の細い首を、両手で包むように触れてみる。あたたかくて、皮膚越しに脈打つ血管の存在を感じた。
組み敷いたの両目は真っ直ぐに僕を見上げていて、何だか嬉しい。
「、あったかいね」
僕が笑うと、も笑ってみせた。少しぎこちない笑顔も可愛かった。
「い、生きてるからね。あったかくないとヤバいよね」
「そうだよね」
は生きてる。そんなの全てを、今、僕はこの手に掴んでいる。
の気持ちはなかなか手に入らないけれど、自由を奪うのはこんなに簡単だ。ちょっと倒して乗るだけで、可愛くて非力なは動けなくなる。
色々と考えてみたけれど、気持ちとか体とか、部分ごとに分類するのはおかしいかもしれない。
だって、どれも大好きなであることには変わりないのだから。
ひとつ掴んで僕のものにしてしまえば、の他の部分もついてくるんじゃないかな。
「が欲しいよ。ねえ、。君が凄く欲しいんだ」
「ぶ、ブルーノ?」
「ちょっとでも良いよ。今は我慢する。何時かの全部が僕のものになってくれるなら」
細い首。何だか凄くドキドキする。撫でたら反射的に喉をそらせて、は訳が判らないといいたげな顔で僕を見た。
「、好きだよ。一番大好きだよ」
「いや、でも、ほら、ブルーノにはDホイールが……」
「が一番だよ。何回も言ってるじゃないか」
「そ、そうなんか」
本当に意外そうに目を丸めるの可愛さったらない。
でもやっぱり、何だか表情が固くて。は何だか緊張しているようだった。
「大丈夫だよ。絞めたりなんかしないから。怯えないで」
「え、あ、うん。……え、絞める?」
あれ、違ったのかな。
は何か言いたげに口を開いたけれど、結局何も言わなかった。
大事な大事なを傷つけたりなんかしないよ。柔らかくてあったかくて、そんなにくっ付くのが大好きなんだから。
恥ずかしそうなが、いつか、素直に僕に身を委ねるようになってくれたら……。
「……どうしよう、」
「な、何が?」
「に触ってたら、変な気分になってきたよ」
「え」
正直といると、気持ちが押さえきれなくて何時も大変なんだけど。今回のは特別だ。何時もよりずっと強い衝動が僕を駆り立てる。
今までも我慢に我慢を重ねてきてる訳だから、別段不思議なことじゃあない。空気の詰まりすぎた風船が破裂するのと同じだ。
このままともっと触れ合いたい。たくさんたくさん、の温度を感じたい。
誰が来たって、誰に見られたって、構わない。
見せつけてあげようよ。
「、良いよね?」
「えっ?」
「もう我慢出来ないよ」
が欲しい。欲しいんだよ。誰にも渡さない。さらわれてしまう前に、僕のものだという証をしっかりとつけなきゃ。今つけなきゃ。早くつけなきゃ。この首に、肌に、体に、中に、いっぱいつけなきゃ。染み込ませなきゃ。
その代わり、僕の中にももっとの存在を染み込ませて。これ以上に、もっともっと君を。
ねえ、互いにどっぷり浸ってしまおうよ。
「……」
「ま、待ってブルーノぉお!」
僕が顔を寄せた時、は叫んだ。叫びながら僕の顔を押しのける。ちょっと痛いよ。
「俺は、俺は今日もバイトである!! 申し訳ないがバイトなのである!」
は叫び続ける。
「バイトで稼がなければ、新しいカードパックを買ってブルーノにデュエル教えてもらうこともできないのですぅうっ!」
「あ!」
そうだよね。のバイトにはそういう事情もあったんだ。僕との時間のためになる、嬉しくて寂しい事情が!
僕はハッとして、手を離してしまった。それを見計らったように、がするりと僕の下から抜け出てしまう。
「だから、ごめんよブルーノ! そして行ってきます!」
「……」
呆然とを見つめ、固まるしかない僕。何だか凄く寂しい。そんな僕に、は眩しい笑顔を見せつけながらこう言った。
「帰ってきたら、またライディングデュエルのルール教えてな! 約束だぞ、忘れんなよ!」
あっさり僕は頷いてしまった。
これが“惚れた弱み”なのかな?
色々残念な気分は拭えなかったけれど、との時間を約束できた喜びを隠すことはできなかった。
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