バトルは熾烈化していた。
 アキレスとエンペラーM2が交互に攻撃を仕掛けていくも、器用かつ精密に剣で防ぎきるジャッジ。
 同時に飛びかかれば、剣を振って生まれた風圧で吹き飛ばされてしまう。
 バンとジンのコンビネーションは、即席のタッグとは思えないほど息のあったものであった。しかし、暴走するユウヤのパワーの方がまだ上回っていた。
 ならば、と距離を取ったエンペラーM2がランチャーを撃った。ランチャーはジャッジに次々と直撃し、爆風を生む。ジャッジの視界を遮る作戦なのだろうか。
 しかし、ジャッジは剣を振るい、瞬く間に土煙を払ってしまった。
 ジャッジが正面を見る。――しかし、アキレスとエンペラーM2の姿はない。
 二機は遥か上空へ飛び上がっていた。ほぼジャッジの真上である。
 ユウヤはニタリと笑った。
 ジャッジが剣を構え、力を溜め始める。

〈アタックファンクション・パワースラッシュ〉

 ジャッジソードに蓄えられたエネルギーが、上空のアキレス・エンペラーM2へ向かって放たれる。
 は悲鳴を上げかけ、咄嗟に口許を手で覆った。

「空中じゃかわせませんわ……!」

 仙道は何も言わない。静かにモニターを見つめているだけだ。
 放たれたエネルギーがアキレスとエンペラーM2へぶつかる直前、二機は互いの武器を弾き合った。
 僅かな空間がアキレスとエンペラーM2の間に生まれ、その空間をパワースラッシュが駆け抜けていく。二機にはかすりもしない。
 宙で機体を捻り、ジャッジの正面にアキレス、背後にエンペラーM2が降り立つ。
 間髪入れずに二機は必殺ファンクションを放った。
 エネルギーを限界まで溜めた槍で渾身の一撃を放つ、アキレスの必殺ファンクション・ライトニングランス。
 ハンマーで地面を叩き割り、地底のエネルギーを呼び起こす、エンペラーM2の必殺ファンクション・インパクトカイザー。
 二つのエネルギーがジャッジ目掛けて突き進み、激突し、炸裂した。
 次いで生じる爆発。
 ……見事、アキレスとエンペラーM2の連携でジャッジを倒した証であった。

『ジャッジ、ブレイクオーバー! 灰原ユウヤ選手、敗退!』

 MCのアナウンスを聞いたバンか、、嬉しそうに拳を握り、笑った。

「やったな、ジン!」

 呼び掛けられたジンも、安心したように頷いてバンを見つめ返す。
 ジャッジが壊されたユウヤは、絶叫と共に卒倒した。白かった髪に色が戻り、電撃や燐光も収まっていく。
 それを見て、もホッと胸を撫で下ろした。

「止まった……。良かった……」
「やっぱり、灰原ユウヤが気になってたのかい?」

 仙道が訊ねると、はゆるりと首を振った。

「よく判りません……。でも、ユウヤくんのあの姿がとても怖かったのは本当です。だから……あのスーツが機能を失ったのを見て、とても安心しました」
「……そうか」
「ユウヤくんにも、大事がないと良いのですけれど……」

 担架に乗せられ運ばれていくユウヤを見つめる。そんな彼女を見つめながら仙道は、「そうだな」短く返した。
 の顔色も大分良くなっていた。
 彼女の背中を擦るのを止め、仙道は再び腕を組んで壁に凭れる。

「本当にありがとう、仙道くん」
「気にしなくていいさ」

 丁寧にまた礼を述べてくるに、仙道はそう言って笑った。
 ――ステージ上のバンたちもまた、ユウヤの身を案じていた。
 事情を知るらしいジンに、バンが心配そうに訊ねる。

