仙道の行動を咎めるようにバンは「仙道!」と声を上げる。
 だが、彼に全く悪びれた様子はない。

「自分に降りかかった火の粉を払ったまでだぜ?」

 敵機をぶつけられた張本人である郷田も、仙道の行動を咎めることは無かった。コイツには何を言っても無駄だ、とその眼差しが語っている。仙道が態度を改めることなど、彼は微塵も期待していないのだ。
 二人に向かって、バンはたまらず怒鳴る。

「二人ともこんなことしてる場合じゃないだろ!? 俺たちはチームなんだぞ!」
「黙っていろバン。俺一人でいい」

 郷田はそう言って、再び戦いに意識を集中させた。
 息が合うか合わないか、それ以前の問題だ。反発しあう番長たちのやりとりに、ヤマネコたちは口元を吊り上げていた。

「仲間割れとは笑わせる」
「ハカイオー絶斗から血祭りにあげるモン」

 宣戦布告に、武器を構えて備えるハカイオー絶斗。

「やれるもんならやってみやがれぇ!」

 郷田が叫び、ハカイオー絶斗は武器を翳しながら二機に迫る。
 絶・破岩刃が振り下ろされる直前、レッドリボンとグリーンリボンは難なく攻撃を回避した。空振った剣の衝撃で、砂埃が巻き起こる。
 そこを狙うように、ハカイオー絶斗の両サイドから、ヤマネコたちが銃撃を繰り出した。
 ハカイオー絶斗は、剣を盾に防御する。「いけぇ、リーダー!」飛び跳ねながらリコがエールを送った。
 その間も、ナイトメアはバトルを静観し、微動だにしない……。
 は、バトル前に仙道と交わした会話を思い出していた。

『仙道くん。私、あなたのご活躍を心から応援しております。郷田くんと共に華麗な勝利を飾ってくださいね!』
『ああ。……言われなくても勝つさ』

 ――そう、約束してくださったじゃないですか。仙道くん。
 がおもむろに拡声器を手にした。それに気付いたリコたちが不思議そうに彼女を見つめる。
 ステージを見上げ、拡声器のスイッチを入れ、は――叫んだ。

「仙道くんの、大ウソつき!!」

 拡声器から放たれたの怒号が、大きく響き渡る。
 名指しされた仙道は、不審げに声のした方を見下ろした。ちょうど視線の先にはがいる。スタッフ用のものであろう拡声器を掲げたまま、険しい顔つきで彼女は此方を見据えている。

「バトル前に約束してくださったじゃないですか! 郷田くんと共に華麗な勝利を飾ってくださると! なのにコレはどういうことですかっ! 郷田くんの足を引っ張って棒立ち、こんなのが箱の中の魔術師の……あなたのバトルなのですか!!」
「あ……?」

 仙道が顔を顰めたのには気付いた。普段ならばそれで怯むところだが、止めない。
 このままでは、ハカイオー絶斗のブレイクオーバーは時間の問題。その後にハッカー軍団がナイトメアに向かって来たとしても、勝てるかどうかは判らない。先程はナイトメアのスピードについていけなかった相手も、今度は対応してくるかもしれない。逆に仙道ひとりで勝てる可能性もあった。しかし、それでは郷田を捨て駒にするのと同じ。
 バンたちと交流する仙道の心の中で、少しずつ変化が起きつつあることをは知っている。以前の彼ならば、舎弟だ何だと言われてここまでついてくることは無かっただろう。仙道自身が自覚していようがいまいが、彼は変化を無意識のうちに受け入れ始めているといるのだ。
 仙道をずっと見つめてきたには、それが判る。
 だからこそ、ここで郷田を見捨てることなく彼に戦ってほしかった。
 その為に、戦いの前に彼に確かめた。
 郷田と共に勝利を飾ってほしい。そう告げて、願いを込めて、約束を交わした。

「郷田くんとの因縁を、関係の無いバトルにまで持ち込むなんておかしいです! そんなの、LBXが可哀想ですわ! どんなに技術があったって、性能の良いLBXがあったって、仙道くんが格好悪くなるだけですわ! 仙道くんは、ずっと郷田くんに負けたままで終わってしまうようなものですっ!」

