出てくるなり歓声を一身に浴びるマスターキング。
自信たっぷりの子供の顔を眺めながら、郷田は毒気を抜かれた様に溢す。
「どんな奴がキングかと思えば、5歳のガキかよ……」
マスターキングが眉を吊り上げた。「かっちーん!」顔を真っ赤にさせながら、少年は抗議する。
「ガキじゃない! もう5歳だっ!」
かと思えば、すぐに得意げな笑みへと戻り、腕を組んで踏ん反り返った。
「君たちどうせ、オタクロスにそそのかされてここに出てきたんだろ? インフィニティーネットに散らばった大切なデータを回収してほしいんだよね?」
態度だけ見れば確かに子供だったが、その発言の内容までは“子供だから”で流せるものでは無かった。
どうして自分たちしか知らないはずの情報をあの少年が知っているのか……。流石のも呑気に見ているわけにはいかず、ステージ下で動揺してしまう。
直接マスターキングと対面しているバンは、すぐに聞き返した。
「なんで知ってるんだ!?」
「ボクが知らないことなんてなんにもない。アキハバラのキングなんだから」
子供とは思えないほど、不敵な笑みが浮かんでいる。オタクロスいわく、この少年が「オタクロスから卑怯な手でキングの座を奪った」らしいが、詳細までは聞かされていない。幼い子供だと舐めてかかっては痛い目を見るのことだけは間違いなさそうだ。
緊迫していく会場に、角馬の声が響く。
『これは新たなるアキハバラキングの名を賭けたタイトルマッチ。現在のキング、マスターキングに挑むのは山野バンチームです!』
マスターキングとの決戦の舞台は、氷河のジオラマ。まるで南極の風景をDキューブ内にそのまま縮小して詰め込んだような風景だ。
マスターキングの後ろに控えるハッカー軍団のメンバーらしき男性二人組へ向けて、マスターキングの母親が呼びかける。
「君たち! マー君のサポートは頼んだわよ」
「は! マスターキング様の為に」
きちっと背筋を伸ばして二人組が答える様子を、郷田と仙道がじっと見つめていた。
「ハッカー軍団がキングの命令に従うってのは、本当のようだな」
「自分の意志ってモンが無いのかねぇ」
番長たちのことなど意に介さず、次いで彼女は我が子へ声を掛けた。
「マー君。ゲームはいつも通り5分までよ」
「大丈夫だよ、ママ。こんなやつら楽勝だよ」
胸を張るマスターキングの言葉に『マスターキング、早くも勝利宣言だ!』と角馬が続く。観客のキングコールは一向に止まない。
そんな中、無駄とは思いつつも、は声を張り上げる。
「バンくんチーム、ファイトッ、ですわー! いけいけですわー!」
応援したいという気持ちは伝わってくるが、気持ちばかりが先行して上手く形になっていない。間抜けなの声が届いているのか、「本当に馬鹿だねぇ……」と仙道が嘆息するのを、バンと郷田は聞いた。
確かに間抜けというか残念というか、何処かずれている。だが、それがの個性だ。
会場の殆どがキングへ声援を送る中、アミやカズヤたち、そしてのように、自分たちを応援してくれている人たちも間違いなく存在する。それだけで十分頼もしいとバンは感じていた。
キングコールと賑やかしい、どちらの声に耐えかねたのか、カズヤは耳を塞いでいる。完全なアウェーだ、と彼はぼやいたが、バンたちは気にしていないようだ。仙道は楽しげに笑っているし、郷田も「ま、言わせとけ」と余裕たっぷりである。おかげでバンも、解読コードのデータを回収するためのこのバトルへの意気込みを改めて強く固めることができた。
ひとしきり拙い声援を送り切ったも、何故かこの状況を眺めて笑っている。
「さっきまであんなにうる……賑やかだったのに」
ミカが呟くと、は笑みを深めた。
「ふふ、すっかりキングムードな会場の空気をぶち破る仙道くんたちの勇姿を想像するだけで奮えてきましたの。こういうのはぶち壊してナンボですわ」