「ジン、灰原ユウヤはどうなったんだ?」
「おそらく、システムが暴走し、彼の精神を蝕んだのだろう……」

 ジンの答えにバンは目を丸めた。しかし、ジンはそれ以上答えようとしなかった。
 代わりに彼が口にしたのは――、

「バン君……決着をつけよう。僕たちの本当の決着を」

 アルテミス最後の戦いへの思いだった。
 笑うジンに、バンは大きく頷き、笑い返す。

「ああ、望むところだ!」

 ――アルテミス・ファイナルステージの再開だ。
 バトルスタートの掛け声と共に、両者の激突が始まる。
 アキレスの水月棍と、エンペラーM2のランチャーハンマーが何度もぶつかる。
 近距離での打ち合いから脱したエンペラーM2が、アキレスに向けてランチャーを放った。ランチャーを避けたアキレスに、隙を逃さずエンペラーM2が突進し、ハンマーを振るう。

『エンペラーM2激しい攻めだ!』

 MCの実況が響く。
 瞬く間に崖へと追いやられてしまうアキレス。背後にあるのは、溶岩の川だ……。
 だがアキレスはこの窮地をすぐに脱する。エンペラーM2がハンマーを振り上げた隙に足払いを仕掛け、その一瞬のうちに回避、体勢を立て直したのだ。
 今までのお返しとばかりに、逆に水月棍を打ち込んでいくアキレス。エンペラーM2は防御に専念していた。

「秒殺の皇帝が苦戦してんな」
「まあ、さすがバンくんですわね!」

 仙道の呟きにが笑う。
 だがしかし状況はまた一変する。
 ライトニングランスを打ちこむ勢いで突進してきたアキレスを避け、エンペラーM2がその背後に回ったのである。
「すごい!」ジンの技術と機体のスピードを見て、が目を輝かせた。

「形勢逆転ですわ!」
「力は正しく互角ってところかね」

 仙道の話す通り、バンとジンの実力は拮抗していた。
 はすっかりバトルに熱中している。何時もの元気な彼女に戻っていた。LBXへの情熱がを奮い立たせたのだろうか。

「な、なんて、熱い戦いですの! たまりませんわ!」
「さっきまでの調子の悪さは何だったんだ、あんた……」

 呆れたような仙道の呟きは、に届くことなく霧散する。
 気を取り直し、仙道もバトルの行方に集中した。
 猛攻を受けるアキレスは、何とか盾で攻撃を凌いでいた。が、エンペラーM2の渾身の一撃が入り、アキレスは宙へと打ち上げられてしまう。
 容赦ないランチャーが、無防備なアキレスを四方八方から襲う。
 しかし、アキレスは盾で猛攻を耐えきった。盾を構えたまま、アキレスが着地する。
 だがエンペラーM2の真の狙いは、この瞬間であった。

「必殺ファンクション!」

 ジンの叫びに呼応し、エンペラーM2がハンマーを振り上げる。
 それを見てバンもすかさず叫んだ。

「必殺ファンクション!」

 二人の必殺ファンクションが発動する。
 エンペラーM2がハンマーを大地に叩きつけ、地底のエネルギーを呼び起こす。必殺ファンクション・インパクトカイザーが、未だ棍にエネルギーを溜め続けるアキレス目掛けて突き進んでいく。
 その瞬間――最大限にエネルギーを溜めたアキレスは跳躍した。
 インパクトカイザーの衝撃波が、アキレスの真下を虚しく過ぎ去って行く。
 アキレスの武器に蓄えられた真っ赤に燃え上がるエネルギー……必殺ファンクション・超プラズマバーストが、技を放った反動でまだ動けぬエンペラーM2に向けて、放たれた……!
 轟音と閃光が生まれ、フィールドを埋め尽くす。

『アキレス必殺の一撃ついに決着か? ……む、これは!』

 MCがアキレスの勝利を告げかけるも、ハッと止まる。
 爆発が収まり、舞い上がった粉塵が消えたその場所には――なんと、エンペラーM2が立っているではないか。
 超プラズマバーストを凌ぎきったのである。

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