 無茶苦茶な心の内を、そのまま少女は叫ぶ。

「あなたほどの腕前とテクニックがあるなら、郷田くんとちょっと息を合わせてハッカー軍団に圧勝することなんて造作も無いでしょう! 目標はマスターキング、それ以外は雑魚だと、あなた、仰ったじゃないですか! 舎弟だとか、気が向く向かないとか、関係ないじゃないですかっ!」
「お、おい、落ち着いた方いいんじゃないか……?」

 大会スタッフが近づいて来たのを見てギンジが忠告するも、の耳には届かない。
 テツオもスナック菓子を食べるのを中断してを止めようと「落ち着くでごわす……」と肩を叩いたが、やはり効果は無かった。
 仙道と視線を交わしたまま、は続ける。

「私はあなたの大、大、大ファンですわ! だからこれ以上、残念な仙道くんの姿なんて見たくありません! 最高に格好良くて強くてクールで何だかんだで筋は通す素敵な箱の中の魔術師、それが仙道ダイキくんですのに! このままじゃ、仙道くんの素晴らしさが皆さんに伝わるどころか、誤解されたまま終わってしまいますわ!」

 ギンジとテツオがまだを止めようとする。そこにリコが割って入った。

「ストップ、二人とも!」
「はあっ?」
「どうしてでごわす?」 

 戸惑う二人に、リコは返す。

「叫ばせてやりな。引っ込み思案のお嬢が、決死の思いをぶつけに行ってんだ……。ここは見守ってやろうじゃあないか!」

 演歌だねぇ、とリコは感動に声を震わせている。ギンジとテツオは渋々の静止を諦めた。リコの言葉もあったが、これだけ止めようとしても聞かないのだ。世間知らずのお嬢様を止める術が、二人にはもう無い。

「警備員、来てる……」

 の熱心な呼びかけを聞きながら、此方に向かってくる大人たちを見つめ、ミカが溢す。しかしすぐにその視線はモニターへ戻された。慕う郷田の勇姿を目に焼き付けるため、彼女も彼女で忙しいのだ。
 仙道はじっとを見つめていた。戦場にも気を配っているものの、どうしても少女の訴えは仙道の心を揺さぶる。戯言として聞き流せるほど、仙道との関係は淡白なものでは無くなっていた。

「人任せの勝利で喜ばない、努力で磨き上げた力で勝利を掴む凄腕プレイヤー、それが仙道ダイキくんなのに……。お願いです! 本当の仙道くんの素晴らしさを、皆さんに知らしめてください!! 仙道くんっ、我儘は承知ですから……約束、守ってください!!」

 泣きそうなの声と言葉。真っ直ぐに此方を見つめて少しも外されることのない視線。溢れんばかりの強い気持ちに満ちたその姿。
 ――全く、人の事を馬鹿にしてんだか褒めてんだか判らないねぇ。
 仙道は小さく微笑んだ。
 ――絆されちまったもんだ、この俺が。
 少年は今一度、戦場を見つめ直した。
 相も変わらず郷田は防戦を強いられている。LPが大分削られているであろうことは確かめるまでもない。
 それをも察しているのか、声音はますます必死になっていく。

「そして郷田くんと一緒に、華麗な勝利を見せっ、うわっ、ふぎゃ!?」

 が、背後から接近してきた大会スタッフに拡声器を取り上げられてしまった。決死の少女の叫びは呆気なく幕を閉じる。他のスタッフに抱えられるようにして、は会場の隅へと連行されていく。

「あ、謝りますから! お願いですから放してぇっ! バトルの行方をっ、行方をこの目でぇっ! お騒がせして申し訳ありませんでした、本当にすみませんでしたっ!!」

 ようやっと我に返った令嬢は、自分のしでかしたことの迷惑さを痛感し、何度も謝罪を繰り返す。
 そこに何処からともなくの執事・ヤマブキが駆けつけてきた。何とかスタッフを説得して主人を解放してもらうと、と共に何度もスタッフへ頭を下げる。そうして奇跡的に、拡声器の没収と厳重注意で済んだは、今度はヤマブキから厳しく叱られ始めた。半泣きで何度も頷くと鬼の形相のヤマブキ。の自業自得だ。
 ……ようやく自由になった少女がモニターへ視線を移すと、郷田の叫び声が耳を突いた。

