決勝戦を目前に、仙道は不敵な笑みでジンを見つめていた。どうやら彼の興味は、ジンのみに集中しているようだ。しかし、そんな彼にバンが提案した決勝戦の作戦は、あまり面白くないものだった。
「なに? 俺がフェンリルを?」
思わず聞き返した仙道に、バンは頷く。
「ジンたちは恐らく、パンドラとプロトゼノンを前に出して、フェンリルでバックアップをとるフォーメーションを選んでくる。仙道には、ナイトメアのスピードを使って、フェンリルを止めて欲しいんだ」
「何で俺がそんなことを……」
ジンとのバトルを望む仙道は気に食わなかった。
明らかに不機嫌な彼へ、バンは再度の説得を試みた。
「もちろん勝つためさ! 決勝戦は3対3のチームバトル。チームワークが何よりも大切なんだ。ちゃんとフォーメーションを組んでいかないと」
「嫌なら出るな!」
渋る仙道を、郷田が突っぱねた。それがますます仙道の癇に障る。
「ふん、俺がいなきゃハッカー軍団にやられてた奴が」
確かに結果的にそうなっただけに、彼の切り返しによって郷田まで一気にしかめっ面になってしまう。
「何だと!?」
「止めろよ、二人とも! 今“チームワークが大事”って言ったところだろ?」
「バンくんの言う通りです、落ち着いてくださいな!」
バンとが割って入るも、先のタッグバトルが嘘のような険悪さで二人はそっぽを向くばかり。作戦会議どころか、ただの会話すらまともにしてくれそうにない。
「本当に大丈夫かな……」
決勝戦開始のアナウンスが聞こえたのは、バンのそんな呟きの後だった。
招集がかかり、バンたちがステージに上がっていく。
彼らに向けては声援を送る。
「応援してますわ。バンくん、郷田くん、……仙道くん」
「ありがとう、!」
「おう、行ってくるぜ」
バンと郷田は応じてくれたが、仙道は何も言わない。だがちらりとに視線を送り、小さく微笑んでくれた……ような、気がした。たとえ勘違いや思い込みであろうと、それだけでの不安は霧散し、幸せに包まれる。
ステージ上で向かい合うバンチーム、ジンチーム。両者を確認した角馬の実況が始まる。
『さあ、両チーム出揃いました! このバトルに勝利し、マスターキングへの挑戦権を手に入れるのは果たしてどちらなのか? レディ――……』
互いのチームがLBXを出撃させる。その際に仙道はひっそりとタロットを取り出した。バトル前の彼の習慣、占いだ。
「運命の輪の逆位置……誤算?」
あまり良い結果ではない。仙道は目を細めるも、深く気にすることなくタロットカードをしまう。一体“誤算”とは何を指しているのか――。戦いが始まれば、すぐに判る。
実況の合図と共に決勝戦の幕が上がった。
スタートするや否や、バンと郷田、そしては困惑した。何故かジンのLBX・プロトゼノンが踵を返し、バンたちから離れるように走り出したのだ。
「バンくんの読みが外れましたの、まさか……!?」
戸惑いながらは画面を食い入るように見つめていた。もしや、対戦相手であるアミかカズヤが、バンの考えを読み取って対策したのだろうか? 二人はバンと長く深い付き合いの仲間同士、友人の作戦を見抜いていたとしても不思議ではない。特にアミの勘は鋭い。鈍感なは、アミの思慮深さと勘の良さに度々憧れている。
フォーメーションを作るとばかり思い込んでいたバンと郷田が戸惑っている間に、仙道が突出した。駆け出すナイトメアは、真っ直ぐにプロトゼノンを追いかけていく。
「仙道!?」
バンか郷田、はたまた両者か。チームメイトの声に、仙道は返す。
「予想は外れた。バン、俺の好きにさせてもらう! 海道ジン、お前の相手はこの俺だ!」
――誤算ってのは、このことかい。先の占いを思い返しながら、仙道は笑う。
