は本当に仕事熱心だ。
ニコニコと人好きのする笑顔を絶やすことなく振りまいて、てきぱきと動き回る。
なんて可愛らしい僕の想い人。
けれど何処の誰かも判らない奴らにの笑顔は勿体無い。をあんなに見つめることも許せない。気安く声を掛けることも許せない。は僕の大事なひとなんだから。あんな奴らと同じ場所にいるだけで、同じ空気を吸っているだけで汚されてしまうんじゃないかと思った。
出来ることならすぐ傍につなぎ止めて置きたいんだけれど、にとってこのバイトは本当に楽しいものらしいから、我慢している。
この我慢が何時まで続くか判らないけれど、愛しいのためだ。頑張らなくっちゃ。
それにしても、ちゃんと休憩してるのかな? 5時間ずっと動きっぱなしだよ? 店の人は何を考えてるのかな。が倒れでもしたらどうしてくれるんだろう。死んで詫びても足りないよ?
やっぱりは外に出なくていいんじゃないかな。僕のそばにずっといたら良いんじゃないかな。僕が絶対幸せにしてあげるから。
あんな奴らいなくなればいいよね。に何するか判らない奴らなんかいなくていいよね。そうだよね。お客がいなくなったらだって楽になるし、僕にとっての邪魔者も減るし。これは名案だ。
。どうかな。これ、すごく良い考えだと思うんだけれど。
……あ、前にこんなこと話したら「却下!」って怒鳴られたっけ。でも考えるだけなら自由だよね。そうそう、バレなければ良いんだよね。
あっ、のバイトもそろそろ終わりかな。
店の奥に入ったが、少ししたら出てきた。何時ものニットの帽子を被って、のんびり歩きながら店を後にする。
僕は少し早足でを追い掛けた。
「ー!」
呼びかければぴったりと足を止め、が振り返ってくれた。
「ブルーノじゃん! どしたの?」
「偶然近くを通ったんだ。一緒に帰ろう?」
「いいよー。仲良く帰るべ帰るべ」
歯を見せて無邪気に笑う。そんなの手をとって、僕は上機嫌で歩き出す。
最初の頃はこうやって手を繋ぐのも「おいおい、俺ガキじゃないんだからさー」と気にしていたも、今ではすっかり慣れてくれたようだ。
小さいけれど暖かい手が、ゆっくり僕の手を握り返してくる。
もうそれだけで僕は舞い上がってしまって、を抱き締めてしまいたかった。
でもは恥ずかしがり屋だから、此処で行動に移したら怒るに決まってる。
誰かにそういうところを見られるのを彼は大層嫌がった。僕としては、が僕のものであることを周りに見せつける良い手段だと思うんだけれど。
まあ、恥ずかしがって慌てるの可愛さを独り占めできるのも悪くはないからね。
「早く帰ろう!」
「えっ?」
駆け出す僕に引っ張られながらも走り出す。
「早く帰って、人目を気にしないでをギュッとしたいんだ!」
それはもう、君の息が詰まるくらいに。
は真っ赤になって、ヤケになったように足を動かす。空を仰ぎながら、は僕に言った。
「ちくしょー好きにしやがれ! だがこんな路上で言うなー!」
の声の方がよっぽど大きかったけれど、可愛いその姿に見惚れていた僕は、素直に頷いて答える。
「判った、気を付けるよ!」
しばらく赤い顔のままだったけど、の機嫌は悪くなかった。
本当に可愛いんだから!
どうせなら、ベッドの中でもを抱き締めていたい。一日中、が息をつくにも困ってしまうくらいに。体の隅々まで、僕を染み込ませてあげたい。
けれど、まだ初なにはハードルが高すぎるかな。
僕は、頭を過ぎった妄想をいつか実現しようと心に決めたのだった。
prev
Top
next