「なめんのもいい加減にしろ!」

 ハカイオー絶斗が銃撃の隙間を縫って跳躍し、レッドリボンへ向かって剣を振りかざしながら迫っていく。
 遂に攻撃が命中するかと思われれたその時、にやりとヤマネコが口許をつり上げた。
 ハカイオー絶斗の背後に回り込んでいたグリーンリボンが飛び上がり、マシンガンを連射する。全弾がもろに背中へ命中し、ハカイオー絶斗は無惨にも砂漠へ叩き落とされてしまった。
 そしてハカイオー絶斗が立ち上がるより先に、レッドリボンが背後、グリーンリボンが正面に立ちふさがり、銃口を突きつける。完全な挟み撃ちだ。

「その頭吹っ飛ばす」
「ボクタンは胸を。モーターごと吹っ飛ばしちゃうモン」

 ヤマネコとグンソウの無慈悲な宣言が響く。
 ハカイオー絶斗は動けない。ここまでか、と郷田が唇を噛み締めた。
「ほほ……アキハバラキングダムをなめてるからデース」バトルを見守るマジョラムも、楽しげに笑っている。

『ハカイオー絶斗、絶対絶命ぃ!』

 角馬の実況とモニターに映る光景に、会場中の誰もがハカイオー絶斗の敗北を予想した。
 ゆっくりとレッドリボンが引き金に手を掛けた瞬間、戦場を一陣の風が走った。同時にレッドリボンは、鈍い打撃音と共に吹き飛ばされていく。
 そうして代わりにハカイオー絶斗の真正面に立っていたのは――、ナイトメア。

「なっ!?」
「郷田、伏せろ!」

 戸惑いながらも郷田は、仙道の指示通りにハカイオー絶斗を操作する。
 突き出されたナイトメアズソウルが、ハカイオー絶斗の真上すれすれを過ぎ、グリーンリボンの胸部を強打する。レッドリボン同様、グリーンリボンも吹き飛ばされていった。

「仙道……」
「大口叩く割には見ちゃいられねえ。ガサツ過ぎるんだよ、お前のバトル」
「何故助けた?」

 問う郷田に、仙道は今日一番の凄みある笑みと共に答えた。

「会ってみたくなっただけさ。こんな奴等の上で得意になっているマスターキングってやつに。それと……」

 呟きながら仙道は、ちらりとステージの下へ視線を送った。大人たちに厳しく叱られて、すっかりしょぼくれたと目が合う。怒鳴っていた時とは打って変わって静かな彼女に、仙道は微笑んでみせる。
 慕う少年の笑みに含まれた意味をくみ取った少女の顔は、瞬く間に輝き出す。
 敵や郷田に向けた物とは違う、情の満ちた仙道の横顔を、バンは何も言わずに見つめていた。
 ジオラマへと視線を戻した仙道が続ける。

「うっかり約束しちまったもんでねぇ、あの世間知らずのお嬢様とよ」
「へっ……。まあ、あんだけ言われて応えなきゃ男が廃るってもんだ」

 郷田は笑みを溢しながら返した。すっかりふやけたの顔を一瞥してから、仙道の横顔を見る。

「にしても、いつの間に約束したんだよ? 俺と一緒に勝つだなんて、てめぇなら口が裂けても言わねぇだろ」
「世間知らずで向こう見ずのドジでも、伊達に俺に引っ付いて来てないみたいだな。まんまと人のこと乗せやがった」
「お前を言いくるめたってのか? ……の奴も油断ならねぇな」

 体勢を立て直したハカイオー絶斗とナイトメアが、背中合わせに立つ。
 ハカイオー絶斗の目の前にはグリーンリボン、ナイトメアの直線上にはレッドリボンの姿がある。立ち上がった二機は、再び敵意を燃やして番長たちを見つめていた。