もうこうなっては誰も彼を止められない。それでもバンは必死に仙道を制するが、聞く耳持たず。ナイトメアとプロトゼノンは遥か遠くへと駆けて行ってしまった。
それを見て笑うアミの姿をは認めた。やはり、アミはバンの作戦を予測していたのだ。
ナイトメアを追いかけるオーディーンの道を、フェンリルの射撃が遮る。
「バン、郷田! 二人の相手は私たちよ!」
立ちはだかるパンドラとフェンリル。二機を見つめて、バンも察した。
「俺たちを分断する作戦だったのか……」
答える代わりにアミは、ホープエッジを構えたパンドラを駆る。
「行くわよ!」
「来い!」
バンと郷田は、揃ってアミの挑戦に答えた。
――彼等から大分離れた、岩山の目立つ入り組んだ場所。そこでナイトメアとプロトゼノンは対峙していた。
「海道ジン。お前とは一度、戦ってみたいと思っていた」
笑う仙道に対して、一切表情を変えないジン。
そのジンの冷静さも、仙道の予想範囲内だ。不敵な笑みを深めながら、彼はナイトメアを突進させる。
「秒殺の皇帝の力がどれほどのものか……。見せてもらおうか!」
残像を残しながらプロトゼノンと並走するナイトメア。仙道の得意とする、LBXのスピードを極限まで活かした攻撃が既に始まっていた。
は拳を握りしめながら、仙道をナイトメアに心の中で声援を送る。
追われるプロトゼノンが立ち止まると、ナイトメアの姿はない。ジンがナイトメアを見つけるより先に、ナイトメアはプロトゼノンの背後から飛びかかってみせた。しかし、ジンはこの奇襲に素早く反応した。ナイトメアの打撃を、自身の武器・オベロンを盾に防御する。まさに紙一重、恐るべき反射神経だった。
ジンの的確かつ冷静なLBX操作技術に、会場が歓声をあげる。
「なにっ!?」
仙道が目を見開く。
ジンは眉ひとつ動かさずにプロトゼノンを操作していた。お返しだと言わんばかりの攻撃が始まる。
「返り討ちにしてやるよ!」
襲撃に応じるナイトメア。「ファイトですわー! 仙道くんっ!」は拳を振り上げ、彼へ全力のエールを送る。
だが、ジンの強さは想像を上回っていた。最初は攻撃を的確に防いでいたナイトメアだが、次第にかわすのが精一杯になる。
――早いっ!?
仙道の額を一筋の汗が伝い落ちる。プロトゼノンの攻撃は素早く、そして重たい。いくらガードしても、着実にナイトメアのLPは削られていった。
ジンの視線はCCMに注がれたまま微動だにしない。
『ナイトメア、プロトゼノンの攻撃をかわすのが精一杯!』
「仙道くんの魔法のごときスピードに追い付くなんて、凄すぎますわ……ジンくん」
は不安を抱えた胸を押さえるように両手をあて、呟く。
仙道だけでなく、バンと郷田も苦戦を強いられていた。
高台に隠れ、オーディーンを射撃するフェンリル。身軽さを生かしてハカイオー絶斗を翻弄し、連撃を決めるパンドラ。戦いの流れは完全にジンチームへと傾いている。
不安が最高潮に高まったその時、の鼓膜を角馬の実況が突いた。
『ナイトメア、追い詰められたー!』
ナイトメアの置かれている状況は最悪だった。背後には岩山、逃げ場は無い。
「ああっ、こ、このままじゃあ……! でもでも仙道くんならきっと……!」
自分が慌ててもどうしようもないことは判っていても、は自分を押さえられなかった。
プロトゼノン渾身の一振りが、ナイトメアへと襲いかかる。が、寸でのところでナイトメアは、残像を残しての回避を行う。そのままナイトメアは高く宙に飛び上がり、プロトゼノンの遥か後方へと着地した。
「……面白くなってきた!」
の心配は杞憂だったようだ。仙道の顔には、鋭さを秘めた凄みある笑みが浮かんでいた。その笑みを見て、は紅潮する頬をばっと押さえる。