「って、結構危ないタイプ……?」
仙道を好きだと言うだけあって、実はにも彼のようにトリッキーな素質が宿っているのかもしれない。それがいつ開花するかは判らないが、その時の為にもとは今後も友好的な関係でありたいとミカは胸中で祈った。
ジオラマに、ハッカー軍団のLBX・グレイメイドが二機、マスターキングの太陽神アポロカイザーが降り立つ。続いて、ナイトメア、ハカイオー絶斗、オーディーンも氷上へと出陣した。両者のLBXが出揃ったのを確認した角馬が、深く息を吸い込み、盛大な合図として吐き出す。
『バトルスタートォ!』
一番にナイトメア、ハカイオー絶斗が走り出した。
迎え撃つようにグレイメイドが前進し、それを認めたアポロカイザーは氷山の頂上へと跳躍する。武器を地面へ突き刺し、そこへ両手を置き、高みの見物を決め込む。何と余裕綽々な姿だろう。
ハカイオー絶斗が、ランチャー装備のグレイメイドに斬りかかる。が、グレイメイドは氷の上を滑りつつ後ろへ移動し、飛び退る。攻撃を空振り、ハカイオー絶斗は思い切り滑ってしまう。
「何っ!?」
郷田のハカイオー絶斗がそのまま氷山へと突っ込んで行った。砕けた氷が煙のように舞い上がる。
一方ナイトメアも、飛び上がりながらもう一体のグレイメイド目掛けてハンマーを振り下ろしていた。だがやはりこちらのグレイメイドも、滑りながらゆるっと余裕で回避してみせる。
空振りに終わった武器を地面に突き立てながら身を翻し、ブレーキをかけるナイトメア。後ろ向きでナイトメアズソウルを氷に食い込ませ、勢いに耐えるその姿すら、にとっては魅力的に映る。当の仙道はというと、不満げに舌打ちをしていた。
二機をかわしたグレイメイドたちが、両手銃とランチャーでオーディーンに襲いかかる。オーディーンはリタリエイターを盾に凌ぐも、流石にランチャーの直撃には耐えきれず吹き飛ばされてしまった。背中を氷の地面へ強か打ち付ける羽目になる。
「あいつら、このフィールドに慣れてる……!」
「なめるなァ!!」
唇を噛み締めるバンの横で、郷田が吠えた。
叫びながら突進するハカイオー絶斗、無言でグレイメイドに迫るナイトメア。
グレイメイドたちは滑りつつ、オーディーンから彼らへと向き直る。まるでスケートを楽しんでいるかのような優雅さだ。
ハカイオー絶斗、ナイトメア、両者共にまた攻撃は空振りに終わった。ナイトメアに至っては、グレイメイドとすれ違いざま、背中に銃の連続射撃を食らい、倒れ込んでしまう。
体勢を崩したハカイオー絶斗には、ランチャーが被弾した。吹き飛んだハカイオー絶斗のもとへ、オーディーン、ナイトメアが合流する。
苦戦を強いられる友人たちを見つめ、カズヤが眉を顰めた。
「ハカイオー絶斗もナイトメアも、氷の上じゃ十分な能力を発揮できないか……」
「見て! アポロカイザーは全然動いてない!」
アミがそう言ってモニターを指差した。まるで彼女の声を待っていたかのようにモニターいっぱいにアポロカイザーの姿が映し出される。
氷山の上からバトルを見下ろしながら、マスターキングは笑う。
「ボクが攻めたらすぐ終わっちゃうからね」
キングの意志に従うように、ハッカー軍団の操るグレイメイド二機は、バンたちを取り囲むように円を描いて周囲を走っていた。絶え間なく襲い来る銃弾を防いだり弾いたり……。フィールドに不慣れなバンたちにはそれが精一杯だった。
『山野バンチーム、翻弄されているぅ! このまま一方的に終わってしまうのかぁ!?』
「やらせるかよぉ!!」
ランチャーの弾を弾き飛ばしたハカイオー絶斗が、郷田の怒号と共に動き出す。弾幕の隙を縫って突出してみせた。今度こそ、とまた武器を振り下ろすも、グレイメイドは難なく跳躍して回避してみせた。
おろおろとは画面を見つめ、祈るように両手を握り締める。
「も、もう少しですのに……!」