「一気にケリをつけてやる!」
「挟み撃ちだモン!」

 ヤマネコとグンソウは、射撃しながら迫って来る。
 その銃弾が辿り着くよりも早く、二人の番長は動いた。

「仙道! てめえ一人にいい格好はさせねぇ!」
「さっさと決めるぜ、郷田ァ!」

 番長たちは互いにCCMのボタンを操作する。さっきまでいがみ合っていた筈の二人の関係は、一瞬で変化した。
 まるで長い間タッグを組んでいた同士のように、少年たちは揃って叫ぶ。

「食らえ、必殺ファンクション!」

 ハカイオー絶斗のアタックファンクション・超我王砲。胸部の二つの砲門に充填された強力なエネルギーを勢いよく放つ豪快な必殺ファンクションだ。眩く大きな光線がグリーンリボンへ向かっていき、直撃する。
 空中へ飛び上がったナイトメアのアタックファンクションは、ジョーカーと同じデスサイズハリケーン。だが威力が明らかにアップしている。ナイトメアが生み出した竜巻の風圧で動けないレッドリボンへ、無数の紫の風刃が迫り、襲う。
 ――ハカイオー絶斗の後ろに、ナイトメアが舞い降りた瞬間、相手の両LBXは爆発した……。
 勝利が危ぶまれたのが嘘のような、あっという間の快進撃である。

『ブレイクオーバー! ハカイオー絶斗とナイトメア、同時にグリーンリボンとレッドリボンを撃破! 山野バンチームの勝利、決勝進出です!』

 実況と共に、観客が沸き立つ。
 はらはらと行方を見守っていたバンも、満面の笑みで郷田と仙道を祝福した。

「やったな! すごいよ、二人とも」

 すると、数分前まで“動かない”と豪語していたとは思えないほど得意げな顔で仙道が応じる。

「ま、俺がやればこんなもんだ」
「おい、一人で勝った気になってんじゃねえぞ」

 腰に片手を当て、すっかりご機嫌な仙道に、当然郷田が口を挟む。
 それすら予想していたのか、「じゃあ、お前一人で勝てたのか?」と、仙道の切り返しは早い。
 ぐ、と郷田が呻くのを見て、ますます仙道は口元を歪める。
 仲良し……とまではいかないようだが、バトル前のいがみ合いに比べるとずっと良い。どこか険がとれたというか、ようやく“仲間”というスタートラインに立ったというところだろうか。

「まあ、良いか……」

 苦笑いでバンが溢した間も、二人は相変わらず喧嘩をしている。
 それでも確かに自分たちがチームとして一歩前進したことを、バンは実感した。
 バンたちがステージから降りてくると、前回同様、一目散にが駆け寄って来た。

「お疲れさまでしたわー! ダブル番長の共闘、痺れましたわー!!」
「こっちはアンタのブーイングで耳がキンキンしたよ」
「うぐっ……申し訳ないです……」

 間髪入れぬ、かつ容赦ない仙道の返答に、は肩を落とす。
 縮こまる彼女の肩を、励ますように郷田がポンと叩いた。

「いやー、ビックリしたぜ! 度胸あるじゃねぇか、。こんな大勢の前で後先考えずよく叫んだもんだ!」
「郷田、それフォローになってないよ……」
「実際後先考えずご迷惑をお掛けしましたから……ズバッと言っていただけた方が逆に助かりますわ」
「その割にしょんぼりしちゃってるじゃないか……」

 バンの心配そうな声に、は笑みを取り戻す。

「反省はしています。でも後悔は無いです。正直、わたくしが叫ぼうと叫ぶまいと、仙道くんはあの後きっと郷田くんを助けに行ったはずですし」
「じゃあ何で、わざわざ仙道を怒るようなことを叫んだの?」

 バンの疑問は当然のものだった。
 は笑顔を崩さず、寧ろ何処か楽しげに表情を深める。

「わたくしもまだまだ未熟ですから……気持ちが抑え切れなくなったんです。周りが仙道くんの行動にビックリしていて、このまま仙道くんのことを誤解されてしまうんじゃって不安が勝ってしまって」
「そっか……。それじゃあ、あのままでも仙道が郷田を助けに行ったって思ったのはどうして?」
「それは……」

 はじっと仙道を見つめた。それから郷田を見て、もう一度仙道を見る。どういった意味の込められた視線か判らず、二人の番長は揃って首を傾げた。それを見たは嬉しそうにうんうんとひとりで頷いてから、バンへと視線を戻す。