「せ、仙道くんのナイススマイルいただきましたわー!!」
きゃあきゃあと、控えめな声と共に舞い上がるを、テツオやリコたちは心配を通り越して呆れ気味に見守る。その生ぬるい視線ももろともせず、軽く跳ね飛びながらははしゃぎ続けている。
「今のがナイススマイルでごわすか?」
「の感性は独特だから仕方ないねぇ……」
確かに仕方ない。気を取り直した少年少女たちは再びモニターへと視線を移す。
ジオラマ内では、“箱の中の魔術師”の連撃が炸裂していた。ナイトメアがプロトゼノンの四方八方から攻撃を仕掛け、ジンは全て防いで見せる。表情を変えることなく、集中を切らすこともなく冷静に行われる防御。
「たまりませんわ、イリュージョン乱舞ですわ、これは一生モノですわぁ!! ブッ飛ばしちゃってください仙道くんー!!」
ナイトメアの攻撃が繰り出される度に、のテンションもヒートアップしていく。絶え間ない熱のこもった声援が届いているかどうかはともかく、仙道は好調な攻めを見せていた。
ナイトメアと分断されたオーディーンとハカイオー絶斗は、未だパンドラとフェンリルの連携に頭を悩ませていた。
ハカイオー絶斗とパンドラの相性は最悪だ。大振りなハカイオー絶斗の攻撃を身軽なパンドラが容易くかわし、カウンターを決めていく。
「ちょこまかと!」
攻撃を決められず苛立つ郷田を見て、アミは小さく笑っている。オーディーンもフェンリルの狙撃によって上手く動けずにいた。ハカイオー絶斗へ加勢しようにも、フェンリルがそれを許さない。精密な射撃がオーディーンを幾度となく阻む。
――ナイトメアとプロトゼノンのバトルは、佳境へと向かっていた。
仙道の額に滲む汗が増えている。
(俺のスピードにここまでついてくるとはな……。だがそれも此処までだ!)
素早くCCMを操作しながら、彼は叫ぶ。
「決めるぜ!」
猛烈な勢いで走り出したナイトメアが三体に分身、そのままプロトゼノンを包囲する。“箱の中の魔術師”の本領、イリュージョンだ。
「遂に来たー! 仙道くんのイリュージョンッ! これぞ“箱の中の魔術師”ですわーっ!」
『遂に出たー! 箱の中の魔術師、仙道ダイキのイリュージョン!』
熱の入った角馬の声と、のとびきりの歓声が重なる。とてつもない賑やかさだ。彼女の周りにいるリコたちが一瞬耳を塞ぎたくなるほどにその叫びは大きかった。
笑う仙道のナイトメアが完全にプロトゼノンを囲み、逃げ場を塞ぐ。だが、ジンの表情に焦りはない。
『海道ジン、イリュージョンバトルを破ることができるか!?』
「破れるものか!」
CCMを操作しながら、仙道が高笑いした。鍛えあげた自身の技術と、この日までに完全な調整を済ませた新たな相棒。仙道の態度は、大きな自信の表れだった。
その姿が、の目には一際輝いて見える。
「本当に大好き、仙道くん……」
溜め息と一緒に溢されたその呟きはとても小さかった。誰にも聞こえない、にしか聞こえないものだった。
それで良いのだ。この本当の気持ちは、自分のなかで抱えて行くのだと彼女は決めた。当人に伝えるなどもっての他。ひとりのファンであり、ひとりの友人として、これからも関係を築いていく。それすら贅沢な願いなのかもしれないが、このぐらいの我が儘は許してほしい。はそう祈った。
イリュージョンを繰り広げるナイトメアは、紫の残像を残しながら何度もプロトゼノンを襲っている。そのどれもを、プロトゼノンはその身で受けていた。防御が間に合わないのだろうか。
そうして遂に、とどめと言わんばかりのナイトメア三体の一撃が放たれた。幻影を纏うナイトメアが武器を振り上げ、プロトゼノンを打ち上げる。
さすがのプロトゼノンも無防備となってしまう。そこへ間髪置かずに襲撃する三体のナイトメア。