「相手が下がれば攻撃、出てくれば引く。統制のとれた動きだ」
僅かに険しいものを滲ませた声でジンが冷静に分析する。
仙道が舌打ちをしながらナイトメアを操り、ハカイオー絶斗の体勢を反転させた郷田が「いい気になってんじゃねぇ!」とグレイメイド目掛けて怒鳴る。
図らずしてナイトメアとハカイオー絶斗が、グレイメイドたちへ挟み撃ちを仕掛ける形になった。
「こ、今度こそ!」
「……いや、少し遅い」
が期待に声を上げ、それをジンは静かに否定した。
ハッカー軍団の二人組はアイコンタクトを交わすと、CCMのボタンを素早く叩いた。
背中合わせに合流したグレイメイドが、ハカイオー絶斗とナイトメアを自分たちへぶつかる寸前まで誘導していく。そして直撃するかと思われた瞬間――、一気に飛び退いた。
番長たちが、見守るたちが、息を呑む。
あわや激突……かと思われたが、ハカイオー絶斗とナイトメアは咄嗟の判断でお互いの武器を翳して激突を防ぐことに成功した。絶・破岩刃とナイトメアズソウルがかち合い、派手な音がする。「かっこいいですわぁっ!」その音より派手な、熱のこもったの声援をバックに、睨み合いに近いアイコンタクトを交わした彼らは、武器を弾き合って再び氷上を滑り出す。だいぶこのジオラマにも慣れてきているように見えた。ナイトメアもハカイオー絶斗も、動きが滑らかになっている。
「必殺ファンクション!」
二人の番長が、揃って叫んだ。
ナイトメアのアタックファンクション・デスサイズハリケーンと、ハカイオー絶斗のアタックファンクション・超我王砲が、同時に発動する。……これが見事に決まった。デスサイズハリケーンの直撃で吹き飛んだグレイメイドは氷山に叩きつけられ、超我王砲が直撃したグレイメイドは大爆発に呑まれて行く。
どっしり構えるハカイオー絶斗の隣に、ハンマーを肩に舞い降りるナイトメア。
何て絵になる光景だ。はたまらず諸手を上げた。
「さ、ささささ……最高のツーショットですぅ!!」
感極まって半泣きになっているの顔を、「だ、大丈夫か?」とカズヤが心配して覗き込んでいる。
ステージ上でも、バンが番長コンビの必殺技に感激していた。
「やった!」
得意気に目を閉じ笑う仙道。「見たか、この野郎!」嬉しそうに言い放つ郷田。
しかし、仲間を二人倒されたというのに、マスターキングの笑みは消えない。
「思ったよりやるね、でも……」
沈黙したままのハッカー軍団がCCMを操作し出した。ブレイクオーバーしたかと思われたグレイメイドたちは、ギリギリのところで必殺技を耐えていたのだ。最後の力を振り絞って動き出したグレイメイド二機が起こした行動は――ナイトメアとハカイオー絶斗に取りつき、動きを封じること。
何事かとバンが狼狽え、仙道が目を見張り、郷田が声を荒げる。
「何のつもりだ!?」
答える代わりに、太陽神アポロカイザーが動き出す。地面に突き立てていた剣を抜き、ナイトメアたちの前へと降り立った。アポロカイザーの眼光が、ぎらりと光る。
「必殺ファンクション!」
無邪気なマスターキングの声に、郷田と仙道が耳を疑った。
「危ない!」危険を察知し、バンはオーディーンを走らせた。相手と仲間の間へ、オーディーンが颯爽と滑り込む。
太陽神アポロカイザーのアタックファンクション・神速剣が発動したのは、その直後であった。
まさしく神速の剣撃が、幾度となくオーディーンたちを襲う。黄金色の衝撃波を、オーディーンはリタリエイターを回転させて相殺しようとする。が、全ては防ぎきれない。ナイトメアたちに取り付いていたグレイメイドが衝撃に耐えきれず爆発し、今度こそブレイクオーバーしたのが見えた。
アポロカイザーの最後の一振りが、氷を粉々に砕き、粉塵のように舞い上げる。いや、剣撃によって氷が大量の蒸気と化したのだろうか? どちらにせよ、その凄まじさたるや、白く舞い上がった粉塵がフィールド中を包まんという勢いだ。