「仙道くんのことですから……“形はどうであれ一度は俺を倒した奴が、マスターキング以前の雑魚相手に負けるなんて無様な姿を晒すのは許さねぇ”……とかなんとか思っていらっしゃるんじゃないかなぁと」

 わざわざは、仙道の口調を真似ながら答えた。声音を似せるのは無理だが、雰囲気やイントネーションを掴んだ喋りだ。この物真似といい、先ほどの大音量の叱咤激励といい、の仙道への思いにはファンという概念以上のものを感じる。
 思わず感心してしまうバンと郷田に、は続けた。

「あと仙道くん、実は情に厚いところもありますから!!」
「拡声器取り上げて執事に怒られてもまだお灸足りないのかアンタは」

 言いながら仙道は、彼女の額を右手の中指で思い切り弾く。「あいたっ!」悲鳴を上げ、両手で額を押さえ、は背中を丸めた。

「せ、仙道くん……どうしてそうデコピンがお上手ですの……」

 仙道は答えない。のリアクションを見て、何時もの涼しげな笑みを浮かべている。
 恐らく今までだったら、郷田はここで仙道を一言咎めていたところだろう。だが、彼も痛がるを見て笑っている。

「おいおい、見事な音だったな! 仙道といっつもこんな微笑ましいことしてんのかよ」
「うるせぇよ郷田」
「俺はに聞いてんだっての」

 確かに見事な音だった。そして、微笑ましいやり取りだった。
 バンもつられて笑う。
 仙道がをからかったのは、まるでそれ以上に褒められるのを防ぎたいように見えた。が喋り出してから、何となく仙道の血色が良くなった気もする。そしてはきっと、止められなければ延々と彼を褒めちぎることだろう。何もかも無自覚なまま。以前ちょっとした好奇心で彼女に仙道のことを訊いたカズヤが「に仙道のこと語らせたら無尽蔵だぜ……」とげんなりしていたのをバンは知っている。
 ――仙道、もしかして恥ずかしがってるのかな?
 口にしたら此方にまで何か飛んできそうで、バンはそう考えるだけに留めた。

『続いて第二試合を始めます。決勝に進み、山野バンチームと戦うのはいったいどちらか!』

 そんなことをしているうちに、ジンチームとオタレンジャーのバトルが始まった。
 ジンチームはカズヤとジンのタッグ、オタレンジャーチームはオタブラックとオタピンクの出場だ。
 どんな試合が見れるのか、と胸躍らせる間もなく、ジンの駆るプロトゼノンがアタックファンクション・ブレイクゲイザーを放った。揃って悠々とポーズを決めていたオタブラックの愛機・ビビンバードX-Vが一瞬で爆発霧散してしまう。寸でのところでオタピンクのLBXは攻撃範囲から離脱していた。
 しかし何を思ったのか、オタピンクのビビンバードX-IVは突如武器を投げ出し、プロトゼノンに向かって両手を広げ走り出したではないか。
 そこをカズヤのフェンリルがしっかりと狙いを定め、アタックファンクション・ホークアイドライブによる三連射で撃ち抜く。オタピンクは、カズヤとフェンリルの初陣に、華々しい勝利の花を手向ける形でブレイクオーバーしてしまったのだった……。
 タッグを組んでいても、ジンの“秒殺の皇帝”の称号に揺るぎは無かった。そしてカズヤの射撃によるバックアップは何時も通り精密であった。

『怒濤のアキハバラキングダム、遂に決勝戦の組み合わせが決まりました! 山野バンチームと海道ジンチーム。勝利し、アキハバラのキングに挑むのは果たしてどちらか!?』

 遂にバンとジンのバトルが見られるのだ。互いが互いを一番の好敵手と認める間柄である少年たちのバトルを目前に、はもちろん胸を高鳴らせる。
 しかし、

「無駄に大声を張り上げて会場の方々にご迷惑をお掛けすることの無いよう重々お気を付けくださいね。お嬢様」
「は、はい、ヤマブキさん……」

 何処からともなく現れた執事に、彼女は必死に青い顔を何度も縦に振って答えたのだった……。

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