俺は、自分で言うのもなんだけど、ヤンデレに縁があるみたいだ。



 柔らかな笑みを浮かべて俺に歩み寄ってきた遊星。最近気づいたが、彼はヤンデレだ。
 そして俺の左隣で、のんびりノートパソコンをいじっているブルーノも、またヤンデレである。
 遊星は当然のように俺の右隣に座った。野郎三人が一つのソファーに集まると流石に狭いし、むさ苦しい。

「……俺、部屋行こうかな」

 思わずぽつりと零したら、遊星とブルーノがふたりして俺を見た。

「どうしてだ?」
「いや、ソファー狭くね?」
「僕の膝に座ると良いよ」
「いやいや何でそうなるの」
「俺はといたい。部屋に行くなら俺もついていく」
「あ、狡い。僕も行きたいな」

 うう、失言だった。
 俺は「やっぱ良いや」と諦め、二人に挟まれたままじっとする。
 手持ち無沙汰だけど、この状況で作業とかに集中できる気もしない。何か汗出そう。
 このふたりが俺を大層気に入ってくれてんのはありがたいけど、ちょっと気持ちが重すぎます。今日はその片鱗さえまだ出てないけど。
 とりあえずポケットに突っ込んでたデッキを取り出す。この間、ジャックに教えて貰いながら自分なりに組んだものだ。俺の趣味で、獣族が多い。ジャックには「貴様はチームユニコーンのファンなのか?」と突っ込まれた。
 どうやら遊星たちチーム5D'sが以前戦った、獣族メインのデッキを使う人たちのことらしい。少し興味がわいた。

「ん? もデュエルするんだ?」
「いや、あの、ルールとか流れ覚えたいからジャックに聞いたら、実践あるのみだ! って……」

 ブルーノと遊星の目が細くなった。やばい。

にちょっかい出してないで仕事探せばいいのにね。ジャックってば」
「全くだ」
「あ、あの、よければふたりにもデッキ見て貰っていいか!?」

 慌てて俺が切り出すと、ふたりは嬉しそうに頷いた。さっきの刺々しさはすっかりない。
 聞き分けのいいヤンデレで助かりました。
 ブルーノもパソコンをシャットダウンさせ、遊星と共にテーブルに広げた俺のデッキを見てくれている。

、獣族メインでいくの?」
「うん、まだまだカードの種類少ないからヨレヨレだけど」
「チューナーが少ないな……」
「ああ、うん。つかシンクロモンスターもまだ少ないから……」

 俺がまるきり初心者であることを判ってくれているふたりは、少し専門的な言葉が入ると、すぐに解説しながら教えてくれた。

「2人して、先生みたい」
のためなら何時でも先生役を引き受けるよ」
「な……。ブルーノ、それは俺の台詞だ」

 俺の呟きに二人は倍で返してくる。
 遊星が不意に俺の右手を掴んだ。優しいぬくもりに一瞬ときめく。手袋を外した遊星の手は、思っていたより骨ばっていて、やっぱり男の手だった。

。判らないことがあったら、すぐ俺に聞いてくれ。ゆっくり教える」
「ゆ、遊星」

 真っ直ぐ俺を見つめる碧眼に、どう答えたら良いのか判らなかった。吸い込まれそうな深い青に、心臓は勝手に慌て出す。

……」

 左から低い声がして、我に返った。ブルーノが拗ねたような顔をして俺を見ている。
 俺の左手をきゅっと握り締め、じいっと何かを訴えるような視線を向けてきた。

「酷いよ。僕がいるのに遊星ばかり……」
「そ、そんなつもりじゃ」
「だよね。は優しいからね。でも、妬けるよ」

 ちょっと切なそうにブルーノが笑う。

「大好きな人が他の誰かと楽しそうな姿は、見ていて辛いんだ」

 俺は焦った。顔が熱くなる。けれど右側のピリピリした空気にはっとして、我を保ち続けた。

「俺はを愛している」
「奇遇だね遊星。僕もを愛してるんだ」

 今までに幾度となく経験したこの緊張感。
 もう俺はなるようになれと瞳を閉じた。

(大丈夫大丈夫、このくらい可愛いもんだ……)

 監禁や拘束を愛情表現として持ち出すふたりの喧嘩。
 この喧嘩がそれなりに収束するまで、ビッグコアラにしがみつく妄想で乗り切った俺であった。

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