……アポロカイザーの必殺ファンクションを凌いだオーディーンの機体には、損傷の為にバチバチと電気が走っていた。挙句、一際激しい火花の知った左腕が切り落とされ、地面へと転がってしまったではないか。
「ああっ!」
思わず悲鳴をあげるバンと負傷したオーディーンたちの痛々しい姿に、アミたちも騒然とする。
膝をつく三機を見て、叫びかけたは慌てて両手で口を覆う。
CCMからLBXの状態を確認した仙道たちの表情が曇る。
「ライフが半分に……」
「なんて必殺ファンクションだ……」
メンバー中では一番の耐久値を誇るハカイオー絶斗ですら、オーディーンのフォローが無くては危うかったかもしれない。
圧倒的なアポロカイザーの力を、角馬が称える。
『恐るべきパワー! 太陽神アポロカイザー! 味方を犠牲にして、必殺ファンクションを決めたーッ!』
「ボクがキングなんだあ!」
アポロカイザーのアイが再び輝いた。動き出したキングのLBXは、ハカイオー絶斗、ナイトメア、そしてオーディーンへ一撃ずつ斬りかかる。その音はもはや、剣撃というより打撃に近い。
吹き飛ばされた満身創痍のオーディーンを指差し、マスターキングは笑い声をあげる。
「あはははは! よわぁーい!」
「ちっ……、だったら!」
・焦るバンが、必殺ファンクション・ライトニングランスを発動した。青い閃光が槍先に集中し、一気に放たれる。
――決まって!
そうが祈るも、アポロカイザーは余裕たっぷりに飛んで回避してみせた。空振りに終わった衝撃波が、氷山の一部を砕く。
「くそっ!」
「だめだよ。必殺ファンクションはこんな風に使わなくっちゃあ!」
握り締めた拳を震わせながら悔しがるバンを見て、マスターキングは無邪気かつ無慈悲な攻撃をもう一度繰り出した。
アタックファンクション・神速剣が再びバンチームを襲う。猛烈な連続攻撃に、なすすべないバンたち。もうほとんど動くことができないようだ。三機ともフレームの彼方此方がひび割れ、火花が散っている。
無抵抗のバンたちを見て、マスターキングはわざとらしく首を傾げた。
「あれれ~? もう終わりかなぁ?」
あまりにも対戦相手を舐め切ったマスターキングの態度を見て、は憤慨した。柳眉を逆立て、怒りのあまり顔を真っ赤にさせている。
「なんですの、なんなんですのっ、あのお生意気な態度はっ! 子供だからってあんまり生意気が過ぎるんじゃありませんこと!?」
「仙道もかなり生意気なタイプだと思うんだけれど……」
アミの指摘は、ヒートアップしたの耳に届かない。
ですら苛立つマスターキングの言動を、誇り高い仙道が黙って聞いていられる筈が無かった。
「黙れぇっ!!」
激しい仙道の怒号に、ナイトメアズソウルをぶん投げるナイトメア。武器は勢いよく回転し、アポロカイザーの右肩に命中した。ガンッという鈍く重い音がした。それを見たマスターキングが「ん?」と瞬きをする。……が、次の瞬間には苛立たしいほどの満面の笑みを浮かべてみせた。
「おめでと~。初めて当たったねぇ」
ぱちぱちと拍手をしながら言う少年に、更に仙道は業を煮やす。
「わざと避けなかったのか……!」
「ふざけやがって……!」
番長らの剣幕に怯む様子は一切ない。やれやれ、と肩を竦めたマスターキングは、CCMを握り直した。
「あ~あ。弱すぎて飽きてきちゃった。そろそろ終わりにしよう」
またあの必殺ファンクションが来る――。バンたちの緊張は張り裂けんばかりに高まっていた。
もう一度まともにあの技を食らえば、確実に自分たちは負ける。
何か弱点は無いのか? バンは太陽神アポロカイザーを見据えながら知恵を絞る。
その時ふと、アポロカイザーの目が光り、剣を構えたのが気にかかった。
――ん? そう言えば今さっきまで、あのLBXの目は光を失っていた……?