相変わらず、ジンの表情は変わらない。まるで何かを見極めようと集中しているようだった。
それが何かまでは、素人のには全く判らなかった。だがこの状況でもあそこまで冷静にいられるというのは、勝負を諦めていない証。何となく胸が急いた。
――自分にはただ、祈ることしかできない。……いつでも、そうだ。
興奮の中に生まれた何時もの劣等感を、は気づかぬふりでバトルに集中した。
フェンリルは相変わらず高台からの後方支援に専念している。その銃口が今はハカイオー絶斗に向けられており、足止めを食らっている。
「今度はあっちからか……」
「一旦引こう。体勢を建て直すんだ」
「おう!」
バンのオーディーンと合流したハカイオー絶斗が後退していくのを、アミがただ見ているはずはなかった。
「逃がさない!」
岩山から飛び降りたパンドラが奇襲を試みる。しかし、ハカイオー絶斗が武器を振り下ろして巻き起こした粉塵が視界を塞ぐ。……結局、パンドラは二機を見失ってしまった。
「もーう、あと少しだったのに!」
そう言ってむくれる姿は可愛らしい少女そのもの。とてもあのパンドラを機敏かつ果敢に操っているとは思えない。
無事に後退できたオーディーンたちは、岩影に隠れながらパンドラの様子を窺っていた。
パンドラから目を離さずに、バンは郷田へ尋ねる。
「郷田、ハカイオー絶斗の調子は?」
「参ったぜ……。ホープエッジの攻撃とはいえ、あんだけ食らうとダメージは馬鹿にならねえ。ったく、ハカイオー絶斗の一番苦手なタイプだ」
答える郷田の顔は渋い。
苦戦する二人をよそに、隣では仙道が笑いながらプロトゼノンへ攻撃を繰り返している。
「ほらほらどうしたぁ!? それでも秒殺の皇帝かよ!」
まるで出会って間もない頃の仙道に戻ったかのようだ。狂気じみたその高笑いが、彼の好調ぶりを示している。
勢いに乗ったナイトメアが、分身たちと共にプロトゼノンへ迫っていく。
『ナイトメアの攻撃に、プロトゼノン全く手が出ない! まさに悪夢のようだ!』
「素敵ですわ仙道くん! ダークヒーローのような語り尽くせぬ魅力はまさしく魔力! ナイトメアの名に相応しき猛攻、連撃、スピード! たっまりませんわー!!」
実況とモニターの様子に、はまたもや歓声をあげる。バトル前はバンチームのチームワークを憂いていた彼女はどこへやら、すっかり仙道のバトルに夢中だ。
しかしジンの表情は変わらず、何かを窺っているかのように沈黙を保ったまま。
それに気づいていないらしい仙道を横目に、郷田は舌打ちしていた。
「好き勝手やりやがって……。バン、どうする?」
しかし郷田は苛立ちを押さえ、しっかりとバンとの連携に配慮していた。
郷田の思いに答えるように、バンが口を開く。
「フェンリルを何とかしないと……」
呟き、思案しながらバンはフィールドを見渡す。そして目に留まったのは、三日月のように抉れた岩山の頂上。じっと岩山をを見つめ、バンは――閃いた。
「そうだ! 郷田っ!」
輝く少年の瞳と見て、郷田はすぐにバンの閃きに乗ると決めた。
この輝きと共にバンが見いだした道はいつも正しいことを、身をもって知っていたからだ。
◆◆◆
パンドラとフェンリルは、見失ったオーディーンたちを探すために高台に上っていた。
「いないわね……」
「何処行ったんだ?」
アミとカズヤは注意深く周囲を窺っていたが、影ひとつ見当たらない。適度な岩場と走りやすい草原、実にスタンダードなジオラマだ。故に隠れやすくもあり、見つけやすくもある。ここまで慎重に隠れているとなると、オーディーンたちの消耗は相当激しいのだろう。
間近の勝利に向けて、無意識のうちに二人は急いていた。
