は「とりあえず起こったことを纏めて話すから!」と前置きして語り始めた。
遊星とブルーノの度を越えた過保護ぶりと愛情を上手いことやり過ごしていたものの、ある日たがの外れた二人がを監禁することにし、実行に移した。
監禁は周到で、ネズミどころか虫の入る隙すらなかった。
このままではまずいと悟ったは、何とか二人の目を盗んで外の人間とコンタクトをとり、救助を願い出た。
そのコンタクトとった相手がよりにもよってイリアステルだってんだから、はよっぽど参ってたんだろう。
そのイリアステルの人間がの横でのんびり紅茶飲んでんのも仕方ないな、にとっちゃ恩人なんだもんな……ってなるか!
ならねえよ!
イリアステルのくせに敵地で寛ぎすぎだろ!
「貴様の淹れたこの紅茶、なかなかに良い」
「いやー喫茶バイト長過ぎて無難にできちゃうようなったもんでーエッヘッへ!」
そしても気楽すぎだろ!
本当はこのプラシドに伝言を頼んで、オレたちに救助を求めるつもりだったらしい。こいつがオレたちに大人しく伝えるわけないのによ! 人がよすぎては人を疑わねえのか!
けど遊星とブルーノが共同で作ったセキュリティ完備の部屋とか、オレたちじゃあ手こずっただろう。それをプラシドはあっさりと助け出したってんだ、敵ながら天晴れだぜ。
けどやっぱりイリアステルに頼むのはなしだろ!
「まあ、が嘘を言うとは思えねーし今回はてめぇを信じる。今回限りだからな」
と言っても、少しでも怪しい様子があったらブッ倒すつもりだ。
そんなオレの心境なんざヤツに理解できるはずもなく――たとえ気付いててもこの態度は変わらねえだろう――、プラシドは高笑いした。
「いい判断だ。まあ悪いようにはしないぞ。オレは貴様たちに広がる不和を楽しませてもらうだけだからな」
「要約すると腹わって話し合って遊星たちの目を覚まさせるってことだぜクロウ」
「お前の平和的翻訳のせいでイリアステルのセリフの悪ぶりがなくなってるぜ」
それでもムカつくことに変わりはねえがな。
話が一段落すると、オレは次のことを考えた。遊星とブルーノのことだ。
プラシドはあいつらの目の前でをさらったらしいから、今頃大騒ぎしてるに違いない。まさかプラシドの目的が、の救出だとは思いもよらねーはずだ。
オレはあいつらがを監禁したっていう話にまだ混乱してる。何かに対して遊星もブルーノも変に思い入れ強えーなぐらいしか感じてなかった。まさか監禁なんて行動に及ぶなんて想像すらしなかった。
遊星とブルーノには、オレたちが知らない深い事情があるのかもしれない。その心の闇に、仲間として気付いてやれなかった自分に腹が立つ。
あいつらの行動だけでなく、プラシドの行動も予想外だ。を部屋から出してやったなんて。しかも今のところ、見返りか何かを要求したり、こっちに危害を加えるわけでもねえ。何て言うか、敵のわりに今のヤツは敵意らしいものを発していなくて、こっちが毒気を抜かれそうだった。
イリアステルにとってもやっぱり、異世界から来たは特別な何かなのか?
「プラシドは今のところ無害として、遊星とブルーノの奴を何とかしねーとなぁ……」
のこと探し回ろうと必死に違いない。二人は二人なりにを守るために一生懸命だったんだ。褒められたやり方じゃねえけどな。
ただ見境なくなってる遊星とブルーノを、オレだけで説得なんて出来るか……? 本人が色々話しても聞かなかったんだろ? やってみるにはやってみるつもりだけどよ……。
やっぱりオレだけじゃあ心許ねーぞ!
オレが頭を抱えていると、それに気付いたが紅茶を持ってきた。
「まーまークロウ。落ち着いていくべ」
「被害者が一番落ち着いてるとかどうなんだ、お前……」
「いやはや、久々のシャバの空気上手すぎて悟りの境地なんだよ」
「シャバって、投獄されてたのかよ! ……まあ、閉じ込められてたことにゃ変わりねーな」
仕方なく紅茶を受け取って、飲んでみる。特別好きなわけでもない。けど、あったかいものを飲むと何となく心が落ち着いた。
目の前でへらへら笑うを、じっと見つめた。
違う世界から来たっていうだけで、他は特別変わってるわけでもない。
デュエルの腕はからっきしだけど必死に練習していて、オレもたまに戦い方を教えてやってる。
元の世界では学校に通ってるって話だ。けど勉強の出来は本人曰く中の下らしく、アキにちょこちょこ教えてもらってる。戻った時に周りに遅れずついていくために。
ただDホイールを乗るのだけは、アキより上手い。
とりとめないことを考えているうちに浮かんだアキの存在に、オレはハッとした。
「……そうか! アキならいけるかもしれねぇぜ、!」
「なにが?」
「あの困った奴らの説教だよ! オレだけじゃ感情任せでろくに説き伏せられやしねーだろうからな」
「クロウって冷静に自分を見つめてるんだね」
ずれたの言葉に反応するのは一端置いといて、オレは早速アキに連絡した。
あいつも、様子のおかしい遊星たちや行方不明になっていたのことを心配してくれていた。の元気な姿を見せるついでに、遊星とブルーノのことを説得する手助けを頼む! 我ながら完璧な作戦だぜ。
「、アキに連絡してくれねーか。ポッポタイムに来るようにって」
「おー! そういやアキちゃんに暫く会ってないなぁ、判った電話するー!」
事が済んだら、龍亞と龍可にものことを話そう。ただ監禁のくだりは教育によくねーから黙っておこう。
嬉々としてアキに連絡するを、すっかり静かになったプラシドが見守っている。オレは思わずヤツに声を掛けた。
「なあ、どうしてを助けてくれたんだ?」
「不動遊星を陥れるためだ」
「それだけか? にしてはに甘いじゃねーか」
駄目元でオレが探りを入れると、プラシドは鼻を鳴らした。
「を心配していたのは貴様らだけではないというだけだ」
その言葉が意外すぎて、オレは幻聴を聞いたのかと思った。
それ以上踏み込むほど親しくもないし、プラシドもプラシドでそれ以上口を開こうとはしない。
アキへの連絡を終えたが戻ってくるまで、オレとプラシドは、なんとも言えない空気で黙りこくっていた。
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