「準備はいい?」
にじり寄る太陽神アポロカイザー。
「バンくん……」
「バン……」
ジン、アミが呟き、カズヤは緊迫のあまり沈黙してモニターを凝視している。
「……ん?」
じっとアポロカイザーを見つめるバンの目が、その後ろに転がるナイトメアズソウルへ向けられた。バンの脳裏に、先程、アポロカイザーの肩にあの武器がぶつかったのシーンが蘇る。
――まさか!
ハッとしたバンは、郷田と仙道を顧みた。
「郷田! 仙道!」
確信は無いが、可能性として考えられること、そこから見出した解決の糸口を、バンは早口で二人に告げる。
それを聞いた郷田は、少し不安げにバンへ聞き返す。
「本当なんだな……」
「うん、間違いない」
仙道は無言だ。しかし、バンの提案に乗った、という意志を表すかのようにオーディーンの前へとナイトメアを進ませる。
「相談したって無駄だよ」
今にもマスターキングは攻撃に移りそうだ。
仙道が舌打ちをする。武器を失ったかと思われたナイトメアが、新たにハルバード状の武器を取り出し、盾代わりに翳す。その武器を見て、は目を瞠った。
――ランドグリース……!
アキハバラキングダムに向けての特訓の最中、彼女が半ば強引に彼に押し付けた武器だ。この戦いに自分が送った武器を持って挑んていてくれたことに、は感動を抑え切れなかった。
――ありがとう、仙道くん。
ようやく一緒に戦えているような、そんな思いがした。少女は目元に溢れてきたものを素早く指先で拭うと、再びモニターへと集中した。泣くにはまだ早い。彼らが勝利を手にする時までとっておかなくては。
ナイトメアの前にはハカイオー絶斗が立ち、二機はオーディーンを庇うような姿勢をとってみせた。
仙道が低く唸るような声で漏らす。
「迷ってる暇はない……!」
「ああ、そいつに賭けた!」
仙道と郷田に、力強くバンは頷いて応じる。
次の瞬間には、ハカイオー絶斗・ナイトメア・オーディーンがそのままの陣形で走り出していた。
「うおおおおおっ!!」
三人の少年の渾身の叫びが重なる。
「無茶だ!」
「トドメだぁっ!」
血相を変えてカズヤが叫んだ後に、マスターキングは神速剣を発動した。
武器とその身を盾にしてオーディーンを庇いながら、ハカイオー絶斗とナイトメアは押し進む。
「あははは、あははは! こわれちゃえ~♪」
マスターキングの笑い声が最高潮に達した頃、最後の一振りが決まる。白い粉塵が再び巻き起こり、オーディーンたちを包んで覆い隠す。
攻撃を終えたアポロカイザーが、悠々と氷上へ舞い降りる。
白塵が晴れ、モニターに映し出された光景はあまりにも痛々しかった。
くずおれるナイトメア、ハカイオー絶斗。ヒビだらけの両機はゆっくり倒れ込む。背後に庇われていたオーディーンの損傷も激しい。
「そんな……」
の胸中を満たしていた暖かな感情が一気に凍えていく。
ぴくりとも動かないナイトメア。そしてハカイオー絶斗。
そして、傷だらけのオーディーンもふらりと倒れ込む――かと思われた。
ぐらりと傾いた体を、寸でのところで右足に力を込めて、オーディーンは耐える。しっかりと地を踏みしめながらオーディーンは……バンの機体は、しっかりと顔を上げ、アポロカイザーを見据えた。
オーディーンは、倒れなかった。
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