を起こしに行こうとしたジャックが、龍亞に通せんぼされて止められていた。
「ダメダメ! ダメだよジャック! は明日まで寝るの! 起きないの!」
「は? 一体何を……」
「ゆっくり眠れるようにって、わたしたち、さんのこと守ってるんだから!」
「な、何なのだ一体!?」
龍亞のそばに龍可もやってきて、ジャックは渋々引き下がる。
俺は、龍可と龍亞とアキが作ったカレーをのんびり食べながら、その光景を見ていた。
同じようにしていたクロウが、笑いながら口を開く。
「なんか微笑ましいなーアレ」
「そうだな」
俺も頷く。ブルーノやアキも笑っていた。和む、とはこういうのを言うんだろうな。
ふと、そういえば、と呟いたクロウが、何故か俺を見た。
「遊星よ、ずっと聞き損ねてたが……お前、になんかしたのか?」
「え?」
「前にがオレに泣きついてきた時があったろ。あの時、遊星を頼らなかったのは、何かあったからなんじゃねーの? って、オレの考え過ぎだろうがよ」
「俺は……」
特に思い当たることはないな、と続けるつもりだった。しかしひとつだけ、心当たりのようなものがある。
前にクロウに同じように聞かれた時も過ぎらなかったわけじゃないが、しかし。
(は、寝ていたはずだ)
以前、ソファーで眠るに、俺は。
あどけない寝顔に、つい手を伸ばして。黒髪に触れて。それから……。
もし、あの時に実はが起きていたのだとしたら。
そう思っただけで顔が熱くなってきた。そうだと決まった訳じゃないのに。
黙り込む俺を、クロウたちはきっと怪しんでいるに違いない。
「おい、遊星……」
「ねえクロウ」
クロウを遮るように、アキが口を開いた。内心ホッとする。
「遊星は多分、何もしてないわよ。この間、が話してたわ」
「そうなのか」
ありがとうアキ。胸の中で俺は全力で感謝していた。あのままだったら、「寝ているにキスをしました」と白状しなければいけなかったかもしれない。
「でもジャックは何かしたのかも」
「え」
俺たちはジャックを見た。
不意に視線が集中したために、ジャックはいささか戸惑っているようだ。
「な、何だ。オレが何をしたというのだ」
「はね、“遊星やブルーノはともかく、ジャックがいると緊張してしまう”って言ってたわ。もしかしてジャック、あなたがの睡眠を邪魔してるんじゃない?」
「なっ……!」
刺すようなアキの視線と声に、ジャックは狼狽えていた。怪しい。俺よりよっぽど怪しい。
龍亞と龍可も、ジャックを非難するような眼差しを向けている。
「ジャック、があんなに眠たそうなの判んないの!?」
「それを邪魔するなんて、さんが可哀想だわ!」
「待て、オレの話を聞かんか! オレにはまったく身に覚えのない言いがかりだ!」
「あら。でもは“ジャックめ!”って怒ってたわよ? 少なくとも何かしたのは確かだと思うけれど」
「だからオレには何のことか――……あ」
ジャックが不意に止まった。何か思い出したような顔とさっきの声。少しずつ横にずれていく視線。
おい、さすがに怪しすぎるぞ。
黙っていたクロウがついに口を開いた。
「おいジャック、一体何しでかしたんだテメーは」
「い、言えるか! 言えるものか!」
首を振り、ジャックはひたすら話すのを拒んだ。必死すぎて顔が赤くなっている。本当に何をしたんだ、お前。
カレーを食べ終えたブルーノも、いささか鋭い視線でジャックを見やっていた。
「……言えないようなことをしたの?」
「なっ、ブルーノ貴様は黙っていろ!」
「うわわわっ、また暴力は勘弁してよっ!?」
ジャックが眉をつり上げ声を荒げると、ブルーノは冷や汗を浮かべながら身を縮めた。
こんなに騒いでいるとの寝室まで聞こえるんじゃないかと思う。
だが、みんなジャックが仕出かした何かを白状させようと詰め寄った。しかしジャックは言わない。この繰り返しだ。
結局いくら問い詰めてもジャックは話してくれなかった。騒ぎでが起き出すこともなかった。
洗い物を引き受けながら、俺はぼんやりと物思いにふける。
「ジャックは、何をしたんだろう」
反応からして、言えないことをしたのは事実だろう。ある意味俺と同じだな。俺も言えないようなことをに――……待て。
「まさかジャックも……」
――いや、まさか、な。
俺の考え過ぎだよな。
それ以上考えるのは止めにして、俺は洗い物に集中することにした。
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