚えた。
 二人の話題は、お互いの最近の任務や戦闘についてへ切り替わっていた。

「ハイル、無理しないようにね」
「それはハイセが言われるべき台詞でしょお」

 そう言って笑い合う彼女たちにはもう、修羅場とは無縁の和やかさが広がっていた。
 ……ミッションコンプリート。よたよたと私は彼女たちから離れ、近くの椅子へ座った。半分腰や足から力が抜けて落ちるみたいな感覚だったけれど、とりあえず座れた。
 そこにすかさず、見守っていたクインクスの面子が駆け寄ってきてくれた。

さん、大丈夫ですか!?」
「ああ、うん……。ほらご覧よ」

 透くんの声に答えながら、私は力無い笑みと共に琲世ちゃんと入ちゃんを指差してみせた。

「二人ともあんなキャッキャウフフと楽しそうではありませんか……良かったです本当に良かったですよ……」
さん、勇者やわ……」
「お疲れサマっす、マジで」
「どういたしましてですよ、才子ちゃん、不知くん……」

 二人の労いの言葉を受けていたら、何処からともなく瓜江くんが戻って来た。片手に抱えている缶は甘いカフェオレのもの。確か瓜江くんは甘いものが苦手だったんじゃなかったっけ?
 不思議に思っていたら、瓜江くんが私にそのカフェオレを差し出してきた。

「(あのトロそうな女とうちの残念上司が)お手数お掛けしました、飲んでください」
「あ、ありがとう……。沁みるわあ……!」

 心のなかで散々「何処行った!」とか叫んでてごめんね、瓜江くん。君はとても良い子だ。きっとあっという間に昇進して特等まっしぐらですよ!
 あったかいカフェオレを啜りながら和む私に、透くんが申し訳なさそうに言う。

「毎回すみません。ついさんを見ると頼んでしまって……」
「良いの良いの。毎回通りかかる私も私だし、慣れてきたよ」
「あの二人、仲が良いんだか悪いんだかわかんないッスね」

 不知くんの言葉に透くんたちも頷く。
 私は笑った。

「二人とも有馬特等が好きすぎて周り見えなくなっちゃうだけで、仲が悪いわけじゃないよ。証拠に今は褒めちぎりから有馬特等武勇伝トークに移ってるし」

 有馬特等は歩く武勇伝だから、話のネタが尽きることはない。しばらくきっとあのままだ。
 修羅場の凄まじさに凍りついていたギャラリーも、“あれは一体なんだったんだ”という呆然とした顔のまま、次第に散っていく。
 うん、私も最初はポカーンとしてた。初めはあんなだった。仲裁せざるを得なくなるまでは。

「オワァ、才子にはついていけんです……」
「才子ちゃんたちのママンなんだから、仲裁に入るくらいしないと」

 私がそっと嗜めると、透くんの顔が引き締まった。

「で、ですよね。俺、今度頑張ってみます。……ダメだったらさんに頼みます」
「……そういえば」

 透くんの宣言を聞きながら、私はふと思った。
 ずっと前から聞こうと思っていたけれど、なかなか聞く機会に恵まれなかった小さな疑問がある。
 試しに今、聞いてみようじゃないか。

「何で、たくさん周りに人がいるなか、私に仲裁役を頼んできたの?」
「それは……」

 透くんが言い淀んだ。なんだろう、なにか触れてはならない事情があったのだろうか?
 しかし、そんな私の不安を、不知くんがバッサリと切り捨てる。

「富良さんが『ハイセとハイルが喧嘩して困ったらに頼め。仲裁は大抵あいつに頼めば何とかなる。古株だからな』って言ってたんで」

 ふ、富良さああああん!? あなたは私をなんだと思ってるんですか! でも古株認定有難うございます!
 疑問が晴れたのに妙にさっぱりしないこの胸中。瓜江くんがくれたカフェオレの甘味だけが私を癒してくれる。
 そこに、話が一段落した琲世ちゃんが戻って来た。入ちゃんも仕事に戻ったらしい。
 琲世ちゃんは、私を見るなり頭を下げた。

「すみませんでした、さん。いつも私たちの喧嘩を止めてもらっちゃって」
「いいの、喧嘩するほど仲が良いんだもの。まあ、周りは結構ポカーンとしちゃうけどね」
「本当に申し訳ないです。で、そのお詫びと言っては何ですが……」

 顔をあげながら、琲世ちゃんが言う。

「今夜、私とハイルでさんに夕飯おごらせてください!」

 ……イヤな予感がしつつも、私は頷いた。

「うん。喜んでご一緒します」

 瓜江くんが遠い目をしてイヤフォンを装着する。
 あわあわと不知くんが怯えたような顔をしている。
 才子ちゃんが「姐さん、グッドラック」と親指を立ててエールを送ってくれる。
 ……透くんの視線が明らかに訴えている。“大丈夫ですかさん”と。私は視線で返した。
 ――多分、大丈夫じゃないです。
 その日の夜、また有馬さんトークで口論になって仲直りする琲世ちゃんと入ちゃんに挟まれることになるのは、もう、予定調和というやつである。

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