死んでしまったのだと思っていた。
 男は目を見開き、硬直していた。眼前の光景を信じることが出来ずに、言葉を失った。
 生きているとは思わなかった。
 孤島の屋敷は燃え尽き、幾ら捜索しても生きた人間を見つけることは出来なかったのに。
 硬直したまま、男は見入っていた。

 右目に魔導器を宿した少女に。

 成長しているが間違いなかった。夜明け色の髪も、それをリボンで飾っているのも、顔立ちも全く変わりない。ただ表情は、以前より暗い影を落としていた。
 ――
 久しい名前を思い出し、心臓が痛む。

「そっちのお嬢さん……」

 思わず声を掛けてしまった。するとは怯えたように縮こまり、男から視線を外した。すっかり人が変わったように大人しく、弱々しい。
 男が姿を変えているせいか、それ以外の要因か。は男を知らないようだった。
 そんなを庇うように、そばにいた茶髪の少女が口を開く。

「見せもんじゃないわよ、おっさん」

 男は素早く考えを巡らせた。
 が自分に気付かないならば、その方が都合がいい。
 このまま切り抜けようと、男は決めた。

「え? いやぁ、だってね、そのお嬢さんのいくら着込んでも隠し切れない魅惑の曲線が俺様の目を拐ってくんだもの……」

 男の言葉に、は真っ赤になってしまった。そそくさと一緒にいた犬の後ろに回り――隠れているつもりなのだろうか?――、動かなくなった。
 笑いそうになって、慌てて堪えた。

 男はたちと細やかな交流を終えて走り出した。面倒な相手を彼女らに押し付けた故に、恨まれて叩かれないとも限らない。
 そそくさと逃げるような足取りだった。

「ああ、びっくりしたわぁ。もう」

 彼女と一緒にいた面子を思い返し、男はそっと嘆息する。
 ――脱獄指名手配犯に、皇族の少女。それから多数。
 は、災難の神にでも見初められているのだろうか。

「……折角解放されたんだろうに、何で自ら戻ってきちゃったんだろうねぇ」

 男の呟きは、雨音に紛れて消えた。

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