の手を引いて、俺はとある部屋へと連れて行った。
 此処にはと一緒に暮らす為に用意したものがたくさんある。
 が此処から出ないように繋いでおくための鎖。俺が部屋を離れた時でもを見守ることが出来るカメラ。他にも、生活に必要なものは揃えてあるから大丈夫なはずだ。

「今日から此処で一緒に暮らそう」
「えっ?」
「この部屋からが出なくて良いように、足りないものがあったら俺に言ってくれ」

 てきぱきとの足に鎖を繋ぐ。枷も鎖も特別製だ。の体に傷を付けたり、負担を掛けないようになるべく軽いものにした。勿論丈夫で錆びにくい。部屋を動き回れるだけの長さはあるから、不便はないはず。
 呆然とするの目が、俺を捉えた。

「ど、どういうこと?」
「トイレはその鎖がついたままでも行ける距離だし、風呂は……少し離れてるが大丈夫。俺も一緒に入るからな」
「えっ、ちょ、あの?」
「ベッドも一緒に寝るから一つで良いし……」
「ゆ、遊星っ!」

 が俺の肩を掴んだ。繋いだばかりの鎖が、の動きに合わせて音を立てる。

「あのっ、これって……変じゃ、ないかな」
?」
「な、何か、駄目じゃない?」
「何がだ?」

 短く聞き返すと、は、信じられないものを見るような顔で俺を見ていた。

「俺……バイトだってあるし……」
「上手く俺が話しておく。心配しなくていい」
「え、えぇっ?」

 戸惑うに、深い笑みを向ける。こうすればが黙ることを、俺は知っていた。
 案の定静かになったの頭を撫でて、俺はもう一度微笑みかける。

「大丈夫だ。俺がお前を守るから」

 立ち尽くすを抱き寄せた。
 微かに震えるその体を押さえつけるように、腕に力を込める。
 何も不安は無いさ。
 大丈夫。
 命に代えてもお前を守る。
 誰にも渡さない。
 触れさせはしない。
 ようやく、理想が近付いた。

「大好きだ……

 ああ、ジャックたちにはどう話そうか?
 正直、ジャックたちがと話すのさえ俺は嫌だった。決して嫌いだからじゃない。が大事だから、ついつい警戒してしまうだけで。
 ジャックも、クロウも、アキも、みんな。の明るさには少なからず惹かれるはずだ。
 大切な仲間とはいえ、を渡すなんて絶対に出来ない。……これが、嫉妬、なんだろうか?
 それに最近、物騒だからな。
 歴史を改変しようとしているイリアステルの存在が気がかりだ。異世界の人間がいるとなれば興味を持つに違いない。
 の安全のために、この場所は隠し通さなければ。
 ああ、そうさ。
 素直に「のためだ」と話せば良い。判ってくれるはずだ。みんなが大事なんだからな。
 更に此処のセキュリティーを強化していかなければ。
 だが俺ひとりではプログラムを組むにも限界がある……。

「……やっぱり、手伝ってくれる人間が必要だな……」

 ひとり、心当たりが思い付く。

。少し出掛けてくるからな」
「え、あ」
「良い子にして待っててくれ」

 の癖がついた黒髪に優しく口付ける。
 それから俺は、部屋を後にした。
 は何も言わず、呆然として俺を見つめていた――。



 人手の見当がついたとはいえ、手伝ってくれるだろうか。
 だが、俺よりも技術を持っていて、俺の気持ちを判ってくれそうなのは彼ぐらいしかいない。
 俺がポッポタイムに戻ると、ちょうど彼がひとりでパソコンと向かい合っていた。

「ブルーノ」

 俺が声を掛けると、ブルーノはすぐにこちらを振り向いた。

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