少女は叫び続けた。
感情は焼け切れ、抜け落ちた。
少女は力を振るい続けた。
心は尽き、何も判らなくなっていた。
ただただ叫び続けた。
ただただ振るい続けた。
獣のように。
気が付けば少女は、燃え盛る屋敷を眺めていた。
どうしてこうなったのか思い出せなかった。
それでも振り返ろうとすれば激痛が脳を掻き回した。あまりに痛むので、彼女は思い出すことを諦めた。
少女の手には血塗れの鎌があった。よくよく見れば身体中が朱に染まっていた。乾ききっていなかった。あちこちに土が掛かって、混ざって、更に汚かった。べたついて気持ち悪かった。
視線を落とすと、地面があった。何故か一ヶ所だけ不自然な土の山があり、それを見ると少女の胸は軋んだ。
“ごめんなさい”
自然と溢れた言葉は、火の爆ぜる音に掻き消された。
少女は歩き出した。
何故か鎌を放すのは不安だった。きつく握り締めたまま、ふらつきながらも歩を進める。
体が汚れて気持ち悪い。
火に当たりすぎて熱い。
あちこち痛い。
幸い、すぐそばには水があった。大きく広く、果てのない水があった。崖に何度も押し寄せる水は、白く弾けて戻っていく。
少女はそれを見下ろしながら安堵した。
これで洗える。
そして冷やせる。
良かった。
微笑む少女の体から、最後の力が抜けていく。
少女はそのまま、海に呑み込まれた。
prev
Top
next