バイト先でカーリーに会った。
 俺のバイト先には結構馴染みのある顔がよくやってくる。その一人であるカーリーの目的は、この店のコーヒーを飲みに来るジャックだけどな。
 でも今日はジャックが来なかった。カーリーが寂しがっていたので、良かったらポッポタイムに来ないかと誘ってみた。

「良いの?」
「うん、平気だろー。ただ代わりにと言ってはなんだけど、一緒にケーキ選んでくれないかなぁ」
「お安いご用なんだから!」

 きらきらという擬音が舞いそうなくらいのカーリーの笑顔。
 いやー女の子ってやっぱ良いな! 惚れられてるジャックが羨ましい。
 カーリーって眼鏡取ったら超美人だもんな。この間レンズ透けたときに、俺は思わず声あげかけたぐらいである。
 なのにジャックめ……――いや、忘れよう。ジャックと俺は素晴らしい友人関係にあるのだということだけで良いんだ。

「女の子や子どもの好きなケーキって何だろ」
「やっぱり苺のショートケーキでしょ! メジャーかつ誰にも愛されるオーソドックスさが良いんだから~!」
「だよな? あ、このフルーツタルトも良くね?」
「ほわぁ……むしろもう、全部素敵なんだから……!!」

 カーリーを誘って正解だった。
 ケーキ屋って、男一人じゃ入りづらかったりするから助かる。
 あれも良い、これも良いと悩みに悩み、俺たちはたんまりとケーキを買い込んだ。
 買おうと思ってたカードパックはまた今度にしよう。

「にしてもったら随分元気になったわね! ジャックも心配してたんだから」
「カーリーは心配してくれなかったの?」
「えっ? や、やだ、そんな顔したってほだされないんだから! だって私には心に決めた人が……」
「あはは、悪い悪い。判ってますよって」

 ただバカ高いコーヒー飲んでるだけのジャックがどうしてこんなにモテるんだろうか。
 以前はデュエルのキングとして大活躍してたらしいけれど、俺がここに来たときはデュエルキングは遊星に変わっていた。
 ついでにデュエルがここの人にとってどれだけ重要かも把握しきれていない。
 でもジャックが良い奴なのは判る。何だかんだ言って、決める時は決めるんだ。
 ――考えてるとまた眠くなりそうだから、イケメンは羨ましいななんて思うぐらいにしておいた。みんなイケメン過ぎるんだよ……。
 一割で良いから俺にもその要素を分けてくれ。

? なんだかぐったりしてるわよ?」
「何でもない。大丈夫だよ……」

 間もなくポッポタイムに着いた俺は、ジャックにカーリーをけしかけた後、アキと双子たちに招待の電話をしたのだった。



◆◆◆



「わぁぁあ! ケーキがいっぱいだぁぁあ!」

 広げておいたケーキを見るなり、やってきた龍亞は目を輝かせた。
 うん、ナイスリアクションだ。
 龍可も龍可で楽しそうな様子。アキは双子たちほど大きなリアクションは無いにしろ、目をまん丸にして「すごい量ね……」と呟いていた。

「いやぁ。迷惑かけたお礼的な? バイト代がなかなかな量入ったんで奮発してケーキご馳走させて頂くことにしましたぜ!」
「わぁありがとうー! オレいっぱいいっぱい食べるから!」
「おー食べれ食べれー。ほらほら龍可もアキも食べれ」
「あ、ありがとう。さん」
「ふふ、お言葉に甘えようかしら」

 女の子二名の笑顔をゲットしてご機嫌な俺。大量のケーキは、自分やポッポタイムのメンバーの分も考えてのことだ。
 そういう訳で俺は遊星たちを振り返った。

「ほらー。遊星たちも食べれー」
「……ああ、いただくよ」

 遊星が笑って頷くのを始まりに、クロウたちもケーキを囲み始めた。

「にしてもスゲー量だな!」
「ふん、ケーキなど……」
「ジャックは食べないの? なら僕がジャックの分も食べようかな!」
「誰も食わんとは言っとらん!」
「うわあ暴力反対ー!」

 何かすごい光景になってきた。
 賑やかにケーキを取り囲み、騒ぐ男と女の子と子どもたち。友達や知り合いを通り越して、家族のような盛り上がりだ。
 俺も元の世界じゃ、しょっちゅう友達同士で集まってバカ騒ぎしてたっけ。
 ケーキにろうそく代わりに花火立てようとしたり、本当に色々やった。
 みんなどうしてっかなぁ。あっちにも美味しいケーキ屋があったなぁ。
 そんなことを考えているうちに、頭の中がなんだかぼんやりとしてきた。

「うー、何か眠い……?」

 俺はみんなを見た。ケーキを囲みながら、会話に夢中になっている。
 ……俺がいなくても大丈夫だよな。当然といえば当然なんだけれど。
 俺はいそいそと自室へ戻った。
 のんびりとベッドに潜り込み、そっと目を閉じる。みんなの騒ぎ声がぼんやりと聞こえてきて、心地よさと寂しさがない交ぜになる。
 とりあえず、寝よう。
 そう思って、頭の中を空っぽにした。
 何も考えない。
 ぼんやりと浮かぶような意識さえも感じないように。

「おやすみなさーい……」

 ――暗い意識の先に、何かが聞こえたような気がした。

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