……そのときだった。不意に岩影から、オーディーンが飛び出してきたではないか。
「カズ!」アミの呼び掛けに、「任せろ!」とカズヤはすぐさま応じた。
射撃体勢に入るフェンリル。しかし岩に度々オーディーンの姿が重なり、なかなか照準が合わせられない。
「くそっ、ここからじゃ狙いづらい……。よし、あそこからなら……!」
そう言ったカズヤとフェンリルが見上げたのは、頂上が三日月のように抉れた岩山だった。
軽やかに岩山を登り、頂上に着いたフェンリルが再び辺りを見渡すと、今度は別の岩影からハカイオー絶斗が姿を現す。
ハカイオー絶斗とフェンリルの間に障害はない。
「よしっ!」
意を決した郷田により、ハカイオー絶斗の必殺ファンクション・超我王砲が発動する。超我王砲の照準はややずれてフェンリルから外れ、横の岩肌へと直撃する。
空振りに終わった攻撃を見て、カズヤは笑った。
「ドコ狙ってんだ!」
「危ない、カズ!」
「あっ?」
だがアミは、ハカイオー絶斗の本当の狙いにピンと来た。咄嗟にカズヤへ注意を促すも、余裕に気を緩ませてしまった彼の反応は一歩遅い。
三日月の岩が超我王砲の直撃によって揺れ始める。亀裂は瞬く間に広がっていき、岩は、折れた。
超我王砲の威力に耐えきれなかった三日月岩の塊が落ちていく。三日月の岩の先端は――フェンリルの真上。
「うわあああっ!」
フェンリルを巻き込みながら、三日月岩はバラバラに砕けていく。凄まじい土煙が上がった。落石などという生易しいものではない。一種の災害じみた岩の崩壊の後には、石たちの山が出来上がったのだった……。
もちろん、フェンリルの姿は無い。石の山から抜け出してくる様子もなかった。
『おおっと、ここでフェンリル、ブレイクオーバーか!?』
「やったあ!」
バンがガッツポーズを決め、郷田が作戦の手応えに拳を握りしめる。目には目を、歯には歯を、連携には連携を。一度は作戦を読まれて窮地に陥った彼らの、連携返し。
息ぴったりなバンと郷田の姿を、ミカやたちも輝く瞳で見つめ、賑やかに称賛する。
「やった……郷田さん」
「すごいですわ、バンくん郷田くん! 作戦を知られて尚、活路を見いだすその意気込みたるやすさまじいですわ!」
「の勢いもすさまじいでごわす」
バンたちの逆転は、仙道にも大いに刺激を与えたようだった。
彼らを横目に笑った仙道は、素早くCCMを操作した。
「こっちも決めるか!」
何度目か判らないナイトメアの幻影たちが、プロトゼノン目掛けて飛びかかる。
「とどめだ!」
叫ぶ仙道。迫るナイトメアたち。
しかし――プロトゼノンは、一点を目掛けて自身の武器・オベロンを突き出した。
オベロンが捉えたのは、一体のナイトメアの胸部。
「何っ!?」
仙道は驚愕に声を震わせた。
攻撃されたことにより分身は焼失し、ナイトメアは無様に吹き飛ばされる。土煙を上げながら地面へ強か背中を打ち付け、転がっていく。
それが意味することとは、つまり――。
「ジンくんは、分身と本体の見分けがついて……その本体を攻撃したということ!?」
会場に沸き起こる歓声に反して、は狼狽えていた。
仙道のイリュージョンは完璧だった。どれもがまるで実体を持っているようにしか思えなかった。ハッカー軍団の実力者ですら、仙道のスピードは捉えきれずに翻弄されていた。それほどまでに磨き上げられた“箱の中の魔術師”の技を、“秒殺の皇帝”はどう見抜いたと言うのか。
仙道もまた、ステージ上で狼狽える。
「そんな……そんな馬鹿な……」
言葉を紡ぐことすらままならない様子の仙道へ、初めてジンがCCMから顔をあげてみせた。
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